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A03-002好村グループ

論文等 | 原著論文

2017

Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Swimmer-microrheology,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 043801/1-4 (2017).

概要: ソフトマターのような粘弾性体中を遊泳するマイクロマシン(スイマー)の動作機構について調べ、スイマーの遊泳速度とソフトマターの粘性率や弾性率を結びつける関係式を理論的に導出した。この関係式に基づくと、ソフトマター中のスイマーの運動では「ホタテ貝の定理」が破れることや、スイマー自身の構造非対称性が重要であることが明らかになった。スイマーを用いて粘性や弾性を調べる新しい測定概念は「スイマー・マイクロレオロジー」と命名され、本研究によりその基本原理が与えられた。 【Ryuichi Okamoto:理論解析、水野大介:実験に関する議論】

Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Anomalous diffusion in viscoelastic media with active force dipoles,
Physical Review E 95, 032417/1-14 (2017).

概要: アクティブな力双極子を有する粘弾性体中のブラウン運動について検討した。粘弾性体は二流体モデルで記述し、タンパク質を模倣したアクティブな力双極子の相関は特徴的な緩和時間をもつとした。プローブ粒子の平均二乗変位を計算した結果、熱ゆらぎのみ存在する場合、平均二乗変位は時間の0乗から1乗の間で変化することを求めた。一方、アクティブな力双極子によって、平均二乗変位は時間の0乗から2乗の間の全ての異常拡散が起こることを導いた。我々の結果は、近年の細胞中の異常拡散の振る舞いを適切に説明しており、生きている細胞と死んだ細胞では異常拡散のメカニズムが異なることが明らかになった。 【Ryuichi Okamoto:理論解析、水野大介:実験に関する議論】

Swaminath Bharadwaj, *Palakurissi B. Sunil Kumar, Shigeyuki Komura, Abhijit P. Deshpande,
Spherically symmetric solvent is sufficient to explain lower critical solution temperature in polymer solutions,
Macromolecular Theory and Simulations 26, 1600073/1-11 (2017).

概要: 両親媒性ビーズと疎水性ビーズを交互に配置した高分子の分子動力学シミュレーションを行い、温度の変化と共にコイル・グロビュール転移を起こすことを示した。このような振る舞いは、KolomeiskyとWidomの疎水性相互作用のモデルを使っても一般的に説明できることがわかった。

Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, *Shigeyuki Komura, and Alexander S. Mikhailov,
Localization and diffusion of tracer particles in viscoelastic media with active force dipoles,
EPL 117, 38001/1-7 (2017).

概要: 二流体モデルを用いて、粘弾性体中のトレーサー粒子のダイナミクスについて検討した。ここでは、非熱的なランダムな力は力双極子の形で考慮して、弾性成分と流体成分の両方に働くとした。その結果、拡散係数の増加を定量的に評価することができた。我々の計算結果は近年の実験結果を説明する。 【Ryuichi Okamoto:理論解析、水野大介:実験に関する議論】

2016

T. V. Sachin Krishnan, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Relaxation dynamics of a compressible bilayer vesicle containing highly viscous fluid,
Physical Review E 94, 062414/1-14 (2016).

概要: 圧縮性のある脂質二重膜の緩和ダイナミクスの詳細な解析を行い、特にベシクル内外の粘性率の非対称性の効果を調べた。自由エネルギーの解析の結果、脂質密度と膜曲率の幾何学的な結合により、長波長と中間的波長で起こる二種類の不安定性が存在することがわかった。特にベシクルの内側の粘性率が外側と比べて大きくなると、曲げモードとスリップモードのクロスオーバーが短波長側に大きくシフトすることがわかった。また、二重膜が不安定領域に近づくと、緩和ダイナミクスは著しく遅くなることを見つけた。

*Hayato Shiba, Yasunori Yamada, Takeshi Kawasaki, and Kang Kim,
Unveiling Dimensionality Dependence of Glassy Dynamics: 2D Infinite Fluctuation Eclipses Inherent Structural Relaxation,
Physical Review Letters 117, 245701/1-6 (2016).

