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A02計画班

論文等 | 原著論文

2017

Hiroki Saito,
Solving the Bose-Hubbard model with machine learning,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 093001/1-4 (2017).

概要: 最近、ニューラルネットワークと機械学習を用いて量子多体問題の基底状態を求めるという研究がなされた。これにヒントを得て、この方法を格子上のボース粒子に適用できるように拡張した。得られた多体基底状態は厳密解と非常に良く一致することがわかった。また、厳密対角化が難しいような大きな系にも適用し、平均場近似よりも良い結果が得られることがわかった。

*Yuki Koyano, Marian Gryciuk, Paulina Skrobanska, Maciej Malecki, Yutaka Sumino, Hiroyuki Kitahata, and Jerzy Gorecki,
Relationship between the size of a camphor-driven rotor and its angular velocity,
Physical Review E 96, 021609/1-8 (2017).

概要: 界面活性剤を周囲に拡散させ、自発的に界面張力勾配を作って運動する自己駆動粒子を二つつなぎ重心を固定した系を考える。この系は回転方向に運動の自由度を持つがカイラルな対称性があるため、静止した解からパラメータの変化により回転運動に分岐することが予想される。具体的には、樟脳粒をプラスチック板の両端に接着して対称な回転子を作り、中心を軸で固定した系を用いて実現される。本論文では、分岐点および回転速度の回転子半径依存性に着目した。実験結果および、モデルの解析、数値計算の結果について報告する。 【北畑裕之:数値計算、理論解析に関する議論】

*Jerzy Gorecki, Hiroyuki Kitahata, Nobuhiko J. Suematsu, Yuki Koyano, Paulina Skrobanska, Marian Gryciuk, Maciej Malecki, Takahiro Tanabe, Hiroya Yamamoto, and Satoshi Nakata,
Unidirectional motion of a camphor disk on water forced by interactions between surface camphor concentration and dynamically changing boundaries,
Physical Chemistry Chemical Physics 19, 18767-18772 (2017).

概要: 水面の樟脳粒が自発的に運動する系を用いて、ダイオード的な振る舞いをする系を構築した。具体的には、長方形水路の一部に円形領域を設け、軸を固定した2枚のゲートを設置する。これらのゲートは樟脳粒が拡散する樟脳分子に起因する表面張力によって開閉する。その結果、樟脳粒が一方から近づいたときにはゲートが開き、樟脳粒はゲートを通過することができるが、他方から近づいたときにはゲートが開かず、樟脳粒がゲートを通過できないというダイオード的な挙動を観察することができた。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論、数値計算】

*Kei Nishi, Shogo Suzuki, Katsuhiko Kayahara, Masakazu Kuze, Hiroyuki Kitahata, *Satoshi Nakata, and *Yasumasa Nishiura,
Achilles’ heel of a traveling pulse subject to a local external stimulus,
Physical Review E 95, 062209/1-8 (2016).

概要: Belousov-Zhabotinsky(BZ)反応は反応拡散系の実験モデルとして広く使われており、ルテニウム錯体を触媒として用いると光感受性を示す。このような光感受性BZ反応系を用いて、伝播する化学波に対しる外部摂動の影響を考察した。本研究においては、化学波の位置をカメラで検出し、外部摂動を化学波からの相対位置が一定になるようにパルス的に与えた。そして、化学波に対する相対位置および外部摂動のパルス幅によって化学波が消滅するか、伝播し続けるかが異なることを明らかにした。また、同様の外部摂動に対する影響を数値計算により調べ、化学波の少し前方あたりにもっとも外部摂動に対して感受性の高い、すなわち、化学波が消滅しやすい部分があることを明らかにした。 【北畑裕之:実験装置・メカニズムに関する議論】

Naoko Ueno, Taisuke Banno, Arisa Asami, Yuki Kazayama, Yuya Morimoto, Toshihisa Osaki, Shoji Takeuchi, Hiroyuki Kitahata, and *Taro Toyota,
Self-propelled motion of monodisperse underwater oil droplets formed by a microfluidic device,
Langmuir 33, 5593-5597 (2017).

概要: 界面活性剤水溶液中に油滴を注入すると自発的に運動することがこれまでに知られている。本論文では、マイクロ流路を用いて、注入する液滴のサイズを変化させたときの結果を報告する。油滴のサイズが異なると、自己駆動する際の液滴の速度も変化する。実験により、駆動速度が最大となる液滴半径があることが明らかとなった。また、そのメカニズムについての定性的な議論も行った。 【北畑裕之:メカニズムに関する議論、豊田太郎:研究の総括】

Masaya Kato, Xiao-Fei Zhang, and *Hiroki Saito,
Vortex pairs in a spin-orbit coupled Bose-Einstein condensate,
Physical Review A 95, 043605/1-7 (2017).

概要: スピン軌道相互作用のある2成分ボース・アインシュタイン凝縮体における量子渦の性質を調べた。通常のボース・アインシュタイン凝縮体に比べて渦の周りの速度場がスピン軌道相互作用によって大きく影響を受けることを明らかにした。これによって渦対が興味深い運動をすることを見出した。

Xiao-Fei Zhang, Masaya Kato, Wei Han, Shou-Gang Zhang, and Hiroki Saito,
Spin-orbit-coupled Bose-Einstein condensates held under a toroidal trap,
Physical Review A 95, 033620 (2017).

概要: スピン軌道相互作用するボース・アインシュタイン凝縮体をリング型トラップに閉じ込めたときの基底状態を求めた。中央の穴が小さい場合は従来のストライプ状態となり、穴を大きくしていくとリングに沿ったストライプとなることを見出した。また、量子多体状態を解析的に求め、フラグメントBECができることを明らかにした。

*Hiroyuki Kitahata, Hiroya Yamamoto, Misato Hata, Yumihiko S. Ikura, *Satoshi Nakata,
Relaxation dynamics of the Marangoni convection roll structure induced by camphor concentration gradient,
Colloids and Surfaces A 520, 436-441 (2017).

概要: 界面活性と昇華性をもつ樟脳の粒を水面に近づけると、樟脳分子が水面に吸着され、マランゴニ対流が発生する。水面に小さなプラスチック板を浮かべておくと、樟脳粒を水面に近づけたときマランゴニ対流のために樟脳粒から遠ざかる。ところが、樟脳粒を遠ざけるとプラスチック板がもともと樟脳粒があった位置に近づく現象が見られた。これは、マランゴニ効果により水面がマイクロメートルオーダーでくぼんでおり、そのくぼみが戻る際の流れによるものだと示唆される。この現象について実験的、理論的な考察を行った結果を報告する。 【北畑裕之(メカニズムに関する議論、数値計算)】

2016

Yoriaki Nishioka, Fumiaki Kobayashi, Nobutaka Sakurai, *Yuji Sasaki, and Hiroshi Orihara,
Microscopic characterisation of self-assembled colloidal particles in electrohydrodynamic convection of a low-birefringence nematic liquid crystal,
Liquid Crystals 43(4), 427-435 (2016).

概要: 近年、異方性流体中における微粒子の界面電動現象が注目を集めている。本研究では低複屈折性のネマチック液晶を使用し、その電気対流中でのコロイド粒子の運動を光学顕微鏡によって観察した。配向場の歪みに伴うリタデーションの変化は、試料セル内部での粒子の上下運動によって、偏光顕微鏡下で明瞭な色の変化として観察されることが分かった。さらには温度をコントロールすることで、電気対流のロールが比較的小さな条件であっても、鎖状に繋がった粒子の芋虫的な運動が可能であることが分かった。

Dai Akita, Itsuki Kunita, Mark D Fricker, Shigeru Kuroda, Katsuhiko Sato and *Toshiyuki Nakagaki,
Experimental models for Murray’s law,
Journal of Physics D: Applied Physics 50, 024001 (2016).

