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A02-003櫻井グループ

論文等 | 原著論文

2017

*Yuki Koyano, Marian Gryciuk, Paulina Skrobanska, Maciej Malecki, Yutaka Sumino, Hiroyuki Kitahata, and Jerzy Gorecki,
Relationship between the size of a camphor-driven rotor and its angular velocity,
Physical Review E 96, 021609/1-8 (2017).

概要: 界面活性剤を周囲に拡散させ、自発的に界面張力勾配を作って運動する自己駆動粒子を二つつなぎ重心を固定した系を考える。この系は回転方向に運動の自由度を持つがカイラルな対称性があるため、静止した解からパラメータの変化により回転運動に分岐することが予想される。具体的には、樟脳粒をプラスチック板の両端に接着して対称な回転子を作り、中心を軸で固定した系を用いて実現される。本論文では、分岐点および回転速度の回転子半径依存性に着目した。実験結果および、モデルの解析、数値計算の結果について報告する。 【北畑裕之:数値計算、理論解析に関する議論】

*Jerzy Gorecki, Hiroyuki Kitahata, Nobuhiko J. Suematsu, Yuki Koyano, Paulina Skrobanska, Marian Gryciuk, Maciej Malecki, Takahiro Tanabe, Hiroya Yamamoto, and Satoshi Nakata,
Unidirectional motion of a camphor disk on water forced by interactions between surface camphor concentration and dynamically changing boundaries,
Physical Chemistry Chemical Physics 19, 18767-18772 (2017).

概要: 水面の樟脳粒が自発的に運動する系を用いて、ダイオード的な振る舞いをする系を構築した。具体的には、長方形水路の一部に円形領域を設け、軸を固定した2枚のゲートを設置する。これらのゲートは樟脳粒が拡散する樟脳分子に起因する表面張力によって開閉する。その結果、樟脳粒が一方から近づいたときにはゲートが開き、樟脳粒はゲートを通過することができるが、他方から近づいたときにはゲートが開かず、樟脳粒がゲートを通過できないというダイオード的な挙動を観察することができた。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論、数値計算】

*Kei Nishi, Shogo Suzuki, Katsuhiko Kayahara, Masakazu Kuze, Hiroyuki Kitahata, *Satoshi Nakata, and *Yasumasa Nishiura,
Achilles’ heel of a traveling pulse subject to a local external stimulus,
Physical Review E 95, 062209/1-8 (2016).

概要: Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応は反応拡散系の実験モデルとして広く使われており、ルテニウム錯体を触媒として用いると光感受性を示す。このような光感受性BZ反応系を用いて、伝播する化学波に対しる外部摂動の影響を考察した。本研究においては、化学波の位置をカメラで検出し、外部摂動を化学波からの相対位置が一定になるようにパルス的に与えた。そして、化学波に対する相対位置および外部摂動のパルス幅によって化学波が消滅するか、伝播し続けるかが異なることを明らかにした。また、同様の外部摂動に対する影響を数値計算により調べ、化学波の少し前方あたりにもっとも外部摂動に対して感受性の高い、すなわち、化学波が消滅しやすい部分があることを明らかにした。 【北畑裕之:実験装置・メカニズムに関する議論】

Naoko Ueno, Taisuke Banno, Arisa Asami, Yuki Kazayama, Yuya Morimoto, Toshihisa Osaki, Shoji Takeuchi, Hiroyuki Kitahata, and *Taro Toyota,
Self-propelled motion of monodisperse underwater oil droplets formed by a microfluidic device,
Langmuir 33, 5593-5597 (2017).

