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A01-001佐々グループ

論文等 | 原著論文

2017

*Masahiko Ueda, Shin-ichi Sasa,
Replica symmetry breaking in trajectory space for the trap model,
Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical 50, 125001/1-14 (2017).

概要: 軌道の統計力学の観点から一次元トラップモデルにおける局在化を研究する。共通したランダムポテンシャル上の2つの粒子の軌道間の重なりを数値的に調べることにより、経路アンサンブルに相転移があることを見出す。低温相は軌道空間におけるレプリカ対称性の破れとして特徴づけられる。 

*Masato Itami, Shin-ichi Sasa,
Universal Form of Stochastic Evolution for Slow Variables in Equilibrium Systems,
Journal of Statistical Physics 167, 46-63 (2017).

概要: 平衡系における完全な遅い変数の組に対する非線形、乗法的ランジュバン方程式が、時間スケールの分離に基づいて一般的に導出される。得られた方程式の形は普遍的であり、グリーンによって得られるものと同等である。非線形摩擦のあるブラウン運動に対する方程式は、その一般的な結果の一例であることが分かる。我々の導出の鍵は、経路積分形式と対応するランジュバン式で異なる離散化スキームを使用することにある。そして、そのことにより、これまでの研究で見かけ上異なっていた経路積分表現の一貫した理解も与える。

2016

Yoshiyuki Chiba and *Naoko Nakagawa,
Numerical determination of entropy associated with excess heat in steady-state thermodynamics,
Physical Review E 94, 022115/1-10 (2016).

概要: 正常な熱伝導を示す一次元鎖の数値実験により、過剰熱と結びつけられた非平衡エントロピーを計測した。平衡状態にある場合の系の熱力学的性質を用いて見積もった局所平衡エントロピーとか情熱を用いて計測した非平衡エントロピーは非常に良い一致を示した。この結果を受けて、局所平衡の議論を利用しながらエントロピーの示量性と相加性を吟味したところ、示量性と相加性はそれぞれ成立するが、両者の意味が異なることが明らかとなった。

Shou-Wen Wang, Kyogo Kawaguchi, Shin-ichi Sasa, and Lei-Han Tang,
Entropy Production of Nanosystems with Time Scale Separation,
Physical Review Letters 117, 070601/1-070601-5 (2016).

概要: 時間スケールが大きく離れた自由度がある場合、遅い自由度だけに着目して系を記述するのは常套手段である。ところが、遅い変数を観測しているとあたかも平衡状態にあるかのように振る舞う非平衡系があり、そのような場合、非平衡状態の特徴であるエントロピー生成が隠れてしまう。この論文では、遅い変数のゆらぎと応答の情報から、直接観測できない速い変数が担う隠れたエントロピー生成を評価する方法を提案する。 【日中共同論文】

Shin-ichi Sasa, Yuki Yokokura,
Thermodynamic entropy as a Noether invariant,
Physical Review Letters 116, 140601/1-140601/6 (2016).

概要: 時間依存パラメータをもつ古典粒子多体系を解析し、熱力学エントロピーがネーター不変量として一意に特徴づけられることを示した。我々が見出した対称性は、時間に関する非一様推進であり、逆温度とプランク定数に比例するように時間目盛りを変更するときの不変性である。また、作用の定義域を「熱力学と整合する軌道」に制限する必要がある。【Editors’ suggestion に選ばれた。】

Christian Van den Broeck, Shin-ichi Sasa, Udo Seifert,
Focus on stochastic thermodynamics,
New Journal of Physics 18, 020401-020403 (2016).

概要: 確率的熱力学の特集号をN. J. Phys. で企画した。この論文はその巻頭言に相当し、採択された論文を紹介しつつ、分野の全貌を紹介した。

2015

Masato Itami and Shin-ichi Sasa,
Derivation of Stokes’ Law from Kirkwood’s Formula and the Green-Kubo Formula via Large Deviation Theory,
Journal of Statistical Physics 161, 532-552 (2015).

概要: ストークス関係式を流体方程式を使わずに微視的に導出する。線形応答理論により、摩擦係数が玉に働く力の時間相関を使って書けることは知られている。この時間相関関数を大偏差理論を使って評価することでバルクの粘性係数と結びつけることが可能となる。

Masahiko Ueda and Shin-ichi Sasa,
Replica symmetry breaking in trajectories of a driven Brownian particle,
Physical Review Letters 115, 080605/1-5 (2015).