概要: 血管や葉っぱの支脈などのような管のネットワークの形成は生物にとって重要である。なぜなら栄養を隅々まで効率よく分配しまた老廃物を回収しなければならないからである。この管のネットワークは遺伝的に決まっているものというよりは、その場の状況に合わせてフレキシブルに変化するものであり、何によってその形成がコントロールされているのかは未だ謎のままである。我々この問題に、約一日で複雑なネットワークを形成する真正粘菌を用いて実験と理論の両方からアプローチし、血管などで知られるマレー則に流体力学的視点からの解釈を与えることに成功した。

Yuji Sasaki, *V.S.R. Jampani, Chiharu Tanaka, Nobutaka Sakurai, Shin Sakane, Khoa V. Le, *Fumito Araoka, and *Hiroshi Orihara,
Large-scale self-organization of reconfigurable topological defect networks in nematic liquid crystals,
Nature Communications 7, 13238 (2016).

概要: ネマチック液晶のトポロジカル欠陥は基礎と応用の両方から盛んに研究がなされている。一般的に、液晶分子の配向にとって、欠陥はもっともエネルギーの低い状態ではないため、多数のトポロジカル欠陥が存在する場合、それらは時間と共に消滅してしまう。そのため現在は光配向を始めとした、表面にパターニングを行う手法が広く用いられている。本研究では、非晶性フッ素樹脂で覆われたセルに少量のイオンを含んだ液晶を注入し、交流電圧を印加する実験を行った。するとumbilicsと呼ばれる欠陥が格子状に広範囲にわたって安定化されることを見出した。この手法は基板表面に特別な処理をしていないため、発生した多数の欠陥を光マニピュレーションなどで再構築、制御可能であることを示した。

*Xiao-Fei Zhang, Wei Han, Hai-Feng Jiang, Wu-Ming Liu, Hiroki Saito, and Shou-Gang Zhang,
Topological defect formation in rotating binary dipolar Bose-Einstein condensate,
Annals of Physics 375, 368-377 (2016).

概要: 磁気双極子相互作用する2成分ボース・アインシュタイン凝縮体が回転する光格子ポテンシャルに閉じ込められた場合の基底状態を研究した。系のパラメータによって様々なトポロジカル構造が現れることを見出した。

Masaya Kato, Xiao-Fei Zhang, Daichi Sasaki, and Hiroki Saito,
Twisted spin vortices in a spin-1 Bose-Einstein condensate with Rashba spin-orbit coupling and dipole-dipole interaction,
Physical Review A 94, 043633/1-6 (2016).

概要: 磁気双極子相互作用を持ち、かつスピン・軌道相互作用をするスピン1のボース・アインシュタイン凝縮体の基底状態の相図を明らかにした。磁気双極子相互作用とスピン・軌道相互作用の競合により、スピン渦が空間的にねじれたような新規な磁性相が存在することを見出した。

Yuki Koyano, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Oscillatory motion of a camphor grain in a one-dimensional finite region,
Physical Review E 94, 042215/1-8 (2016).

概要: 樟脳粒は水面に浮かべると樟脳分子が水面に拡がることで水面の表面張力を下げる。粒が対称な形状であっても、自発的に樟脳分子濃度のプロファイルの対称性が崩れ、ある方向に運動することが知られている。今回、擬1次元の水路での樟脳粒の運動について、実験および理論的解析、数値計算を行った。その結果、水相の粘性や水路の長さにより、水路の中心に静止する状態から、水路内を往復する運動に分岐することがわかった。数理モデルを縮約することでその分岐がホップ分岐であることが明らかになり、粘性や水路の長さに対する依存性も再現することができた。 【櫻井建成(メカニズムに関する議論)、北畑裕之(研究のとりまとめ)】

Hiroki Saito and Rina Kanamoto,
Self-rotation and synchronization in exciton-polariton condensates,
Physical Review B 94, 165306 (2016).

概要: 半導体量子井戸中の励起子ポラリトン凝縮体のダイナミクスを研究した。ある条件のもとで凝縮体の波束が自励振動を起こし、自ら回転することを見出した。さらに2つの波束の回転がシンクロし周波数引き込みが起こることを見出した。

Akihiko Nakajima, Motohiko Ishida, Taihei Fujimori, Yuichi Wakamoto, *Satoshi Sawai,
The Microfluidic lighthouse: an omnidirectional gradient generator,
Lab on Chip 16(22), 4382-4394 (2016).

*Takayuki Narumi, Yosuke Mikami, Tomoyuki Nagaya, Hirotaka Okabe, Kazuhiro Hara, and Yoshiki Hidaka,
Relaxation with long-period oscillation in defect turbulence of planar nematic liquid crystals,
Physical Review E 94, 042701/1-6 (2016).

概要: 弱い乱流のカオス的移流の性質を明らかにするために、ネマチック液晶のプレーナー配向系における時空カオスの一種である欠陥乱流を実験的に研究した。観測されるパターンの動的構造因子は、単純な指数緩和と弱い減衰振動の和によって表された。単純緩和は位相変調の結果として生じ、減衰振動は、局所領域における欠陥対のグライドによって生じる。また、各緩和は乱流輸送を巨視的な寄与と揺らぎに分離する射影演算子法によって解析的に導かれる。その結果、欠陥乱流の非熱的揺動は2つの独立したマルコフプロセスに分離された。 【長屋智之:画像解析ソフトウェアの作成、日高芳樹:研究の構想・総括】

*Wei Han, Xiao-Fei Zhang, Shu-Wei Song, Hiroki Saito, Wei Zhang, Wu-Ming Liu, and Shou-Gang Zhang,
Double-quantum spin vortices in SU(3) spin-orbit coupled Bose gases,
Physical Review A 94, 033611/1-9 (2016).

概要: SU(3)型のスピン軌道相互作用を持つスピン1のBECを実現する方法を提案した。さらに、その系の基底状態がスピン渦の格子状態になることを示し、二重スピン渦が基底状態であることを明らかにした。

Elisa Herawati, Daisuke Taniguchi, Hatsuho Kanoh, Kazuhiro Tateishi, Shuji Ishihara, and Sachiko Tsukita,
Multiciliated cell basal bodies align in stereotypical patterns coordinated by the apical cytoskeleto,
The Journal of Cell Biology 214, 571–586 (2016).

概要: マウス気管の他繊毛細胞の発生における繊毛の配列過程を、基底小体の長期ライブセルイメージングで追跡し、始め散らばっていたパターから、配列する過程が各発生ステージでどのように発達、遷移するかを調べた。また、細胞アピカル面に発達する細胞骨格系との相互作用という観点から、アクティブハイドロダイナミクスに基づく数理モデルを構築し、基底小体の配列を自己組織化現象として説明した。同時に、細胞平面内極性(PCP)との相互作用についても考察を行った。

Yuki Koyano, Hiroyuki Kitahata, *Alexander S. Mikhailov,
Hydrodynamic collective effects of active proteins in biological membranes,
Physical Review E 94, 022416/1-11 (2016).

概要: 生体膜上にはポンプやモーターなどの機能を担う活性タンパク質が多数存在する。生体膜は熱ゆらぎによってだけではなく、これらの活性タンパク質の周期的な形態変化により、揺動を受けると考えられる。そこで、本研究では、生体膜を2次元流体、活性タンパク質を流れを駆動するフォース・ダイポールと見なして構築されたモデルを元に、複数の活性タンパク質によって協同的に引き起こされる生体膜内の流れについて、理論的・数値的にその挙動を調べた。 【北畑裕之(数値計算および理論解析の補助)】

Koutaro Nakagome, Katsuhiko Sato, Seine A. Shintani, *Shin’ichi Ishiwata,
Model simulation of the SPOC wave in a bundle of striated myofibrils,
Biophysics and Physicobiology 13, 217-226 (2016).