概要: 大規模分子動力学計算を用いて、2次元と3次元のガラス動力学が根本的に異なることを示した。2次元では結晶におけるMermin-Wagnerの定理と同じ原理により、巨大な長波長音波振動が発生し、対数的に発散する熱振動振幅によって特徴づけられる。その由来は弾性極限におけるデバイ近似の次元依存性に他ならず、最大約1000万粒子数に及ぶ分子動力学の低周波領域の状態密度の周波数依存性の直接計算によってもその根拠が示された。この対数的に発散する巨大振動は、伝統的な密度場をベースとした緩和関数や動的不均一性によるガラス動力学の特徴づけに根本的な問題をもたらす。振動の影響を受けない協調再配置の動力学を特徴付ける関数の導入により、2次元系においても、ガラス的緩和固有の動力学を抽出することができる。 【宮崎 州正(議論と助言)】

Koh M. Nakagawa and *Hiroshi Noguchi,
Nonuniqueness of local stress of three-body potentials in molecular simulations,
Physical Review E 94, 053304/1-11 (2016).

概要: 古典分子動力学計算において2体力による局所応力をIrving-Kirkwood-Noll法を用いて求めることができる。多体力については2体力に分解して計算されるが、その分解法はまだ十分に確立されていない。我々は新しくForce Center Decomposition、Hybrid Decomposition という分解方法を提唱し、3体力についても不定性があることを示した。いずれも運動量, 角運動量保存を満たす局所応力テンソルを与えるが、得られる応力分布は分解法に大きく依存することが明らかとなった。

Jean Wolff, *Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Budding transition of asymmetric two-component lipid domains,
Physical Review E 94, 032406/1-8 (2016).

概要: 二重膜間で非対称な組成を持つ二成分脂質ドメインのバディングについて考察した。モデルではドメインの曲率弾性エネルギー、ドメインの境界で働く線エネルギー、二重膜の相分離エネルギーの三つの寄与を考慮した。また、それぞれの単層膜の自発曲率は、二種類の脂質分子の濃度差に対して線形的に依存するとした。相図を計算した結果、様々な共存状態が存在することがわかった。

*Hiroshi Noguchi,
Construction of nuclear envelope shape by a high-genus vesicle with pore-size constraint,
Biophysical Journal 111, 824-831 (2016).

概要: 核膜は小胞体と繋がっているが、小胞体を除くと、高いトポロジー種数を持つストマトサイトと見なせる。この形状は核膜孔複合体による膜孔サイズの拘束だけでは形成されず、核質の浸透圧による核質体積の増加、核膜槽の体積の減少、核膜孔間の反発力などによって安定化させることができることを明らかにした。

Kento Yasuda, *Shigeyuki Komura, and Ryuichi Okamoto,
Dynamics of a membrane interacting with an active wall,
Physical Review E 93, 052407/1-12 (2016).

概要: ランダムな速度を発生するアクティブな壁と相互作用する生体膜のブラウン運動の解析を行った。壁がランダムな速度を発生する場合、平均二乗変位が時間に比例する時間領域が存在することがわかった。さらにアクティブな壁が特徴的な時間スケールを有する場合、平均二乗変位が時間に比例する領域がさらに拡大することもわかった。

*Ryuichi Okamoto, Naofumi Shimokawa, and Shigeyuki Komura,
Nano-domain formation in charged membranes: Beyond the Debye-Huckel approximation,
EPL 114, 28002/1-6 (2016).

概要: 荷電脂質と中性脂質の混合膜におけるミクロ相分離の可能性について議論した。我々はデバイ・ヒュッケル近似を使わずに、静的な構造関数を求めた。解析の結果、ミクロ相分離が起こる場合の特徴的な波長は数十ナノメートルに留まることがわかり、これまでに光学顕微鏡でミクロ相分離が観察できない理由を指摘した。

*Hiroshi Noguchi,
Shape deformation of lipid membranes by banana-shaped protein rods: Comparison with isotropic inclusions and membrane rupture,
Physical Review E 93, 052404/1-10 (2016).

概要: バナナ状タンパク質の吸着による生体膜の変形を数値計算を用いて研究した。タンパク質の弾性を上げたり、膜端の線張力を下げたりすると、タンパク質による膜変形が膜の破裂を起こし、高いトポロジー種数を持つトロイド状のベシクルを形成することなどを明らかにした。

*Ryuichi Okamoto, Yuichi Kanemori, Shigeyuki Komura, and Jean-Baptiste Fournier,
Relaxation dynamics of two-component fluid bilayer membranes,
The European Physical Journal E 39, 52/1-21 (2016).