概要: ノイズの加わったバーガース方程式(KPZ方程式)によって受動的に駆動されるブラウン粒子を研究する。軌道の集まりについてレプリカ対称性の破れが生じることを示す。この証明の鍵は、この系の修正された境界条件でのパスアンサンブルが向きのある高分子の平衡分布に厳密に一致することである。

Teruhisa S. Komatsu, Naoko Nakagawa, Shin-ichi Sasa, and Hal Tasaki,
Exact equalities and thermodynamic relations for nonequilibrium steady states,
Journal of Statistical Physics 159, 1237-1285 (2015).

概要: 非平衡定常状態間の遷移に関する熱力学操作に関する拡張された熱力学の枠組みを数学的に厳密な形で提示する。

*Taiki Haga,
Nonequilibrium Langevin equation and effective temperature for particle interacting with spatially extended environment,
Journal of Statistical Physics 159, 713-729 (2015).

概要: 空間的に広がった環境と相互作用する古典粒子の非平衡ダイナミクスを記述するランジュバン模型を解析する。この模型においては、粒子が環境と非線形相互作用をし、外力が加えられると非平衡定常状態に到達する。非平衡定常状態において粒子に対する有効的なランジュバン方程式を導出する。この方程式を使うことで、揺らぎと応答の関係から有効温度を定義する。その結果、スケール分離が十分なとき、その有効温度が運動論的温度と等しいことが示された。また、その有効温度が力―速度関係式から決定できることも示した。  【佐々(議論)】

*Shin-ichi Sasa,
Collective dynamics from stochastic thermodynamics,
New Journal of Physics 17, 045024/1-14 (2015).

概要: ゆらぐ熱力学の観点から、大域結合XY模型における秩序無秩序転移や蔵本模型における集団同期転移の近くでの集団ダイナミクスを導出する。新しい考え方は、巨視変数の時間変化を熱力学系への操作と解釈することである。そこで、不可逆仕事が集団ダイナミクスに対する方程式を決定することが分かった。蔵本模型を解析するときには、定常状態熱力学に関係する非平衡恒等式に由来する不可逆仕事の一般化された概念を使う。【IOP SELECT】

Masato Itami and Shin-ichi Sasa,
Nonequilibrium Statistical Mechanics for Adiabatic Piston Problem,
Journal of Statistical Physics 158, 37-56 (2015).

概要: 断熱ピストン問題の簡単な場合、ピストンの運動はマスター方程式で記述される。その方程式を非平衡統計力学の立場から完全に解析した。線形応答理論やゆらぎの定理などが具体的にどのように書けるのかを示した。また、壁が動く場合の局所詳細つりあいの条件などこれまで明示的には議論されてなかったことを微視的な視点から導出した。

2014

Takahiro Nemoto, Vivien Lecomte, Shin-ichi Sasa, and *Friédéric van Wijland,
Finite size effects in a mean-field kinetically constrained model: dynamical glassiness and quantum criticality,
Journal of Statistical Mechanics -, P10001/1-38 (2014).

概要: 平均場運動論的拘束模型は、平衡状態は自明だが、動的な振る舞いについてガラス的な異常性を示すもっとも簡単な模型である。具体的には、アクティビティーの長時間平均のキュムラント母関数はゼロバイアス点で特異性を示す。その有限サイズ効果を詳しく調べた。また、その解析と量子臨界点の解析は等価であることが分かった。

*Naoko Nakagawa,
Universal expression for adiabatic pumping in terms of nonequilibrium steady states,
Physical Review E 90, 022108/1-6 (2014).

概要: 非平衡定常系への操作的仕事と平衡系に誘起される輸送流(ポンピング)を結ぶ等式を導いた。これにより、平衡系に誘起されるポンピング量は、平衡状態と非平衡状態の両方について同じ力学的操作を行い、その際に要する仕事量がどの程度ずれるかを計測することで予想可能になることがわかった。また、平衡系に誘起されるポンピングは、カノニカル分布と非平衡定常分布によるFisher情報量行列を使って表現できることも示した。この結果は、非平衡研究と情報論を結ぶ新規な視点を提案しており、今後の発展が期待できる。

*Kyogo Kawaguchi, Shin-ichi Sasa, and Takahiro Sagawa,
Nonequilibrium dissipation-free transport in F1-ATPase and the thermodynamic role of asymmetric allosterism,
Biophysical Journal 106, 2450-2457 (2014).