概要: 横紋筋は一般にその中間活性状態で自励振動(自発的に収縮・弛緩を繰り返す現象)を示すことが知られている。近年我々は筋肉の構造を反映した数理モデルを構築し、筋肉の最小単位であるサルコメアのレベルでその自励振動が自然に説明できることを示し、またそのサルコメアモデルを筋原線維のレベルまで拡張した。今回の論文では、その筋原線維モデルをさらにバンドル化し、筋繊維のレベルでの筋肉の自励振動の振動パターンについて研究を行った。実験とよく対応した振動パターンが再現されることがわかりさらに実験での予言も提案された。

Taisuke Banno, Arisa Asami, Naoko Ueno, Hiroyuki Kitahata, Yuki Koyano, Kouichi Asakura, *Taro Toyota,
Deformable self-propelled micro-object comprising underwater oil droplets,
Scientific Reports 6, 31292/1-9 (2016).

概要: 水中を変形しながら泳ぎ回るアメーバ様の動きをする細胞サイズの人工の油滴を創製し、顕微鏡画像を用いた運動解析より、この油滴の運動機構は、油滴の後方で形成される強い流れ場と油滴内部の局所的な対流構造によって、速度変化の後に変形が誘起されるという新たな運動機構であることを推定した。 【豊田太郎(研究の総括、実験系の提案)】

*Satoshi Nakata, Hiroya Yamamoto, Yuki Koyano, Osamu Yamanaka, Yutaka Sumino, Nobuhiko J. Suematsu, Hiroyuki Kitahata, Paulina Skrobanska, and Jerzy Gorecki,
Selection of the Rotation Direction for a Camphor Disk Resulting from Chiral Asymmetry of a Water Chamber,
Journal of Physical Chemistry B 120, 9166-9172 (2016).

概要: 樟脳円板を円形の水面に閉じ込めるとその境界に沿って円運動する。そこで円形の境界を二つの半円の組み合わせと考え、その半円の中心をずらしていくことで境界にカイラルな非対称性を持たせ、その際の運動の変化を調べた。円形の場合には、樟脳円板ほぼ等確率で時計回り反時計回りに公転していたが、徐々に非対称性を上げていくと、その公転の向きが一方向に限定された。更に非対称性をあげると公転する運動は不安定になりカオス的な運動が現れた。本論文では数値計算を用いながらそのメカニズムを明らかにした。 【北畑裕之(メカニズムと数値計算に関する議論)】

Takayuki Torisawa, Daisuke Taniguchi, Shuji Ishihara, Kazuhiro Oiwa,
Spontaneous Formation of a Globally Connected Contractile Network in a Microtubule-Motor System,
Biophysical Journal 111, 373–385 (2016).

概要: 微小管のつくるネットワークの示すダイナミクスを調べた。in vitro構成系においてて、キネシンモーターEg5との濃度比に依存して、ネットワークの収縮や破砕(rupture)が起こることを確認した。また、アスター間の引っ張りを考慮した数理モデルを考え、モーター濃度や性質に依存して表せる微小管ネットワークの振る舞いを説明した。

*Yujiro Eto, Masahiro Takahashi, Masaya Kunimi, Hiroki Saito, and Takuya Hirano,
Nonequilibrium dynamics induced by miscible-immiscible transition in binary Bose-Einstein condensates,
New Journal of Physics 17, 0703029/1-6 (2016).

概要: 多成分流体の空間的な構造形成は、非平衡過程や非線型現象を理解する上で重要な効果の1つである。本論文では、相分離ダイナミクスとスピン遷移を利用することで、混ざり合う2成分のボース・アインシュタイン凝縮体の空間構造を制御し、パターン形成ダイナミクスを誘起することに成功した。

Fumihito Fukujin, Akihiko Nakajima, Nao Shimada, *Satoshi Sawai,
Self-organization of chemoattractant waves in Dictyostelium depends on F-actin and cell–substrate adhesion,
Journal of The Royal Society Interface 13 (2016).

*Tomoyuki Nagaya, Yuki Satou, Yoshitomo Goto, Yoshiki Hidaka, and Hiroshi Orihara,
Viscosity of Liquid Crystal Mixtures in the Presence of Electroconvection,
Journal of the Physical Society of Japan 85, 074002/1-4 (2016).

概要: 誘電異方性が正のネマチック液晶EBCAと負のネマチック液晶MBBAの混合液晶において,液晶電気対流が発生するときのみかけの粘性の電圧依存性を測定した。誘電異方性が負の場合には,高電圧下で粘性の減少が確認できた。これは,負の電気的応力によるものと考察した。 【折原宏:理論的考察、日高芳樹:液晶対流実験についての助言】

Hironobu Nogucci and Shuji Ishihara,
Collective dynamics of active filament complexes,
Physical Review E 93, 052406/1-10 (2016).

概要: 形態のあるバイオフィラメントをモデル化し、その集団がつくるネットワークのダイナミクスを調べた。

Yui Matsuda, Nobuhiko J. Suematsu, Hiroyuki Kitahata, Yumihiko S.Ikura, and *Satoshi Nakata,
Acceleration or deeleration of self-motion by the Marangoni effect,
Chemical Physics Letters 654, 92-96 (2016).

概要: 樟脳粒や樟脳船を水面に浮かべると表面張力差を生み出して運動する。この運動を擬一次元的な水路で行うと、その水相の深さによって運動速度が異なった。特に樟脳粒の場合には、水相が深くなるにつれて運動速度が速くなるのに対し、樟脳船では深くなるにつれて運動速度が遅くなる傾向が見られた。この現象に関して、水相に発生するマランゴニ対流の構造や強度をもとに議論し、そのメカニズムを明らかにした。 【北畑裕之(実験データ解析補助およびメカニズムに関する議論)】

Hiroki Saito,
Path-integral Monte Carlo study on a droplet of a dipolar Bose-Einstein condensate stabilized by quantum fluctuation,
Journal of the Physical Society of Japan 85, 053001 (2016).

概要: 最近、Stuttgartの実験グループによりDysprosiumのボース・アインシュタイン凝縮体で強い双極子相互作用によるパターン形成が観測された。本研究では、パターンの構成要素となる単一のドロップレットが量子ゆらぎによって安定化されることを量子多体計算で示した。 

Ken H. Nagai, Kunihito Tachibana, Yuta Tobe, Masaki Kazama, Hiroyuki Kitahata, Seiro Omata, *Masaharu Nagayama,
Mathematical model for self-propelled droplets driven by interfacial tension,
Journal of Chemical Physics 144, 114707/1-8 (2016).

概要: 界面張力により駆動される液滴について、系のエネルギーを考えてLagrangeanを構成することにより、その運動を記述することを試みた。このようなアプローチにより、液滴が運動するだけではなく、分裂や融合、反射する様子も定性的に再現することができた。 【北畑裕之(モデル構築に関する議論)】

*Yujiro Eto, Masahiro Takahashi, Keita Nabeta, Ryotaro Okada, Masaya Kunimi, Hiroki Saito, and Takuya Hirano,
Bouncing motion and penetration dynamics in multicomponent Bose-Einstein condensates,
Physical Review A 93, 033615/1-6 (2016).

概要: 衝突する多成分ボース・アインシュタイン凝縮体 (BEC) において引き起こされる成分間の反発や相互通過などの動的な特性が、多成分系の混和性とどのような関係を持つのかについて研究を行った。混ざり合わない性質を持つBECの相互通過や混ざり合うBEC間での反発やドメイン形成など、非直感的な振る舞いが実験的に観測された。グロスピタエフスキー方程式による理論シミュレーションから、BECの相互通過時間は、散乱長をわずかに変えることで制御可能であることが明らかになった。 【衛藤雄二郎(連携研究者)、高橋雅裕(連携研究者)、斎藤弘樹(研究分担者)、平野琢也(研究代表者)】

Tomoya Kaneda and Hiroki Saito,
Collision dynamics of Skyrmions in a two-component Bose-Einsteincondensate,
Physical Review A 93, 033611/1-6 (2016).