概要: 二種類の脂質からなる二重膜を「曲げ弾性をもった二成分流体」としてモデル化し、その動的挙動を調べた。二成分に拡張したことによって、以前に得られていた緩和モードに加えて、新たに相互拡散に起因する二つの新たな緩和モードが現れる。特に、相分離臨界点近くにおいてはこれらのモードが他のモードに比べてはるかに遅い緩和モードとなることがわかった。

*Naofumi Shimokawa, Hiroki Himeno, Tsutomu Hamada, Masahiro Takagi, Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Phase diagrams and ordering in charged membranes: Binary mixtures of charged and neutral lipids,
The Journal of Physical Chemistry B 120, 6358-6367 (2016).

概要: 荷電脂質と中性脂質の二成分混合膜の巨視的な相分離について議論した。具体的には飽和脂質と不飽和脂質の組み合わせを考え、電荷をもつ頭部が飽和脂質に存在する場合と、不飽和脂質に存在する場合を明確に区別するモデルを構築した。自由エネルギーを用いて相図を計算した結果、頭部電荷と尾部の組み合わせが異なると、荷電脂質としても大きく相挙動が異なることがわかった。 【濱田勉(実験を担当)】

*John J. Molina, Kotaro Otomura, Hayato Shiba, Hideki Kobayashi, Masaki Sano, and Ryoichi Yamamoto,
Rheological evaluation of colloidal dispersions using the smoothed profile method: formulation and applications,
Journal of Fluid Mechanics 792, 590-619 (2016).

概要: コロイド分散系のレオロジー特性を、粒子間の流体力学相互作用を直接ナビエストークス方程式の数値シミュレーションで評価するための方法論の大幅な拡 張を行った。具体的には、均一なせん断流を実現する Lees-Edwards 周期境界条件の下で、 粒子分散系のレオロジー特性を評価するための定式化を行った。この拡張により、系の粘性を調べる際に一般的な定常(DC)せん断流だけではなく、粘弾性を調べる際に必要となる振動せん断流をも実現することが可能となったのみならず、系の全応力や任意の場所に おける局所応力など、レオロジー評価に必要な全ての物理量を直接数値計算で求めることが 可能となった。

*Hiroshi Noguchi,
Membrane tubule formation by banana-shaped proteins with or without transient network structure,
Scientific Reports 6, 20935 (2016).

概要: バナナ状タンパク質による膜チューブ形成のダイナミクスをメッシュレス膜模型によるシミューレションを用いて研究した。タンパク質に沿った自発曲率に加えて、側方に弱い自発曲率を加えることでチューブ形成のダイナミクスが大きく変わることが分かった。平衡状態の性質はそれほど変化しないが、集合途中にみられるネットワーク構造の安定性が変わることによって、チューブ形成速度が大きく変わる。側方に負の自発曲率を持つ場合、膜全体に広がったネットワークを形成し、ネットワークからチューブが伸びる。それに対して、側方に正の自発曲率を持つ場合は、ネットワークは形成せずに、多くの短いチューブが形成される。このように、側方方向の相互作用も無視できないことが明らかとなった。

Hayato Shiba, Hiroshi Noguchi, and *Jean-Baptiste Fournier,
Monte Carlo study of the frame, fluctuation and internal tensions of fluctuating membranes with fixed area,
Soft Matter 12, 2373-2380 (2016).

