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A01公募班(2014-2015)

論文等 | 原著論文

2017

*Masayuki Hashisaka, Naoaki Hiyama, Takafumi Akiho, Koji Muraki, *Toshimasa Fujisawa,
Waveform measurement of charge- and spin-density wavepackets in a chiral Tomonaga–Luttinger liquid,
Nature Physics, (2017).

概要: 1次元電子系における低エネルギーの電子ダイナミクスは、朝永ラッティンジャー(TL)液体論によって説明される。TL液体を象徴する現象として、電子の電荷とスピンが密度波として別々に伝搬する、スピン電荷分離現象が知られている。スピン電荷分離現象はこれまで様々な実験によって間接的に確かめられてきた。本研究では、電荷・スピン密度波の双方に敏感な時間分解測定によって、初めて空間的に分離された電荷波束とスピン波束の波形を計測することに成功した。

2016

Kazuhisa Washio, Ryo Nakazawa, Masayuki Hashisaka, Koji Muraki, Y. Tokura, and Toshimasa Fujisawa,
Long-lived binary tunneling spectrum in the quantum Hall Tomonaga-Luttinger liquid,
Physical Review B 93, 075304 (2016).

概要: 固体素子中の輸送現象測定によって、相互作用する電子系における長寿命非平衡状態の観測を期待できる。本論文では、整数量子ホール端における一方向性の1次元チャネルを用いて、この長寿命状態を観測した結果を報告した。対向するチャネルに熱を注入すると、チャネル間相互作用によってフェルミ分布とは明らかに異なる非平衡電子分布が現れ、この分布は熱平衡に達することなく長距離を伝搬することが分かった。この現象は、1次元電子系の朝永-ラッティンジャーモデルによってよく説明できる。 【橋坂昌幸(試料作製、実験結果の理解、論文執筆のためのディスカッション)】

Yasutaka Ohnishi, Rio Kita, Kazuyoshi Tsuchiya and *Satoru Iwamori,
Optical characteristics of poly(tetrafluoroethylene) thin film prepared by a vacuum evaporation,
Japanese Journal of Applied Physics 55, 02BB04/1-5 (2016).

概要: ポリエチレンテレフタレート(PTFE)薄膜を真空蒸着法を用いてガラス基板上に作製するための条件を探索し、透明および不透明なPTFE薄膜の創製に成功した。結晶性やガラス転移温度など物性を詳細に調べることで、真空蒸着法で作製されたPTFE薄膜の分子構造と透明性の関係を明らかにした。

2015

D. Imanaka, S. Sharmin, Masayuki Hashisaka, Koji Muraki, and *Toshimasa Fujisawa,
Exchange-induced spin blockade in a two-electron double quantum dot,
Physical Review Letters 115, 176802 (2015).

概要: 半導体ヘテロ構造中に作製された2重量子ドットにおける、新しいメカニズムによるスピンブロッケード現象を報告した。通常のパウリスピンブロッケード現象がスピン1重項状態を利用するのに対し、こ今回の現象はスピン3重項状態によってブロッケード現象が起こる。この現象は半導体中の核スピンダイナミクスに非常に敏感で、2つの量子ドット中の核スピン磁場がちょうど等しい場合にのみ観測される。この現象が与える情報は、量子ドット中のコヒーレントな電子スピン操作を行う際に有用である。

J. C. H. Chen, Y. Sato, R. Kosaka, Masayuki Hashisaka, Koji Muraki, and Toshimasa Fujisawa,
Enhanced electron-phonon coupling for a semiconductor charge qubit in a surface phonon cavity,
Scientific Reports 5, 15176 (2015).

概要: AlGaAs/GaAs半導体ヘテロ構造中に作製された量子ドットと、半導体表面を伝搬する表面弾性波フォノンの結合に関する研究である。表面弾性波に対する共振器構造を作製し、その中に量子ドットを作製することで、量子ドット中の電子とフォノンを強く結合させることに成功した。これは将来のフォノンと人工原子(量子ドット)による共振器量子電磁気学の実現に向けて、有益な成果である。

Naoaki Hiyama, *Masayuki Hashisaka, and Toshimasa Fujisawa,
An edge magnetoplasmon Mach-Zehnder interferometer,
Applied Physics Letters 107, 143101 (2015).