概要: 界面活性剤水溶液中に油滴を注入すると自発的に運動することがこれまでに知られている。本論文では、マイクロ流路を用いて、注入する液滴のサイズを変化させたときの結果を報告する。油滴のサイズが異なると、自己駆動する際の液滴の速度も変化する。実験により、駆動速度が最大となる液滴半径があることが明らかとなった。また、そのメカニズムについての定性的な議論も行った。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論、豊田太郎:研究の総括】

*Hiroyuki Kitahata, Hiroya Yamamoto, Misato Hata, Yumihiko S. Ikura, *Satoshi Nakata,
Relaxation dynamics of the Marangoni convection roll structure induced by camphor concentration gradient,
Colloids and Surfaces A 520, 436-441 (2017).

概要: 界面活性と昇華性をもつ樟脳の粒を水面に近づけると、樟脳分子が水面に吸着され、マランゴニ対流が発生する。水面に小さなプラスチック板を浮かべておくと、樟脳粒を水面に近づけたときマランゴニ対流のために樟脳粒から遠ざかる。ところが、樟脳粒を遠ざけるとプラスチック板がもともと樟脳粒があった位置に近づく現象が見られた。これは、マランゴニ効果により水面がマイクロメートルオーダーでくぼんでおり、そのくぼみが戻る際の流れによるものだと示唆される。この現象について実験的、理論的な考察を行った結果を報告する。 【北畑裕之(メカニズムに関する議論、数値計算)】

2016

Yuki Koyano, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Oscillatory motion of a camphor grain in a one-dimensional finite region,
Physical Review E 94, 042215/1-8 (2016).

概要: 樟脳粒は水面に浮かべると樟脳分子が水面に拡がることで水面の表面張力を下げる。粒が対称な形状であっても、自発的に樟脳分子濃度のプロファイルの対称性が崩れ、ある方向に運動することが知られている。今回、擬1次元の水路での樟脳粒の運動について、実験および理論的解析、数値計算を行った。その結果、水相の粘性や水路の長さにより、水路の中心に静止する状態から、水路内を往復する運動に分岐することがわかった。数理モデルを縮約することでその分岐がホップ分岐であることが明らかになり、粘性や水路の長さに対する依存性も再現することができた。 【櫻井建成(メカニズムに関する議論)、北畑裕之(研究のとりまとめ)】

Akihiko Nakajima, Motohiko Ishida, Taihei Fujimori, Yuichi Wakamoto, *Satoshi Sawai,
The Microfluidic lighthouse: an omnidirectional gradient generator,
Lab on Chip 16(22), 4382-4394 (2016).

Elisa Herawati, Daisuke Taniguchi, Hatsuho Kanoh, Kazuhiro Tateishi, Shuji Ishihara, and Sachiko Tsukita,
Multiciliated cell basal bodies align in stereotypical patterns coordinated by the apical cytoskeleto,
The Journal of Cell Biology 214, 571–586 (2016).

概要: マウス気管の他繊毛細胞の発生における繊毛の配列過程を、基底小体の長期ライブセルイメージングで追跡し、始め散らばっていたパターから、配列する過程が各発生ステージでどのように発達、遷移するかを調べた。また、細胞アピカル面に発達する細胞骨格系との相互作用という観点から、アクティブハイドロダイナミクスに基づく数理モデルを構築し、基底小体の配列を自己組織化現象として説明した。同時に、細胞平面内極性(PCP)との相互作用についても考察を行った。

Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, *Alexander S. Mikhailov,
Hydrodynamic collective effects of active proteins in biological membranes,
Physical Review E 94, 022416/1-11 (2016).

概要: 生体膜上にはポンプやモーターなどの機能を担う活性タンパク質が多数存在する。生体膜は熱ゆらぎによってだけではなく、これらの活性タンパク質の周期的な形態変化により、揺動を受けると考えられる。そこで、本研究では、生体膜を2次元流体、活性タンパク質を流れを駆動するフォース・ダイポールと見なして構築されたモデルを元に、複数の活性タンパク質によって協同的に引き起こされる生体膜内の流れについて、理論的・数値的にその挙動を調べた。 【北畑裕之(数値計算および理論解析の補助)】

Taisuke Banno, Arisa Asami, Naoko Ueno, Hiroyuki Kitahata, Yuki Koyano, Kouichi Asakura, *Taro Toyota,
Deformable self-propelled micro-object comprising underwater oil droplets,
Scientific Reports 6, 31292/1-9 (2016).