概要: 弾性脂質膜のゆらぎを記述する自由エネルギー汎関数として、1973年に導入されたヘルフリッヒ自由エネルギーがよく知られている。ここで重要な弾性係数である表面張力には、複数の定義が存在する。揺らぐ膜面の微分幾何的な曲面に沿った計量によって計られた面積変化によって生ずる張力を「内部張力」と呼ぶ。一方、実際に我々が実験を行うときに制御可能な面積は、実面積ではなく、平らな射影されたフレームの面積 (別名「射影面積」)である。射影面積に対して共役な表面張力を別に定義することができ るが、これはとりもなおさず力学的に測定される「力学張力」である。これらの間には明確に差があるはずであり、脂質膜面のゆらぎを実際に支配している張力(「ゆらぎ応力」)が どちらであるのかをここでは問題として取り上げた。本研究では、理想膜面を記 述できる格子膜模型を構築し、内部張力、力学張力の双方を正確に固定可能なモンテカルロ シミュレーションの枠組みを構築した。曲率エネルギー汎関数に用いる膜面曲率の定義として、(A) モンジュ近似に限定されたガウス近似のゆらぎを自明に実現する線形曲率公式 (B) 微分幾何的に膜面の曲率を記述する非線形曲率、の双方を用い比較したところ、(A) においてはゆらぎ応力は理論の予言通り内部応力と一致し、(B) においてはゆらぎ応力は力学応力に精度の範囲で一致した。すなわち、膜面ゆらぎは測定可能な力学張力によって支配され、測定不可能 である内部張力は役割を果たさないことが示唆された。 【芝隼人(研究全体の提案と数値計算)、野口博司(モデルの発案と数値計算)】

2015

*Hiroshi Noguchi,
Shape transitions of high-genus fluid vesicles,
EPL 112, 58004/1-6 (2015).

概要: 動的三角格子模型シミュレーションを用いて、大きなトポロジー種数 (genus) の持つベシクルの形状を研究した。genus-3以上においては、穴の配置の変化によって形態変化が連続的な変化から不連続な転移に変わることが明らかとなった。体積の比較的大きい場合は、ストマトサイトから穴が一列に並んだ円盤状へ変化は連続的だが、体積の小さい場合は、多面体状ストマトサイトからの不連続な転移となる。このように穴の配置が形態の安定性に大きな影響を持つ。

Takuma Hoshino, Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Correlated lateral phase separations in stacks of lipid membranes,
Journal of Chemical Physics 143, 243124/1-9 (2015).

概要: 近年、多成分脂質二重膜が三次元的に積み重なった系における相分離の実験が行われ、ドメインが円柱状に積層することが報告された。我々は、積層した二次元イジングモデルを用いて、異なる膜の相分離の連動性を調べた。各脂質膜で脂質分子の組成は保存するため、川崎ダイナミクスを用いたモンテ・カルロシミューレーションを行い、相分離ドメインの構造について検討した。その結果、膜間に有限の相互作用が存在すると、熱平衡状態においてドメインは必ず連結することが明らかになった。また、我々はドメインの成長ダイナミクスにも着目し、膜間に働く相互作用による成長指数の変化を検討した。その結果、温度クエンチの深さが膜間相互作用の増加とともに深くなることで、膜の相分離が加速されることがわかった。またクエンチの深さを一定にすると、系は二次元から三次元へのクロスオーバー現象を示し、成長指数はむしろ減少することを示した。

*Shigeyuki Komura, Kento Yasuda, and Ryuichi Okamoto,
Dynamics of two-component membranes surrounded by viscoelastic media,
Journal of Physics: Condensed Matter 27, 432001/1-7 (2015).

概要: 我々はアクティブなタンパク質を含む生体膜を考えて、特に生体膜の周囲の媒質が粘弾性体である場合に、膜断片のゆらぎ(平均二乗変位)の解析を行った。我々のモデルにおいて、タンパク質は膜内を側方拡散して、さらに局所的に膜の曲率を誘起すると仮定した。その結果、拡張されたEinsteinの関係式として、膜断片の平均二乗変位を導出した。周囲の粘弾性体の弾性率が周波数に対して冪的に依存する場合、膜断片はその冪指数を反映した異常拡散を示すことがわかった。この異常拡散は熱ゆらぎの効果として生じるが、我々はさらにタンパク質が媒質に対してアクティブな非平衡力を及ぼす場合についても同様の計算を行った。その結果、拡張されたEinsteinの関係式は修正を受けて、タンパク質の力双極子エネルギーに依存する実効的温度を用いて表されることがわかった。この関係式を用いると、生体膜のゆらぎから細胞質のレオロジー的性質を知ることができるため、我々はこれを「生体膜マイクロレオロジー」と呼んでいる。

*Hiroshi Noguchi,
Formation of polyhedral vesicles and polygonal membrane tubes induced by banana-shaped proteins,
Journal of Chemical Physics 143, 243109/1-7 (2015).