概要: 二成分BECにおいて二つのskyrmionが衝突するダイナミクスを数値的に調べた。衝突前後でトポロジカルな巻数が保存し、複数のskyrmionに分裂することがわかった。

*Yutaka Sumino, Norifumi L. Yamada, Michihiro Nagao, Takuya Honda, Hiroyuki Kitahata, Yuri B. Melnichenko, and Hideki Seto,
Mechanism of Spontaneous Blebbing Motion of an Oil−Water Interface: Elastic Stress Generated by a Lamellar−Lamellar Transition,
Langmuir 32, 2891-2899 (2016).

概要: カチオン性界面活性剤の水溶液の上にアニオン性界面活性剤の油の液滴を載せたとき、界面で自発的にブレブの生成が起こる。kれまでに、界面にできる会合体に関して、マイクロビームSAXS観察を行ってきた。本論文では、この会合体に関してSANS観察を行い、ブレビング運動をしているときに生成されている会合体が、時間とともに構造が変化することを明らかにした。また、運動するためには、今回観察された会合体が生成されることが必要であることを明らかにした。 【北畑裕之(メカニズムの考察に関する議論)】

Masanobu Horie, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Experimental and theoretical approach for the clustering of globally coupled density oscillators based on phase response,
Physical Review E 93, 012212/1-9 (2016).

概要: 少数個の振動子が結合した振動子系において、クラスタリングが見られることがある。この系を研究するために塩水振動子を用いたところ、塩水指導子を4個結合させた系において、2:2あるいは2:1:1のクラスタリングが見られた。この現象に関して、シンプルなモデルから位相応答を計算し、それをもとに安定性解析や数値計算を行い、考察した。  【櫻井建成:理論解析に関する議論、北畑裕之:研究のとりまとめ】

Haruka Sugiura, Manami Ito, Tomoya Okuaki, Yoshihito Mori, Hiroyuki Kitahata, and *Masahiro Takinoue,
Pulse-density modulation control of chemical oscillation far from equilibrium in a droplet open-reactor system,
Nature Communications 7, 10212/1-9 (2016).

概要: マイクロ流路中に水滴を流し、電場を与えて融合させることにより、マイクロ流路中の小さな領域を物質の出入りを制御できる化学反応槽とすることができた。その中で、物質の供給がないと起こりえないpH振動を起こすことに成功した。また、物質の流入、流出の割合を電場のオンオフで液滴の融合を制御することにより、制御することに成功した。物質の流入出の割合を変えたときの、pH振動反応の挙動に関して実験と数値計算で比較し、理論通り物質の流れをコントロールできていることを確かめた。  【北畑裕之:理論解析の補助】

Kui-Tian Xi and Hiroki Saito,
Droplet formation in a Bose-Einstein condensate with strong dipole-dipole interaction,
Physical Review A 93, 011604(R) (2016).

概要: 最近、Stuttgartの実験グループによって、Dy原子のボース・アインシュタイン凝縮体における磁気双極子相互作用によるパターン形成が観測された。本論文では、三体衝突を取り入れた平均場理論により実験結果が良く再現できることを示した。

2015

Boris Guirao, Stéphane Rigaud, Floris Bosveld, Anaïs Bailles, Jesus Lopez-Gay, Shuji Ishihara, Kaoru Sugimura, *François Graner, *Yohanns Bellaïche,
Unified quantitative characterization of epithelial tissue development,
eLIFE , 08519 (2015).

概要: 個体発生過程においては、組織の変形に細胞分、細胞の再配置、個々の細胞の変形、アポトーシスがそれぞれどのていど起用するかの定量化が必須である。我々はこの定量化を可能とする定式化を行い、実際にショウジョウバエの上皮系に適用した。

*Hiroyuki Kitahata, Rui Tanaka, Yuki Koyano, Satoshi Matsumoto, Katsuhiro Nishinari, Tadashi Watanabe,Koji Hasegawa, Tetsuya Kanagawa, Akiko Kaneko, and Yutaka Abe,
Oscillation of a rotating levitated droplet: Analysis with a mechanical model,
Physical Review E 92, 062904/1-8 (2015).

概要: 電荷を与えることにより浮遊させた液滴に外力を与え、微小変形の固有振動数を測定することにより表面張力が測定できることが知られている。この浮遊液滴を回転させた際に固有振動数が静止状態よりも高くなること、振幅を大きくしたときに固有振動数が低くなることが実験的に明らかになっている。今回、表面張力によるエネルギー変化と変形、回転によるエネルギーを考察することによって、見通し良く、固有振動数と液滴の回転角速度の関係を導くことができた。 【北畑裕之(理論解析、研究のとりまとめ)】

Masanobu Tanaka, Marcel Hörning, *Hiroyuki Kitahata, and Kenichi Yoshikawa,
Elimination of a spiral wave pinned at an obstacle by a train of plane waves: Effect of diffusion between obstacles and surrounding media,
Chaos 25, 103127/1-9 (2015).

概要: 興奮系にディフェクトがあるとき、ディフェクトにらせん波がトラップされることが知られている。このようならせん波は心臓でも見られており、そのらせん波の除去は重要な問題である。これまでに、物質の流出入がないディフェクトにトラップされたらせん波の除去可能性について議論した。今回、物質がディフェクト内に拡散できるときのらせん波の除去可能性について数値計算および解析を中心として調査した。 【北畑裕之(理論解析)、吉川研一(研究のとりまとめ)】

*Hiroki Saito,
Can we swim in superfluids?: Numerical demonstration of self-propulsion in a Bose-Einstein condensate,
Journal of the Physical Society of Japan 84, 114001/1-6 (2015).

概要: 超流動体の中で、自ら変形する物体が自己推進できるかを数値的に研究した。時間反転非対称な変形の場合には超流動体を乱さずに推進することがわかった。速い変形の場合には量子渦や励起を放出して自己推進が可能であることがわかった。

*Shigeru Kuroda, Seiji Takagi, Toshiyuki Nakagaki and Tetsuo Ueda,
Allometry in Physarum plasmodium during free locomotion: size versus shape, speed and rhythm,
Journal of Experimental Biology 218, 3729-3738 (2015).

概要: 真正粘菌変形体のアメーバ運動におけるアロメトリースケーリング則の実験的解明。変形体のサイズを、100マイクロメートルから10センチメートルまでかえて、移動速度、細胞形状、収縮リズムを測定した。(1)進行する変形体は先端部が最も厚く、後方に向かい指数関数的に減少する。細胞体型はサイズとともに変化し、小さいもの程、ずんぐりむっくりしている。(2)平均移動速度は、先端部の平均厚みに比例する。(3)収縮リズムの周期はサイズとともに対数関数的に増大する。以上のような特徴に基づき、変形体移動の数理モデルを提案した。

*Yoshiki Hidaka, Megumi Hashiguchi, Noriko Oikawa, Shoichi Kai,
Lagrangian chaos and particle diffusion in electroconvection of planar nematic liquid crystals,
Physical Review E 92, 032909/1-6 (2015).

概要: プレーナー配向系の液晶電気対流に現れる2種類の散逸構造の揺らぎ「欠陥乱流(対流ロールの揺らぎ)」「時空間欠性(秩序構造と乱流の共存)」について、Lagrange的観点から統計的性質を明らかにした。とくに、注入された孤立粒子の運動の追跡(非熱的Brown運動)の手法を用いた。欠陥乱流では、粒子は1つのロールにトラップされ、ときどき隣のロールにジャンプする。そのジャンプ頻度の制御パラメータ依存性からロール間の活性化エネルギーを得た。時空間欠性では、秩序領域と乱流領域では拡散係数の値に大きな違いがある。したがって1つの粒子の拡散係数の時間変化は、間欠的に変化する2値時系列とみなすことができる。一方、空間の1点での状態の変化(Euler的観点)も、秩序と乱流の間で間欠的に変化する。どちらの場合も秩序状態の持続時間の変化はべき分布を示したが、べき指数が異なることがわかった。

Shingo Miyazaki, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Coupling between a chemical wave and motion in a Belousov-Zhabotinsky droplet,
Current Physical Chemistry 5, 82-90 (2015).