概要: 水中を変形しながら泳ぎ回るアメーバ様の動きをする細胞サイズの人工の油滴を創製し、顕微鏡画像を用いた運動解析より、この油滴の運動機構は、油滴の後方で形成される強い流れ場と油滴内部の局所的な対流構造によって、速度変化の後に変形が誘起されるという新たな運動機構であることを推定した。 【豊田太郎(研究の総括、実験系の提案)】

*Satoshi Nakata, Hiroya Yamamoto, Yuki Koyano, Osamu Yamanaka, Yutaka Sumino, Nobuhiko J. Suematsu, Hiroyuki Kitahata, Paulina Skrobanska, and Jerzy Gorecki,
Selection of the Rotation Direction for a Camphor Disk Resulting from Chiral Asymmetry of a Water Chamber,
Journal of Physical Chemistry B 120, 9166-9172 (2016).

概要: 樟脳円板を円形の水面に閉じ込めるとその境界に沿って円運動する。そこで円形の境界を二つの半円の組み合わせと考え、その半円の中心をずらしていくことで境界にカイラルな非対称性を持たせ、その際の運動の変化を調べた。円形の場合には、樟脳円板ほぼ等確率で時計回り反時計回りに公転していたが、徐々に非対称性を上げていくと、その公転の向きが一方向に限定された。更に非対称性をあげると公転する運動は不安定になりカオス的な運動が現れた。本論文では数値計算を用いながらそのメカニズムを明らかにした。 【北畑裕之(メカニズムと数値計算に関する議論)】

Takayuki Torisawa, Daisuke Taniguchi, Shuji Ishihara, Kazuhiro Oiwa,
Spontaneous Formation of a Globally Connected Contractile Network in a Microtubule-Motor System,
Biophysical Journal 111, 373–385 (2016).

概要: 微小管のつくるネットワークの示すダイナミクスを調べた。in vitro構成系においてて、キネシンモーターEg5との濃度比に依存して、ネットワークの収縮や破砕(rupture)が起こることを確認した。また、アスター間の引っ張りを考慮した数理モデルを考え、モーター濃度や性質に依存して表せる微小管ネットワークの振る舞いを説明した。

Fumihito Fukujin, Akihiko Nakajima, Nao Shimada, *Satoshi Sawai,
Self-organization of chemoattractant waves in Dictyostelium depends on F-actin and cell–substrate adhesion,
Journal of The Royal Society Interface 13 (2016).

Hironobu Nogucci and Shuji Ishihara,
Collective dynamics of active filament complexes,
Physical Review E 93, 052406/1-10 (2016).

概要: 形態のあるバイオフィラメントをモデル化し、その集団がつくるネットワークのダイナミクスを調べた。

Yui Matsuda, Nobuhiko J. Suematsu, Hiroyuki Kitahata, Yumihiko S.Ikura, and *Satoshi Nakata,
Acceleration or deeleration of self-motion by the Marangoni effect,
Chemical Physics Letters 654, 92-96 (2016).

概要: 樟脳粒や樟脳船を水面に浮かべると表面張力差を生み出して運動する。この運動を擬一次元的な水路で行うと、その水相の深さによって運動速度が異なった。特に樟脳粒の場合には、水相が深くなるにつれて運動速度が速くなるのに対し、樟脳船では深くなるにつれて運動速度が遅くなる傾向が見られた。この現象に関して、水相に発生するマランゴニ対流の構造や強度をもとに議論し、そのメカニズムを明らかにした。 【北畑裕之(実験データ解析補助およびメカニズムに関する議論)】

Ken H. Nagai, Kunihito Tachibana, Yuta Tobe, Masaki Kazama, Hiroyuki Kitahata, Seiro Omata, *Masaharu Nagayama,
Mathematical model for self-propelled droplets driven by interfacial tension,
Journal of Chemical Physics 144, 114707/1-8 (2016).