概要: F1-ATPaseのエネルギー収支に関する実験で、ポテンシャル切り替えに伴うエネルギー散逸が化学反応によるエネルギーゲインに比べて非常に小さいことが報告されている。その実験および他に知られている諸々の実験と矛盾のない模型を提案した。

*Hiroki Ohta and Shin-ichi Sasa,
Jamming transition in kinetically constrained models with the parity symmetry,
Journal of Statistical Physics 155, 827-842 (2014).

概要: 2次元系格子で定義された運動論的に拘束された模型のクラスにおいて有限濃度でエルゴード=非エルゴード転移(ジャミング転移)を示す模型を構成した。これまで知られていた模型とは対称性が異なっており、その普遍性について新たな問題を投げかけた。

Masato Itami and Shin-ichi Sasa,
Macroscopically measurable force induced by temperature discontinuities at solid-gas interfaces,
Physical Review E 89, 052106/1-6 (2014).

概要: 自由に移動できる固体が温度の異なる希薄気体と接触するとき、温度ギャップがそれぞれの界面で生じる。その結果として生じる駆動力が非常に大きいことを明示的に示した。具体的な物体の物性値を用いて、秒速10センチを超える速度が実現しうることを示した。

*Shin-ichi Sasa,
Derivation of hydrodynamics from the Hamiltonian description of particle systems,
Physical Review Letters 112, 100602 (2014).

概要: ハミルトニアン粒子系は、質量、運動量、エネルギーの密度場の時間変化として、流体現象を示す。この論文では、初期時刻で局所ギブス分布に従うと仮定して、時間変化を記述する厳密な時間発展が導かれる。鍵となるのは、ゆらぎ定理と似た形の恒等式である。スケール分離をあらわす小さいパラメータに関する簡単な摂動展開の結果として、Navier-Stokes方程式が導かれる。

*Takahiro Nemoto, and Shin-ichi Sasa,
Computation of large deviation statistics via iterative measurement-and-feedback procedure,
Physical Review Letters 112, 090602/1-5 (2014).

概要: 一般的なマルコフ確率過程において時間平均量についての大偏差統計の新しい計算方法を提案した。提案する方法では、外力に対する応答が測定されるが、その外力は前回の測定によってフィードバックとして決められる。結果として、もとの系のまれな事象を典型的な振る舞いとして記述する指数族を得ることになる。この方法の有用な使い方のデモとして、1次元格子模型の大偏差統計を研究する。

*Masahito Ueda and Shin-ichi Sasa,
Calculation of 1RSB transition temperature of spin glass models on regular random graphs under the replica symmetric ansatz,
Journal of Statistical Mechanics: Theory and Experiment P02005/1-21 (2014).

概要: レギュラーランダムグラフ上のp体スピングラス模型を研究した。2体キャビティー場近似のもとで、Franz-Parisiポテンシャルを解析することで、1RSB転移点に対する良い近似値を得た。私たちの計算方法は、ニュートン法によって自己無矛盾方程式を解くだけで得られるので、従来の1RSBキャビティー法よりもずっと簡単である。

*Shin-ichi Sasa,
Possible extended forms of thermodynamic entropy,
Journal of Statistical Mechanics: Theory and Experiment , P01004/1-16 (2014).

概要: 熱力学エントロピーはクラウジウス関係式によって熱測定で決定される。それは、熱力学第2法則によって操作限界も定式化する。さらに、微視的自由度に対するシャノンエントロピーとしてあらわされる。熱力学エントロピーの拡張を考えるときには、この3つの側面がどのように変わるのかについて考える必要がある。この論文では、熱力学エントロピーの可能な拡張形について議論した。

Johannes-Geert Hagmann, Naoko Nakagawa, and *Michel Peyrard,
Characterization of the low-temperature properties of a simplified protein model,
Physical Review E 89, 012705/1-13 (2014).

概要: 単純化したタンパク質モデルの揺らぎが、タンパク質の動的相転移とよく似た傾向を持つという数値計算結果が得られている。これがガラス転移の存在を示唆しているのか否かを、揺らぎに関する多面的な研究から吟味し、ガラス転移とは異なるという結論を導きだした。とくに揺動散逸関係式の破れから定義した有効温度がアレニウス則に従う非常に遅い緩和を見せることを数値的に発見し、通常のガラス系で知られる緩和しない有効温度とは異なる性質であることがわかった。この発見を含む全ての吟味結果が、モデルタンパク質の遅い揺らぎはガラスとは異なることを示唆した。 【中川尚子(研究計画の方針決定、数値計算結果の吟味と解釈)】