概要: BZ反応の溶液を微小な液滴にしてオレイン酸に浮かべると内部で化学波が起こり、界面張力が変化するために液滴が自発的に運動することが知られている。本論文ではその現象についての実験結果および、Stokes方程式を使った流体力学でのメカニズムの提案に関するレビューをすると同時に、液滴内部での対流構造を可視化したので、その結果を報告する。また、化学波の開始地点と液滴の運動の様子、液滴サイズによる液滴運動の依存性に関する実験結果も報告する。 【櫻井建成(実験結果に関する議論)、北畑裕之(研究のとりまとめ)】

*Yasuaki Kobayashi, Hiroyuki Kitahata, and Masaharu Nagayama,
Model for calcium-mediated reduction of structural fluctuations in epidermis,
Physical Review E 92, 022709/1-7 (2015).

概要: 表皮細胞のカルシウム波のモデルを用い、表皮細胞のターンオーバーについての数値計算を行うと、表皮の基底層の凹凸が表皮の表面では緩やかになることがわかる。そこで,モデルを簡略化して細胞内カルシウム濃度と分化の度合いを変数とした連続モデルを提案し、基底層の凹凸や時間的なゆらぎが表皮の表面でどのように影響されるかを解析計算及び数値計算により議論した。 【北畑裕之(理論解析)】

Misato Iino, *Yoshiki Hidaka, Fahrudin Nugroho, Rinto Anugraha, Hirotaka Okabe, Kazuhiro Hara,
Responses of spatiotemporal chaos to oscillating forces,
Physical Review E 92, 012916/1-5 (2015).

概要: 液晶電気対流において、Nambu-Goldestoneモードである液晶配向と対流の相互作用によって生じる散逸構造の揺らぎ「ソフトモード乱流」の動的性質を明らかにするために、その交流磁場応答を調べた。ソフトモード乱流は対流ロールの向きに関する時空カオスであるが、磁場を印加するとNambu-Goldstoneモードの励起が抑えられるためロールの向きがそろう。そのそろう程度を定量化した秩序変数の時間変化を測定し、交流磁場応答の複素感受率を得た。低周波数磁場に対する複素感受率はDebye型緩和スペクトルによく合い、カオス誘起摩擦による緩和時間が得られた。一方、高周波数ではDebye型緩和から外れ、秩序変数の大きな揺らぎが生じた。

*Yujiro Eto, Masaya Kunimi,Hidekatsu Tokita,Hiroki Saito, and Takuya Hirano,
Suppression of relative flow by multiple domains in two component Bose-Einstein condensates,
Physical Review A 92, 013611/1-5 (2015).

概要: 混ざり合わない性質を持つ2成分ボース・アインシュタイン凝縮体 (BEC) の流動特性と空間構造形成の関係に関する研究を行った。混ざり合わない性質を持つ2成分BEC中で生成されるドメイン構造が、磁場勾配により引き起こされるBEC間の相対的な流れを抑える効果を生むことを明らかにした。 【衛藤雄二郎(連携研究者)、斎藤弘樹(研究分担者)、平野琢也(研究代表者)】

Yuki Koyano, Natsuhiko Yoshinaga, and *Hiroyuki Kitahata,
General criteria for determining rotation or oscillation in a two-dimensional axisymmetric system,
Journal of Chemical Physics 143, 014117/1-6 (2015).

概要: 円形領域に閉じ込めた場合や中心力ポテンシャルが存在する場合など、2次元軸対称な系で動き回る自己駆動粒子は回転運動または振動運動をすることが様々な実験系で報告されている。それらの系ではどのようにして回転運動または振動運動が選ばれるか興味深い。そこで、2次元軸対称な空間内の自己駆動粒子の運動を記述する一般的なモデル力学系を構築し解析し、回転解と振動解の存在とその安定性条件を得た。また、求めた安定性条件が適用できない場合には、回転解や振動解に加え準周期的な軌道を示す解が安定に存在することを数値的に発見した。 【北畑裕之(研究の総括)、義永那津人(理論解析の補助)】

Tomohiro Sasaki, Nobuhiko J. Suematsu, Tatsunari Sakurai, and *Hiroyuki Kitahata,
Spontaneous recurrence of deposition and dissolution of a solid layer on a solution surface,
Journal of Physical Chemistry B 119, 9970-9974 (2015).

概要: 樟脳のメタノール溶液を空気中に静置すると、メタノールの蒸発に伴い溶液表面に樟脳の膜が生成する。ところが、いったん生成した樟脳の膜は、しばらくすると消滅し再び液面が現れる。その後、樟脳の膜の生成と消滅が周期的に現れる現象を見出した。本論文では、樟脳膜の生成、消滅の周期性を確認するとともに、そのメカニズムを知るため、溶液の温度と重量の経時変化を測定した。その結果、樟脳膜の消滅時に温度が低下し、その後徐々に上昇することがわかった。また重量は樟脳膜の消滅時に急激に減少することがわかった。これらをもとに周期的生成、消滅のメカニズムを議論した。 【北畑裕之(研究の総括)、櫻井建成(メカニズムの議論)】

Jaka Fajar Fatriansyah and *Hiroshi Orihara,
Electric-field-induced flow-aligning state in a nematic liquid crystal,
Physical Review E 91, 042508/1-7 (2015).

概要: せん断流およびdc電場下におけるネマチック液晶に弱いac電場を印加したときの応力の応答を測定した。dc電場を変えると応答が異なる二つの状態(流動配向状態と非配向状態)が明瞭に観測された。前者の状態では液晶の配向ベクトルがせん断面内にあるのに対し、後者ではこの面から外れている。dc電場を印加すると非配向状態は配向状態へと変化させることができる。配向状態から非配向状態の転移において応力応答が増大し、緩和時間が長くなることを見出した。流動配向状態における実験結果をレスリー・エリクセン理論に基づいて議論した。

*Hiroki Saito and Masaya Kunimi,
Energy shift of magnons in a ferromagnetic spinor-dipolar Bose-Einstein condensate,
Physical Review A 91, 041603(R)/1-4 (2015).

概要: 最近、UCバークレーの実験グループがスピン1BECにおいてマグノンの分散関係を精密に測定した[G. E. Marti et al., Phys. Rev. Lett. 113, 165301 (2014)]。その結果、マグノンの質量が予想より大きいことがわかった。我々は磁気双極子相互作用が入った平均場方程式を解くことで実験結果を再現し、さらにマグノンの質量が軽くなるような実験セットアップも提案した。

Masaya Kunimi* and Hiroki Saito,
Upper bound of one-magnon excitation and lower bound of effective mass for ferromagnetic spinor Bose and Fermi gases,
Physical Review A 91, 043624/1-6 (2015).

概要: 変分法を用いて基底状態が完全スピン偏極したspinor BoseガスとFermiガスにおける1マグノン励起のエネルギーの上限を厳密に求めた。 【斎藤弘樹(研究内容について議論)】

*Kenji Kashima, Toshiyuki Ogawa, Tatsunari Sakurai,
Selective pattern formation control: Spatial spectrum consensus and Turing instability approach,
Automatica 56, 25-35 (2015).

概要: 本研究の目的は、自己組織的に発生する秩序の制御手法を確立することである。特に、不安定な定常解を持つ秩序に対して、継続的に安定な秩序を生み出すための手法について提案した。更に、その手法を用いた数値計算結果を紹介し、その数理構造も示した。 【櫻井建成(モデル系の提案とその議論)】

*Yuji Sasaki, Hikaru Hoshikawa, Takafumi Seto, Fumiaki Kobayashi, V. S. R. Jampani, Stephan Herminghaus, Christian Bahr, and Hiroshi Orihara,
Direct visualization of spatiotemporal structure of self-assembled colloidal particles in electrohydrodynamic flow of a nematic liquid crystal,
Langmuir 31, 3815-3819 (2015).