概要: 界面張力により駆動される液滴について、系のエネルギーを考えてLagrangeanを構成することにより、その運動を記述することを試みた。このようなアプローチにより、液滴が運動するだけではなく、分裂や融合、反射する様子も定性的に再現することができた。 【北畑裕之(モデル構築に関する議論)】

*Yutaka Sumino, Norifumi L. Yamada, Michihiro Nagao, Takuya Honda, Hiroyuki Kitahata, Yuri B. Melnichenko, and Hideki Seto,
Mechanism of Spontaneous Blebbing Motion of an Oil−Water Interface: Elastic Stress Generated by a Lamellar−Lamellar Transition,
Langmuir 32, 2891-2899 (2016).

概要: カチオン性界面活性剤の水溶液の上にアニオン性界面活性剤の油の液滴を載せたとき、界面で自発的にブレブの生成が起こる。kれまでに、界面にできる会合体に関して、マイクロビームSAXS観察を行ってきた。本論文では、この会合体に関してSANS観察を行い、ブレビング運動をしているときに生成されている会合体が、時間とともに構造が変化することを明らかにした。また、運動するためには、今回観察された会合体が生成されることが必要であることを明らかにした。 【北畑裕之(メカニズムの考察に関する議論)】

Masanobu Horie, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Experimental and theoretical approach for the clustering of globally coupled density oscillators based on phase response,
Physical Review E 93, 012212/1-9 (2016).

概要: 少数個の振動子が結合した振動子系において、クラスタリングが見られることがある。この系を研究するために塩水振動子を用いたところ、塩水指導子を4個結合させた系において、2:2あるいは2:1:1のクラスタリングが見られた。この現象に関して、シンプルなモデルから位相応答を計算し、それをもとに安定性解析や数値計算を行い、考察した。  【櫻井建成:理論解析に関する議論、北畑裕之:研究のとりまとめ】

Haruka Sugiura, Manami Ito, Tomoya Okuaki, Yoshihito Mori, Hiroyuki Kitahata, and *Masahiro Takinoue,
Pulse-density modulation control of chemical oscillation far from equilibrium in a droplet open-reactor system,
Nature Communications 7, 10212/1-9 (2016).

概要: マイクロ流路中に水滴を流し、電場を与えて融合させることにより、マイクロ流路中の小さな領域を物質の出入りを制御できる化学反応槽とすることができた。その中で、物質の供給がないと起こりえないpH振動を起こすことに成功した。また、物質の流入、流出の割合を電場のオンオフで液滴の融合を制御することにより、制御することに成功した。物質の流入出の割合を変えたときの、pH振動反応の挙動に関して実験と数値計算で比較し、理論通り物質の流れをコントロールできていることを確かめた。  【北畑裕之:理論解析の補助】

2015

Boris Guirao, Stéphane Rigaud, Floris Bosveld, Anaïs Bailles, Jesus Lopez-Gay, Shuji Ishihara, Kaoru Sugimura, *François Graner, *Yohanns Bellaïche,
Unified quantitative characterization of epithelial tissue development,
eLIFE , 08519 (2015).

概要: 個体発生過程においては、組織の変形に細胞分、細胞の再配置、個々の細胞の変形、アポトーシスがそれぞれどのていど起用するかの定量化が必須である。我々はこの定量化を可能とする定式化を行い、実際にショウジョウバエの上皮系に適用した。

*Hiroyuki Kitahata, Rui Tanaka, Yuki Koyano, Satoshi Matsumoto, Katsuhiro Nishinari, Tadashi Watanabe,Koji Hasegawa, Tetsuya Kanagawa, Akiko Kaneko, and Yutaka Abe,
Oscillation of a rotating levitated droplet: Analysis with a mechanical model,
Physical Review E 92, 062904/1-8 (2015).