概要: 量子ホール系の試料端に生じるエッジ状態において、高周波電気信号は電荷密度のプラズマ振動(エッジマグネトプラズモン:EMP)として伝搬する。このEMPに対するビームスプリッタや遅延素子など、各種の制御素子を集積化することによって、Mach-Zehnder干渉計を作製した。さらに、この干渉計を用いて高周波素子の評価を行う手法をデモンストレーションした。この成果は、量子ホールエッジ状態における電荷ダイナミクス研究、及び将来の超高速エレクトロニクス実現に向けた研究にとって有益である。

*Takahiro Hatano,
Friction laws from dimensional-analysis point of view.,
Geophysical Journal International 202, 2159-2162 (2015).

概要: 現象論的な摩擦構成法則について、次元解析的な考察を行い、可能な関数形について拘束した。とくにある特定の条件のもとで、速度・状態依存摩擦法則が導出されることを示した。

Kousaku Maeda, Naoki Shinyashiki, Shin Yagihara, Simone Wiegand, and *Rio Kita,
Ludwig-Soret effect of aqueous solutions of ethylene glycol oligomers, crown ethers, and glycerol: Temperature, molecular weight, and hydrogen bond effect,
Journal of Chemical Physics 143, 124504/1-7 (2015).

概要: 熱泳動現象(ルードヴィッヒ・ソレー効果)をエチレングリコール、クラウンエーテルそしてグリセロール水溶液を用いて、その温度依存性を調べた。ソレー係数S_Tと熱(物質)拡散係数D_Tの温度依存性はすべての系において直線的であり、その大きさと傾きは溶質の種類と分子量に依存した。すべてのサンプルはエーテル基または水酸基を有することから、水素結合を形成する際のプロトンアクセプターまたはドナーとしてふるまう。本研究では、プロトン授受のサイト数と溶質分子量を考慮した経験式を提唱し、これを用いることで水素結合サイト数、分子量、温度がルードヴィッヒ・ソレー効果に果たす役割を明らかにした。

S. K. Kundu, S. Choe, K. Sasaki, Rio Kita, N. Shinyashiki, and *S. Yagihara,
Relaxation dynamics of liposomes in an aqueous solution,
Physical Chemistry Chemical Physics 17, 18449-18455 (2015).

概要: 熱測定と誘電分光測定によりリポソームのゲル-液晶相転移の温度依存性と周波数依存性を調べた。測定周波数40 Hz-30 GHzの中に4つの誘電緩和モードが観察された。各緩和プロセスを詳細に解析することにより、昇温によるゲル相から液晶相への転移について各モードの分子論的起源の同定と分子ダイナミクスに関する新たな描像を得た。ここで得られた知見はリポソームの温度勾配下における輸送現象データの解釈に重要な役割を果たす。

Takahiro Hatano, Clément Narteau and Peter Shebalin,
Common dependence on stress for the statistics of granular avalanches and earthquakes,
Scientific Reports 5, 12280 (2015).

概要: 粉体系でのクラックリングノイズについて統計解析を行った。岩石破壊実験などと同様に、規模別頻度分布が応力の減少関数であることを確認。また、余震が存在することも確認し、その頻度が大森・宇津則に従うことを発見した。さらに余震の特徴的時定数が応力に関して指数的な負の依存性を持つことを発見した。これは地震分野での仮説と合致する。

Péter Ván, Noa Mitsui, Takahiro Hatano,
Non-equilibrium thermodynamical framework for rate- and state-dependent friction,
Periodica Polytechnica Civil Engineering 59, 583-589 (2015).

概要: 地球科学で広く用いられている経験的な摩擦構成則(速度・状態依存摩擦法則)を非平衡熱力学的観点から考察した。いくつかの仮定のもと、知られているものとほぼ同等な摩擦法則を導き、実験結果と比較した。 

Kazuhiro Kishi, Masashi Kawaguchi, Hitoshi Miura, *Masahide Sato and Makio Uwaha,
Relation between the Step Pattern and the Velocity of the Moving Linear Adatom Source,
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology 13, 269-274 (2015).

概要: シリコン表面にガリウムを入射させた時に見られる櫛状パターン形成の形成過程について,フェーズフィールドシミュレーションで調べた。櫛状パターンは,ステップの異方性で決まる臨界値よりも,成長速度が小さいときに形成されることがわかった。また,形成の過程で櫛の歯状の枝の間隔が粗大化することがわかった。櫛の歯の間隔は,粒子供給源に櫛の歯の先端が到達までにかかる時間で決定されることがわかった。

Ken H. Nagai, Yutaka Sumino, Raul Montagne, Igor S. Aranson, and *Hugues Chaté,
Collective motion of self-propelled particles with memory,
Physical Review Letters 114, 168001/1-6 (2015).