概要: 非平衡条件下におかれたソフトマターにとって、その時空間のダイナミクスを調べることは極めて重要である。本研究では共焦点レーザー走査顕微鏡を用いることにより、液晶電気対流中におけるコロイド粒子の運動を三次元的に直接観察した。とりわけ鎖状に繋がった粒子の芋虫運動を可視化することで、その持続的な運動が液晶の弾性力、電気泳動、電気対流の三つの効果によって可能となっていることを明らかにした。さらにコロイド粒子の表面処理の方法よって、運動の軌跡がどのように変化するかについても詳細に示した。

*Jean-Paul Rieu, Helene Delano-Ayari, Seiji Takagi, Yoshimi Tanaka, Toshiyuki Nakagaki,
Periodic traction in migrating large amoeba of Physarum Polycephalum,
Journal of Royal Society Interface 12, 20150099 (2015).

概要: 張力顕微鏡技術を用いて真正粘菌の微小変形体のアメーバ運動を観察した。いくつかの張力パターンがあることがわかった。

*Satoshi Nakata, Shogo Suzuki, Takato Ezaki, Hiroyuki Kitahata, Kei Nishi, and Yasumasa Nishiura,
Response of a chemical wave to local pulse irradiation in the ruthenium-catalyzed Belousov–Zhabotinsky reaction,
Physical Chemistry Chemistry Physics 17, 9148-9152 (2015).

概要: 光感受性BZ反応を用いて、その反応場を伝播する化学波の光パルスに対する応答を調べた。一次元的に化学波が伝播しているときに、反応場のある領域を一定の時間のみ光強度を変える。この光刺激により等速で伝播していた化学波が加速したり減速したりする。実験的にパルスを与えるタイミングをずらし、化学波のどの部分に光パルスを与えたときにもっとも加速・減速するかを調べた。また、Oregonatorをもとにした数値計算により、実験結果が再現できることも示した。 【北畑裕之(数値計算およびメカニズムに関する議論)】

2014

*Yang Ho Na, Yuki Aburaya, Hiroshi Orihara, Kazuyuki Hiraoka, and Youngbae Han,
Electrically induced deformation in chiral smectic elastomers with different domain structures,
Physical Review E 90, 062507/1-6 (2014).

概要: 配向度の異なる2種類の液晶エラストマーにおける電場誘起ひずみを試料表面に蛍光微粒子を分散させることにより定量的に測定した。配向度の低い試料LCE1ではせん断ひずみが、配向度の高い試料LCE2では伸縮ひずみが支配的であることが分った。さらに、ひずみテンソルの固有値を求めたところ、LCE1の方がLCE2より大きいことを明らかにし、その理由を分域構造をもとに議論した。

*Masaya Kunimi,
Metastable spin textures and Nambu-Goldstone modes of a ferromagnetic spin-1 Bose-Einstein condensate confined in a ring trap,
Physical Review A 90, 063632/1-8 (2014).

概要: 回転するリングトラップ中に閉じ込められたスピン1のBose凝縮体について平均場理論を用い研究を行った。その結果として、準安定なスピンテクスチャー状態の解析解を得た。また,このスピンテクスチャー状態において、Nambu-Goldstoneモードの数が回転速度を変えると、連続対称性の変化を伴うこと無く、ある速度で変化することを示した。 【斎藤弘樹:研究内容について議論】

Yuji Sasaki, Yoshinori Takikawa, V. S. R. Jampani, Hikaru Hoshikawa, Takafumi Seto, Christian Bahr, Stephan Herminghaus, Yoshiki Hidaka, and *Hiroshi Orihara,
Colloidal caterpillars for cargo transportation,
Soft Matter 10, 8813–8820 (2014).

概要: 流体中の微小物体の輸送は、ドラッグデリバリー、平衡から離れたアクティブマター、ラボ・オン・チップ等の科学分野において広く必要とされている。ここでは、液晶電気対流(EHC)を用いたネマチック液晶中の単体のコロイド粒子および鎖状に繋がったコロイドチェインの方向づけられた運動を報告する。コロイド回りのダイレクターの非対称な配向は、コロイド粒子においてはEHC中の一方向へのホッピングを、コロイドチェインに対してはロール軸に垂直な方向に芋虫のような運動をもたらした。コロイドチェインを微小荷物の牽引エンジンとして使えることを例証した。(表紙に選ばれた)

Tomoya Kaneda and Hiroki Saito,
Dynamics of a vortex dipole across a magnetic phase boundary in a spinor Bose-Einstein condensate,
Physical Review A 90, 053632/1-7 (2014).

概要: スピン1のボース凝縮体において、強磁性相とポーラー相が空間的に分離している状態を考え、量子渦対の運動を数値的に調べた。量子渦対が相境界を通過すると、様々なスピン渦に変化することを見出した。

Akihiko Nakajima, Shuji Ishihara, Daisuke Imoto, and *Satoshi Sawai,
Rectified directional sensing in long-range cell migration,
Nature Communications 5, 5367/1-14 (2014).

概要: 細胞性粘菌の集合の合図は、細胞間で自己組織化する誘引物質の進行波が担っており、細胞は誘引物質の濃度がより高い方へ移動します。しかし、それでは、誘引物質の波が進行方向からやってきて去りゆく過程においては細胞が元居た場所へ戻っていってしまう「走化性パラドクス」が生じる。本研究では、微小流路内の高精度な層流制御技術と細胞内反応の定量的測定技術の開発、および理論モデルによる検証から、細胞性粘菌が誘引物質が経時的に増加する場合のみ、移動するための信号を細胞内で伝達することを明らかにした。誘因物質の濃度変化に適応的に応答する、局所的活性化と広域的な抑制機構に、刺激の変化への強い鋭敏性がある場合にこのような「整流作用」が生じることが示された。 【石原秀至(理論解析)】

Jaka Fajar Fatriansyah, Yuji Sasaki, and *Hiroshi Orihara,
Nonequilibrium steady-state response of a nematic liquid crystal under simple shear flow and electric fields,
Physical Review E 90, 032504/1-8 (2014).

概要: せん断流および直流電場下のネマチック液晶における交流電場に対する応力応答を測定した。1次および2次応答が高周波側において消えず、有限の一定値をとることを見出した。実験結果はエリクセン‐レスリー理論から導出した理論式と良く一致した。また、応力応答におけるパロディーの関係式(オンサーガーの相反関係)の役割を論じた。

*Yujiro Eto, Mark Sadgrove, Sho Hasegawa, Hiroki Saito, and Takuya Hirano,
Control of spin current in a Bose gas by periodic application of π pulses,
Physical Review A 90, 013626/1-6 (2014).

概要: 87ルビジウム原子気体のスピン2ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)におけるスピン流の観測及び、周期的なラジオ波 π パルスの印加によるスピン流の制御に成功した。スピン流はスピン偏極を破壊し、スピン交換衝突や非弾性衝突を誘起するが、周期的にラジオ波パルスを印加し、スピン流の流れる方向を制御することで、それらの効果を抑圧することができることを示した。本実験により、空間的な磁場の不均一性によりBEC中にスピン流が生成されたとしても、ラジオ波 π パルスを用いることにより、長寿命スピンコヒーレンスが実現可能であることが証明された。【衛藤雄二郎(連携研究者)、斎藤弘樹(研究分担者)、平野琢也(研究代表者)】

Tsuyoshi Kadokura, Jun Yoshida, and Hiroki Saito,
Hysteresis in quantized vortex shedding,
Physical Review A 90, 013612/1-5 (2014).