概要: 電荷を与えることにより浮遊させた液滴に外力を与え、微小変形の固有振動数を測定することにより表面張力が測定できることが知られている。この浮遊液滴を回転させた際に固有振動数が静止状態よりも高くなること、振幅を大きくしたときに固有振動数が低くなることが実験的に明らかになっている。今回、表面張力によるエネルギー変化と変形、回転によるエネルギーを考察することによって、見通し良く、固有振動数と液滴の回転角速度の関係を導くことができた。 【北畑裕之(理論解析、研究のとりまとめ)】

Masanobu Tanaka, Marcel Hörning, *Hiroyuki Kitahata, and Kenichi Yoshikawa,
Elimination of a spiral wave pinned at an obstacle by a train of plane waves: Effect of diffusion between obstacles and surrounding media,
Chaos 25, 103127/1-9 (2015).

概要: 興奮系にディフェクトがあるとき、ディフェクトにらせん波がトラップされることが知られている。このようならせん波は心臓でも見られており、そのらせん波の除去は重要な問題である。これまでに、物質の流出入がないディフェクトにトラップされたらせん波の除去可能性について議論した。今回、物質がディフェクト内に拡散できるときのらせん波の除去可能性について数値計算および解析を中心として調査した。 【北畑裕之(理論解析)、吉川研一(研究のとりまとめ)】

Shingo Miyazaki, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Coupling between a chemical wave and motion in a Belousov-Zhabotinsky droplet,
Current Physical Chemistry 5, 82-90 (2015).

概要: BZ反応の溶液を微小な液滴にしてオレイン酸に浮かべると内部で化学波が起こり、界面張力が変化するために液滴が自発的に運動することが知られている。本論文ではその現象についての実験結果および、Stokes方程式を使った流体力学でのメカニズムの提案に関するレビューをすると同時に、液滴内部での対流構造を可視化したので、その結果を報告する。また、化学波の開始地点と液滴の運動の様子、液滴サイズによる液滴運動の依存性に関する実験結果も報告する。 【櫻井建成(実験結果に関する議論)、北畑裕之(研究のとりまとめ)】

*Yasuaki Kobayashi, Hiroyuki Kitahata, and Masaharu Nagayama,
Model for calcium-mediated reduction of structural fluctuations in epidermis,
Physical Review E 92, 022709/1-7 (2015).

概要: 表皮細胞のカルシウム波のモデルを用い、表皮細胞のターンオーバーについての数値計算を行うと、表皮の基底層の凹凸が表皮の表面では緩やかになることがわかる。そこで,モデルを簡略化して細胞内カルシウム濃度と分化の度合いを変数とした連続モデルを提案し、基底層の凹凸や時間的なゆらぎが表皮の表面でどのように影響されるかを解析計算及び数値計算により議論した。 【北畑裕之(理論解析)】

Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and *Hiroyuki Kitahata,
General criteria for determining rotation or oscillation in a two-dimensional axisymmetric system,
Journal of Chemical Physics 143, 014117/1-6 (2015).

概要: 円形領域に閉じ込めた場合や中心力ポテンシャルが存在する場合など、2次元軸対称な系で動き回る自己駆動粒子は回転運動または振動運動をすることが様々な実験系で報告されている。それらの系ではどのようにして回転運動または振動運動が選ばれるか興味深い。そこで、2次元軸対称な空間内の自己駆動粒子の運動を記述する一般的なモデル力学系を構築し解析し、回転解と振動解の存在とその安定性条件を得た。また、求めた安定性条件が適用できない場合には、回転解や振動解に加え準周期的な軌道を示す解が安定に存在することを数値的に発見した。 【北畑裕之(研究の総括)、義永那津人(理論解析の補助)】

Tomohiro Sasaki, Nobuhiko J. Suematsu, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous recurrence of deposition and dissolution of a solid layer on a solution surface,
Journal of Physical Chemistry B 119, 9970-9974 (2015).