概要: 我々は本論文に回転速度に記憶をもつ自走粒子の集団運動に関する研究結果を報告した。まず、大きさを持たない多粒子モデルを用いて個々の粒子の回転速度の履歴により生じる集団運動を明らかにした。粒子の運動方向に有限の相関時間を持つノイズを加えて回転速度の履歴をもたせ、渦の格子やアクティブフォームなどこれまでに報告されていない多くの集団運動が生じることを見出した。さらにランダム相から渦の格子に転移する時の粒子密度に関する連続場モデルを導出し、短距離の運動方向を揃える相互作用と回転運動による実効的な相互作用により渦の格子が生じることを明らかにした。 【表紙及びEditor's suggestionに選定された。】

Youhei Kanatsu and *Masahide Sato,
Crystallization of Brownian particles in a pyramidal pit by a uniform external force,
Journal of the Physics Society of Japan 84, 044601/1-6 (2015).

概要: 逆ピラミッド型の穴へのコロイド粒子の沈降によるコロイド結晶の形成がなされている。この念頭において、短距離斥力が働くブラウン粒子の一様外力による結晶化について調べた。壁面の影響を強くうけて結晶化が進む。壁面に沿ってできる三角格子がfcc構造の(111)面となったfcc構造が作られた。

*Masayuki Hashisaka, Tomoaki Ota, Koji Muraki, and Toshimasa Fujisawa,
Shot-noise evidence of fractional quasiparticle creation in a local fractional quantum Hall state,
Physical Review Letters 114, 056802/1-5 (2015).

概要: 整数量子ホール系内に局所的に形成された分数量子ホール系(LFQH系)における分数電荷準粒子の生成を、電流ゆらぎ測定によって観測した。電流ゆらぎの大きさは、LFQH系を量子力学的にトンネルする準粒子の電荷の大きさに比例する。1次元の量子ホール端状態の朝永-Luttinger液体的性質を反映し、LFQH系をトンネルする準粒子の電荷は、低バイアス領域から高バイアス領域にかけて素電荷eから分数電荷e/3へ変化することが確認された。高バイアス領域における電流ゆらぎのトンネル透過率に対する依存性より、このトンネル過程をLFQH系における分数電荷準粒子の生成・消滅過程とみなせることが明らかになった。

*Hironori Hoshino and Shin Nakamura,
Effective temperature of nonequilibrium dense matter in holography,
Physical Review D 91, 026009 /1-10 (2015).

概要: AdS/CFT対応を用いて、ランジュバン系および定常電流の流れる導体系における非平衡定常状態の有効温度を系統的に解析した。先行研究では両者の系で荷電粒子の質量を異なる値で解析していたため、両者の整合性を確認できていなかった。ここでは導体系の荷電粒子に質量と電荷密度を導入しランジュバン系と比較することで、両者の有効温度の振る舞いの整合性を確認した。 【星野紘憲(数値計算の実行と全般にわたる共同研究)】

Masashi Kawaguchi, Hitoshi Miura, Kazuhiro Kishi, Masahide Sato, and *Makio Uwaha,
Period of a comblike pattern controlled by atom supply and noise,
Physical Review E 91, 012409/1-9 (2015).

概要: ガリウム入射時に見られるシリコン(111)微斜面での櫛状ステップパターンの形成を念頭に置いて,ステップから一定速度で遠ざかる直線的な粒子供給源が引き起こすステップ不安定化について,フェーズフィールド模型を用いて調べた。粒子供給源がステップ前方にだけあることで,拡散場の非対称性によりマリンス-セカーカ型のステップ不安定性が起き,突起部分が現れる。この突起部分は時間とともに伸びて,実験でみられるような櫛状パターンが現れることを示した。初期段階における波長λmaxに比べて,不安定化後に現れる櫛状パターンの櫛の歯の間隔Λは長波長になる。これは,定常成長パターンになるまでに櫛の歯状の突起部分の競合により,粗大化が起きるためである。最終的に現れる櫛の歯パターンの間隔Λは与えるノイズの大きさFuとの間にΛ∼λmax|lnFu|のような関係がある。この関係は我々が初めて確認したものである。

2014

*Norio Kumada, Preden Roulleau, Benoit Roche, Masayuki Hashisaka, Hiroki Hibino, Ivana Petković, and Christian Glattli,
Resonant edge magnetoplasmons and their decay in graphene,
Physical Review Letters 113, 266601 (2014).