概要: 超流動体中を障害物ポテンシャルが運動するシミュレーションを行った。ある速度領域において、定常的な層流の状態と周期的に量子渦が生成される状態の間に双安定性が存在することを示した。

*Yoshiki Hidaka and Noriko Oikawa,
Chaos and Spatiotemporal Chaos in Convective Systems,
FORMA 29, 29-32 (2014).

概要: カオスの初期の研究の多くは,空間的に制限された対流系で行われてきた.一方,空間的に広がった系では時空カオスが生じる.カオスが明確な定義があるのに対し,時空カオスには統一的な定義がない.液晶電気対流の3つの時空カオスに対し,統一的な定義を提案する.

*Satoshi Nakata, Tomoaki Ueda, Tatsuya Miyaji, Yui Matsuda, Yukiteru Katsumoto, Hiroyuki Kitahata, Takafumi Shimoaka, and Takeshi Hasegawa,
Transient reciprocating motion of a self-propelled object controlled by a molecular layer of a N‑stearoyl‑p‑nitroaniline: dependence on the temperature of an aqueous phase,
Journal of Physical Chemistry C 118, 14888-14893 (2014).

概要: 分子同志が強く相互作用する界面活性剤であるN-Stearoyl-p-nitroanilineのLangmuir膜を作り、そのΠ-A曲線を測定すると、低温では単調減少するのに対し、高温のときには逆N字型を描く。このようなLangmuir膜が存在するとき、水面に樟脳粒を浮かべたところ、低温の場合に限られた領域で往復運動することが明らかになった。逆に高温の場合には、そのような閉じ込めはおこらなかった。また、低温の場合に、あらかじめ樟脳粒でLangmuir膜上に曲線を描くとその曲線にそって樟脳粒が往復運動することも明らかになった。そのような現象のメカニズムの考察も行った。

*Nobuhiko J. Suematsu, Tomohiro Sasaki, Satoshi Nakata, and Hiroyuki Kitahata,
Quantitative estimation of the parameters for self-motion driven by difference in surface tension,
Langmuir 30, 8101-8108 (2014).

概要: 界面活性剤を周囲の水面に放出することにより周囲の水面に界面張力勾配を形成し動く系が自己駆動粒子のモデル系としてよく用いられる。その中でも特に典型的な水・樟脳系について、樟脳分子の溶けだし速度や実効的拡散係数、昇華率などを測定と理論解析から導出した。また、実際にどの程度の力が発生しているのかを測定し、それらの理論から求められる値と比較した。その結果、測定結果は矛盾なく理解され、樟脳粒子の運動の駆動力は10 μN程度であることがわかった。

Masahiro Takahashi, Takeshi Mizushima, and Kazushige Machida,
FFLO Multi-Phase Transition in Two-Band Superconductor,
JPS Conference Proceedings 3, 015022 (2014).

概要: パウリ極限での2バンド超伝導体について、その磁場-温度相図を計算した。シングルバンドの超伝導体では低磁場下でBardeen-Cooper-Schrieffer状態、高磁場下でFulde-Ferrell-Larkn-Ovchinnikov(FFLO)状態が実現することが分かっている。本研究では、2バンドの系において、特に高磁場下でシングルバンドのときのそれと異なるFFLO状態が実現することを理論的に予測した。これは、マルチバンドでの超伝導体を理解する上で重要な手掛かりになると期待する。

*Itsuki Kunita, Shigeru Kuroda, Kaito Ooki, Toshiyuki Nakagaki,
Attempts to retreat from a dead-ended long capillary by backward swimming in Paramecium,
Frontiers in Microbiology 5, Article 270 (1-8) (2014).

概要: 繊毛虫ゾウリムシのキャピラリー空間(展開できない程細く、行き止まりになっている空間)からの脱出行動を観察した。行き止まり地点で通常の障害物回避行動としての短期後退運動(少し後退して方向転換する)を何度も繰り返した後、長期後退(短期後退の10倍ほど)という新しい行動様式を発現した。キャピラリーはそれ以上に長いので脱出はかなわなかったが、繰り返し長期後退運動を見せた。この長期後退運動が生まれるしくみとして、膜電位の運動方程式のレベルで考察した。ゾウリムシの遊泳は、繊毛打の調節によっているが、これが膜電位、特にカルシウムイオンの流れに帰着できることが知られている。これまでに提案されているホジキンハクスレー型の方程式に基づき、イオンチャネルの分子動態から予見される遅い運動モード変数を導入したところ、長期後退行動を再現できた。ゾウリムシの行動創発の機構を物理的に解明した事例として興味深いと思われる。

*Itsuki Kunita, Shigeru Kuroda, Kaito Ooki, Toshiyuki Nakagaki,
Attempts to retreat from a dead-ended long capillary by backward swimming in Paramecium,
Frontiers in Microbiology 5, 270 (2014).

概要: 転回できないような細いガラス管にゾウリムシを閉じ込めたところ、通常の障害物回避反応である短期後退遊泳とは異なる長期後退遊泳(5−10倍長い後退距離)が観察された。これは、ガラス管から脱出するのに有効な新しい行動様式である。この新規行動様式が生じる機構について、ゾウリムシの後退遊泳を制御するホジキンハクスレー型膜電位方程式に基づいて提案した。

*Nen Saito, Shuji Ishihara, and Kunihiko Kaneko,
Evolution of Genetic Redundancy : The Relevance of Complexity in Genotype-Phenotype Mapping,
New Journal of Physics 16, 063013/1-14 (2014).

概要: 生物の進化における揺らぎの役割を議論したもの。進化理論では、遺伝的な冗長性は集団レベルの適応度を下げるため、進化しにくいと考えられている。本論文では、遺伝型-表現型マッピングが複雑で揺らぎをもつ高自由度の進化モデルを導入し、ランダムネスを扱うためにレプリカ法を用いて解析を行った。自由度が高く複雑性が高い場合には遺伝的な冗長性が進化しうることを示した。

*Hiroki Saito,
Comment on “Ground-state fragmentation phase transition for attractive bosons in anisotropic traps”,
Physical Review A 89, 067601/1-2 (2014).

概要: CizekとKasevichによる論文Phys. Rev. A 88, 063641 (2013)に対するコメントである。彼らは葉巻型トラップ中の引力BECにおいてフラグメンテーションが起こることを主張しているが、実際は解析法に問題があり、改善された方法を用いるとフラグメンテーションは見られないことを示した。

*Yujiro Eto, Hiroki Saito, and Takuya Hirano,
Observation of dipole-induced spin texture in an 87Rb spin-2 Bose-Einstein condensate,
Physical Review Letters 112, 185301/1-5 (2014).

概要: ボース・アインシュタイン凝縮体の内部スピン自由度を巧みに制御することにより、ルビジウム原子気体中での微弱な磁気双極子-双極子相互作用の効果を抽出・観測することに成功した。 3 mG/cmの勾配を持つ90 mGの外部磁場中で、横方向に偏極したスピノール凝縮体を準備し、その時間発展を観測した。 百数十ミリ秒経過後に、縦磁化の自発的な空間変調が観測された。この結果は、磁気双極子相互作用の効果を含むグロス・ピタエフスキー方程式によってのみ再現され、双極子により誘起される実効磁場中でのスピン回転の観測に対応する。 【衛藤雄二郎(連携研究者)、斎藤弘樹(研究分担者)、平野琢也(研究代表者)】(Editors's suggestionに選定された。)

Satoshi Aya, Yuji Sasaki, Damian Pociecha, Fumito Araoka, Ewa Gorecka, Kenji Ema, Igor Musevic, Hiroshi Orihara, Ken Ishikawa, and *Hideo Takezoe,
Stepwise heat-capacity change at an orientation transition in liquid crystals,
Physical Review E 89, 022512 (2014).