概要: 樟脳のメタノール溶液を空気中に静置すると、メタノールの蒸発に伴い溶液表面に樟脳の膜が生成する。ところが、いったん生成した樟脳の膜は、しばらくすると消滅し再び液面が現れる。その後、樟脳の膜の生成と消滅が周期的に現れる現象を見出した。本論文では、樟脳膜の生成、消滅の周期性を確認するとともに、そのメカニズムを知るため、溶液の温度と重量の経時変化を測定した。その結果、樟脳膜の消滅時に温度が低下し、その後徐々に上昇することがわかった。また重量は樟脳膜の消滅時に急激に減少することがわかった。これらをもとに周期的生成、消滅のメカニズムを議論した。 【北畑裕之(研究の総括)、櫻井建成(メカニズムの議論)】

*Kenji Kashima, Toshiyuki Ogawa, Tatsunari Sakurai,
Selective pattern formation control: Spatial spectrum consensus and Turing instability approach,
Automatica 56, 25-35 (2015).

概要: 本研究の目的は、自己組織的に発生する秩序の制御手法を確立することである。特に、不安定な定常解を持つ秩序に対して、継続的に安定な秩序を生み出すための手法について提案した。更に、その手法を用いた数値計算結果を紹介し、その数理構造も示した。 【櫻井建成(モデル系の提案とその議論)】

*Satoshi Nakata, Shogo Suzuki, Takato Ezaki, Hiroyuki Kitahata, Kei Nishi, and Yasumasa Nishiura,
Response of a chemical wave to local pulse irradiation in the ruthenium-catalyzed Belousov–Zhabotinsky reaction,
Physical Chemistry Chemistry Physics 17, 9148-9152 (2015).

概要: 光感受性BZ反応を用いて、その反応場を伝播する化学波の光パルスに対する応答を調べた。一次元的に化学波が伝播しているときに、反応場のある領域を一定の時間のみ光強度を変える。この光刺激により等速で伝播していた化学波が加速したり減速したりする。実験的にパルスを与えるタイミングをずらし、化学波のどの部分に光パルスを与えたときにもっとも加速・減速するかを調べた。また、Oregonatorをもとにした数値計算により、実験結果が再現できることも示した。 【北畑裕之(数値計算およびメカニズムに関する議論)】

2014

Akihiko Nakajima, Shuji Ishihara, Daisuke Imoto, and *Satoshi Sawai,
Rectified directional sensing in long-range cell migration,
Nature Communications 5, 5367/1-14 (2014).

概要: 細胞性粘菌の集合の合図は、細胞間で自己組織化する誘引物質の進行波が担っており、細胞は誘引物質の濃度がより高い方へ移動します。しかし、それでは、誘引物質の波が進行方向からやってきて去りゆく過程においては細胞が元居た場所へ戻っていってしまう「走化性パラドクス」が生じる。本研究では、微小流路内の高精度な層流制御技術と細胞内反応の定量的測定技術の開発、および理論モデルによる検証から、細胞性粘菌が誘引物質が経時的に増加する場合のみ、移動するための信号を細胞内で伝達することを明らかにした。誘因物質の濃度変化に適応的に応答する、局所的活性化と広域的な抑制機構に、刺激の変化への強い鋭敏性がある場合にこのような「整流作用」が生じることが示された。 【石原秀至(理論解析)】

*Satoshi Nakata, Tomoaki Ueda, Tatsuya Miyaji, Yui Matsuda, Yukiteru Katsumoto, Hiroyuki Kitahata, Takafumi Shimoaka, and Takeshi Hasegawa,
Transient reciprocating motion of a self-propelled object controlled by a molecular layer of a N‑stearoyl‑p‑nitroaniline: dependence on the temperature of an aqueous phase,
Journal of Physical Chemistry C 118, 14888-14893 (2014).