概要: 量子ホール端を伝搬する電荷密度波(エッジマグネトプラズモン:EMP)を環状構造内に閉じ込めることで、EMPの共鳴現象を観測した。その共鳴特性からEMP分散関係における非線形性を見出し、その起源として長距離クーロン相互作用の影響が重要であることを示した。また、EMPが試料端領域からバルク領域へと逃げることによる減衰の効果についても評価した。

Kousaku Maeda, Naoki Shinyashiki, Shin Yagihara, Simone Wiegand, *Rio Kita,
How does thermodiffusion of aqueous solutions depend on concentration and hydrophobicity?,
European Physical Journal E 37, 94(6pages) (2014).

概要: エチレングリコール類の水溶液のthermal diffusionを強制Rayleigh散乱法で調べた。ソレー係数の溶質濃度依存性は大きく2つの領域に分けらたが、すべての溶液において濃度の増加によりソレー係数の符号が正から負へ変化した。各サンプルの符号が変化する濃度は、化学構造や分配関数で整理され、中でも溶質が持つ水酸基数が重要な因子であることが明らかになった。

Mamoru Fujine, *Masahide Sato, Tetsuya Toyooka, Hiroyasu Katsuno, Yoshihisa Suzuki, and Tsutomu Sawada,
Crystallization of Brownian particles in thin systems constrained by walls,
Physical Review E 90, 032404/1-7 (2014).

概要: 遠心沈降法によるコロイド結晶成長を念頭に置きシミュレーションを行った。遠心沈降の場合,容器壁面からの結晶化が起きる。容器の形状と力がかかる方位を制御することで,核生成を制御することができ,大きな結晶粒を作成することができることをしめした。また,狭い容器を用いた場合には,力の大きさを変えることで,面心立方構造のみならず六方最密構造を持った結晶を作成することができた。

Masakazu Yamagishi, Narii Watase, Masayuki Hashisaka, Koji Muraki, and *Toshimasa Fujisawa,
Spin-dependent tunneling rates for electrostatically defined GaAs quantum dot,
Physical Review B 90, 035306 (2014).

概要: GaAs基板中に形成された量子ドットを透過するアップスピン電子とダウンスピン電子のトンネルレートを、ポイントコンタクト電荷計を用いて実時間測定した。トンネルレートのスピン依存性から、量子ドットを透過する電流にはスピン偏極があることが明らかになった。このスピン偏極の起源として、2次元電子系電極における交換相互作用を考慮したモデルを提案した。

Kaito Sasaki, Masahiko Miyara, Rio Kita, *Naoki Shinyashiki, and Shin Yagihara,
Dynamics of water in the partially crystallized gelatin water mixture,
Journal of Advanced Science 24, 41-44 (2014).

概要: 水の誘電緩和過程をゼラチン水溶液において凝固温度付近において観測した。凝固温度以下において、結晶化した水と不凍水そして不凍水相のなかに存在する水和ゼラチンが確認された。凝固前後では緩和強度、緩和時間、緩和時間分布の温度依存性が大きく異なっており、これはゼラチンの凍結濃縮によることが明らかとなった。

*Norio Kumada, Romain Dubourget, Ken’ichi Sasaki, Shinichi Tanabe, Hiroki Hibino, Hiroshi Kamata, Masayuki Hashisaka, Koji Muraki, Toshimasa Fujisawa,
Plasmon transport and its guiding in graphene,
New Journal of Physics 16, 063055 (2014).

概要: グラフェンシートを伝搬する電荷密度波(プラズモン)を、表面ゲート構造を用いて制御する手法を開発した。電圧によってゲート直下のフェルミエネルギーを変化させることで、グラフェン内にプラズモンの「回路」を形成できることを示した。グラフェン内でのプラズモン伝搬を2次元的に分布する回路素子を用いたモデルによって計算し、実験結果がこのモデルによってよく説明できることを示した。

*Masayuki Hashisaka, Tomoaki Ota, Masakazu Yamagishi, Toshimasa Fujisawa and Koji Muraki,
Cross-correlation measurement of quantum shot noise using homemade transimpedance amplifiers,
Review of Scientific Instruments 85, 054704 (2014).

概要: メゾスケール伝導体において、空間的に離れた2地点の電流信号の電流ゆらぎ相互相関を測定する手法を開発した。低温で動作する高速・低雑音の電流増幅器を自作したことにより、広帯域・高感度での非平衡電流ゆらぎ相関の観測が可能になった。この測定系を用いて量子ポイント接合で発生する非平衡電流ゆらぎを測定し、この測定結果が理論と良く一致することを確かめ、実際にこの測定系が強力な測定技術であることをデモンストレーションした。