概要: 単一のネマチック相において温度変化によって水平と垂直配向状態間で自発的かつ不連続に起こるアンカリング転移を報告する。この系においてガラス転移と類似のステップ状の熱流の変化が高精度示差熱測定によって観測された。比熱のジャンプが試料体積に依存しないことから水平と垂直配向状態は異なる自由エネルギーを持つこと、および斜入射X線回折測定によりセル表面における準スメクチック層の形成がアンカリング転移の引き金となることを明らかにした。

*Masahiro Takahashi, Takeshi Mizushima, and Kazushige Machida,
Multi-band effects on Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov states of Pauli-limited superconductors,
Physical Review B 89, 064505/1-16 (2014).

概要: パウリ極限の超伝導体において、そこで実現すると思われる Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO) 状態へのマルチバンドの効果について理論的に研究を行った。ここでは、2-バンドの系において、Bogoliubov-de Gennes 方程式を用いた平均場の理論を用いた。まず始めに、超伝導バンドと常伝導バンドを持つような系での相図がどうなるか探索した。常伝導バンドでも超伝導バンドからのクーパー対のトンネリングによって超伝導成分が誘起され、Lifshitz 点以下の磁場で Bardeen-Cooper-Schrieffer 状態から FFLO 状態への転移が起こることが分かった。次に、両バンドが超伝導バンドとして振る舞う場合についても調べた。FFLO 相は 2 つに分割されることが分かった。ある特定の条件では、分けられた片方の相がさらに分割されることが分かった。これは、複数の変調スケールが存在することに起因する。得られた相図は、単一バンドの場合と質的に違い、悪魔の階段構造を有する。

*Hiroki Saito,
Many-body dynamics of a Bose-Einstein condensate collapsing by quantum tunneling,
Physical Review A 89, 023610/1-6 (2014).

概要: 引力相互作用する原子のボース・アインシュタイン凝縮体のダイナミクスを直接的な量子多体計算によって調べた。準安定状態からの量子トンネル効果によって凝縮体が崩壊する様子を数値的に再現することに成功し、トンネル確率が相互作用係数や原子数などの関数として得られた。

Keita Iida, Hiroyuki Kitahata, and *Masaharu Nagayama,
Theoretical study on the translation and rotation of an elliptic camphor particle,
Physica D 272, 39-50 (2014).

概要: 円からの摂動展開で楕円形の樟脳粒が短軸方向に動くことが明らかになった。また、濃度場と表面張力の関係が非線形な場合に、静止状態から並進運動への分岐がsupercriticalあるいはsubcriticalに条件になるを明らかにした。また、楕円形の樟脳粒が静止状態から回転運動への分岐を起こすことも明らかにし、その分岐点周りで運動方程式を得ることができた。さらには、数値計算により、楕円形の樟脳粒が運動する際に短軸方向に動くことが明らかになった。その際、分岐点周りの構造が円からの摂動展開により得られていることも明らかにした。

Masahiro Takahashi, Takeshi Mizushima, and Kazushige Machida,
Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov States in Two-Band Superconductors,
Journal of the Physical Society of Japan 83, 023703/1-5 (2014).

概要: 超伝導に 2 つのバンド内の電子が寄与するパウリ極限の超伝導体について、Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO) 状態の磁場-温度相図について研究を行った。結果として、高磁場で Q_1-FFLO、低磁場で Q_2-FFLO という 2 つの相に FFLO 相が分かれることが分かった。これは、2 つの異なる振動スケールが競合することに起因する。Q_2-FFLO はさらに無限に多くの FFLO 相に分裂することが分かった。これは、分数比の振動スケールで記述され、磁場に対して物理量が悪魔の階段的になることを示している。FFLO 状態を安定化される臨界磁場は単一バンドの超伝導体よりも低くなり、FFLO 状態がより安定化することも分かった。一方で、三重臨界点の Lifshitz point の温度は相互作用等のパラメーターに依らず一定となる。

2013

Yoshinori Takikawa and *Hiroshi Orihara,
Persistence of Brownian motion in shear flow,
Physical Review E 88, 062111/1-5 (2013).

概要: せん断流下のブラウン運動の持続性について研究を行った。粒子が時間t秒後に元に戻らない確率は持続確率と呼ばれ、冪関数に従うことが知られている。本研究ではせん断流下において平均の流れを除いたゆらぎの部分にだけ関係した量の持続指数を実験および理論から求め、両者を比較し、良い一致を得た。

Masaru Suzuki, Hiroshi Sueto, Yusaku Hosokawa, Naoyuki Muramoto, Takayuki Narumi, Yoshiki Hidaka, and Shoichi Kai,
Duality of diffusion dynamics in particle motion in soft-mode turbulence,
Physical Review E 88, 42147 (2013).

概要: 液晶対流の時空カオス「ソフトモード乱流」に混入した微粒子の示す“非熱的Brown運動”の統計的性質を調べた.粒子の運動は,局所的な対流ロール中の速い運動とグローバルなパターンダイナミクスを反映した遅い運動に分けられることを示した.また,拡散係数の粗視化時間依存性によって,速い運動と遅い運動による拡散の質的な違いを明らかにした.さらに,速い運動に対するモデルを提案し,速度分布の非Gauss的なテールが実験結果と一致することを示した. 【日高芳樹(研究テーマ立案,実験補佐)】

Ryo Tanaka, Tomonori Nomoto, Taro Toyota, Hiroyuki Kitahata, and *Masanori Fujinami,
Delayed response of interfacial tension in propagating chemical waves of the Belousov-Zhabotinsky reaction without stirring,
The Journal of Physical Chemistry B 117, 13893–13898 (2013).

概要: 化学振動反応であるBelousov-Zhabotinsky反応溶液において、化学波が伝播するときの界面張力の変化をレーザー準弾性散乱により測定した。その結果、気液界面ではほぼ化学波の進行に伴う色の変化と一致して、界面張力が変化することがわかった。一方、油水界面における測定においては、化学波の進行よりも遅れて界面張力が変化することが明らかとなった。この現象について、界面活性をもつ鉄触媒の界面への吸着脱離の時定数を考えることにより議論した。 【豊田太郎(実験の提案、実験系の構築)、北畑裕之(実験結果に関する理論的解析)】

*Yujiro Eto, Hayato Ikeda, Hirosuke Suzuki, Sho Hasegawa, Yasushi Tomiyama, Sawako Sekine, Mark Sadgrove, and Takuya Hirano,
Spin-echo-based magnetometry with spinor Bose-Einstein condensates,
Physical Review A 88, 031602(R)/1-4 (2013).

概要: 本論文において、我々は、87ルビジウム原子気体のスピン2ボース・アインシュタイン凝縮体にスピンエコーの技術を応用することにより、微弱な交流磁場の検出を実現した。達成した磁場感度は、100μ㎡の空間分解能に対して12pT/√Hzであった。開発した交流磁力計を用いて、実験室内の電源ラインに同期した交流磁場ノイズを検出した。更に、交流磁場ノイズと逆位相の磁場を人為的に印加することにより、磁場ノイズを1nTオーダーまで大きく低減することに成功した。これらのボース凝縮体交流磁力計は、真空装置内に時間的に安定な磁場環境を作る上で非常に重要な技術となる。

Jaka Fajar Fatriansyah and *Hiroshi Orihara,
Dynamical properties of nematic liquid crystals subjected to shear flow and magnetic fields: Tumbling instability and non-equilibrium fluctuations,
Physival Review E 88, 012510/1-9 (2013).

概要: せん断流と磁場下にあるネマチック液晶のダイナミクスをエリクセン・レスリー理論を基に調べた。安定および不安定領域が磁場とせん断速度に依存して現れた。不安定状態ではタンブリングが見られた。磁場の関数として不安定領域を3次元プロットしたところ、相図は粘性係数に強く依存することがわかった。ランジュバン方程式よりディレクターゆらぎの相関関数と応答関数を求め、搖動散逸定理について考察を行った。