概要: 分子同志が強く相互作用する界面活性剤であるN-Stearoyl-p-nitroanilineのLangmuir膜を作り、そのΠ-A曲線を測定すると、低温では単調減少するのに対し、高温のときには逆N字型を描く。このようなLangmuir膜が存在するとき、水面に樟脳粒を浮かべたところ、低温の場合に限られた領域で往復運動することが明らかになった。逆に高温の場合には、そのような閉じ込めはおこらなかった。また、低温の場合に、あらかじめ樟脳粒でLangmuir膜上に曲線を描くとその曲線にそって樟脳粒が往復運動することも明らかになった。そのような現象のメカニズムの考察も行った。

*Nobuhiko J. Suematsu, Tomohiro Sasaki, Satoshi Nakata, and Hiroyuki Kitahata,
Quantitative estimation of the parameters for self-motion driven by difference in surface tension,
Langmuir 30, 8101-8108 (2014).

概要: 界面活性剤を周囲の水面に放出することにより周囲の水面に界面張力勾配を形成し動く系が自己駆動粒子のモデル系としてよく用いられる。その中でも特に典型的な水・樟脳系について、樟脳分子の溶けだし速度や実効的拡散係数、昇華率などを測定と理論解析から導出した。また、実際にどの程度の力が発生しているのかを測定し、それらの理論から求められる値と比較した。その結果、測定結果は矛盾なく理解され、樟脳粒子の運動の駆動力は10 μN程度であることがわかった。

*Nen Saito, Shuji Ishihara, and Kunihiko Kaneko,
Evolution of Genetic Redundancy : The Relevance of Complexity in Genotype-Phenotype Mapping,
New Journal of Physics 16, 063013/1-14 (2014).

概要: 生物の進化における揺らぎの役割を議論したもの。進化理論では、遺伝的な冗長性は集団レベルの適応度を下げるため、進化しにくいと考えられている。本論文では、遺伝型-表現型マッピングが複雑で揺らぎをもつ高自由度の進化モデルを導入し、ランダムネスを扱うためにレプリカ法を用いて解析を行った。自由度が高く複雑性が高い場合には遺伝的な冗長性が進化しうることを示した。

Keita Iida, Hiroyuki Kitahata, and *Masaharu Nagayama,
Theoretical study on the translation and rotation of an elliptic camphor particle,
Physica D 272, 39-50 (2014).

概要: 円からの摂動展開で楕円形の樟脳粒が短軸方向に動くことが明らかになった。また、濃度場と表面張力の関係が非線形な場合に、静止状態から並進運動への分岐がsupercriticalあるいはsubcriticalに条件になるを明らかにした。また、楕円形の樟脳粒が静止状態から回転運動への分岐を起こすことも明らかにし、その分岐点周りで運動方程式を得ることができた。さらには、数値計算により、楕円形の樟脳粒が運動する際に短軸方向に動くことが明らかになった。その際、分岐点周りの構造が円からの摂動展開により得られていることも明らかにした。

2013

Ryo Tanaka, Tomonori Nomoto, Taro Toyota, Hiroyuki Kitahata, and *Masanori Fujinami,
Delayed response of interfacial tension in propagating chemical waves of the Belousov-Zhabotinsky reaction without stirring,
The Journal of Physical Chemistry B 117, 13893–13898 (2013).

概要: 化学振動反応であるBelousov-Zhabotinsky反応溶液において、化学波が伝播するときの界面張力の変化をレーザー準弾性散乱により測定した。その結果、気液界面ではほぼ化学波の進行に伴う色の変化と一致して、界面張力が変化することがわかった。一方、油水界面における測定においては、化学波の進行よりも遅れて界面張力が変化することが明らかとなった。この現象について、界面活性をもつ鉄触媒の界面への吸着脱離の時定数を考えることにより議論した。 【豊田太郎(実験の提案、実験系の構築)、北畑裕之(実験結果に関する理論的解析)】