概要: バナナ形状のBARドメインの持つタンパク質による膜変形をメッシュレス膜模型によるシミュレーションを用いて研究した。タンパク質密度を上げていると膜チューブは多角形状チューブ、ベシクルは多面体状に変形することが明らかとなった。多角形形成は単純化した幾何学模型において曲げ弾性エネルギーの変化を考えることで説明できる。

Koh M. Nakagawa and *Hiroshi Noguchi,
Morphological changes of amphiphilic molecular assemblies induced by chemical reactions,
Soft Matter 11, 1403-1411 (2015).

概要: 化学反応下での界面活性剤集合体の形態変化を粗視化分子シミュレーションを用いて研究した。油滴から棒状ベシクルやトロイド状ベシクルが形成される過程が明らかとなった。また、疎水性粒子の包含によってバイセルからのベシクル形成が促進されることがあること分かった。 【菅原正、豊田太郎(化学反応下での界面活性剤集合体の形態変化の実験について議論)】

Jean Wolff, *Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Budding of domains in mixed bilayer membranes,
Physical Review E 91, 012708/1-10 (2015).

概要: 我々は二成分の脂質二重膜を考え、膜内のドメインによって誘起されるバディングのモデルを提唱した。重要な仮定として、それぞれの単層膜の自発曲率は、二種類の脂質分子の濃度差に対して線形的に依存するとした。ドメインの形状としては、平坦、不完全バディング、完全バディングの三状態を想定した。我々のモデルにより、二枚の単層膜間の濃度の非対称性によってバディングが誘起されることがわかった。

*Hiroshi Noguchi, Ai Sakashita, and Masayuki Imai,
Shape transformations of toroidal vesicles,
Soft Matter 11, 193-201 (2015).

概要: トーラス状の脂質ベシクルの形状を動的三角格子模型によるシミュレーションと共焦点顕微鏡による直接観察を用いて研究した。円盤にハンドルのついた形状やラケット状などのこれまで知られていなかった形状を明らかにした。 【今井正幸(実験)】

2014

*Hiroshi Noguchi,
Two- or three-step assembly of banana-shaped proteins coupled with shape transformation of lipid membranes,
EPL 108, 48001/1-6 (2014).

概要: バナナ状タンパク質の脂質膜上での自己集合についてメッシュレス膜模型を用いたシミュレーションによって研究した。膜の曲げ変形を介した自己集合は、異方的な集合過程に分かれ、段階的に起こることが明らかとなった。

Hiroki Himeno, Naofumi Shimokawa, Shigeyuki Komura, David Andelman, *Tsutomu Hamada, and Masahiro Takagi,
Charge-induced phase separation in lipid membranes,
Soft Matter 10, 7959-7967 (2014).

概要: 荷電脂質を含む多成分脂質ベシクルにおける相分離挙動を実験的に観察し、理論的な説明を試みた。脂質の頭部と炭化水素鎖の組み合わせにより、相分離温度が上昇する場合と下降する場合の両方があることがわかった。また、脂質四成分系では三相共存が実験的に観察された。理論的にはポアッソン・ボルツマン方程式と相分離の理論を統一的に扱った。 【濱田勉(実験的サポート)】

*Shuji Fujii, Shigeyuki Komura, and Chun-Yi David Lu,
Structural rheology of the smectic phase,
Materials 7, 5146-5168 (2014).

概要: サーモトロピック液晶のスメクチック・レオロジーに関して、特に構造レオロジーの観点から包括的なレビューを行った。我々はレオロジー測定と顕微鏡観察を組み合わせて、温度とずり応力を変数とする動的相図をを作成した。それによると、動的なスメクチック相は二種類あり、一方の相ではフォーカル・コニック・ドメインが形成されていることがわかった。このようなスメクチック相の弾性の起源は、フォーカル・コニック・ドメインの実効的な表面張力が担っていることを実験的に見出した。

*Shigeyuki Komura and David Andelman,
Physical aspects of heterogeneities in multi-component lipid membranes,
Advances in Colloid and Interface Science 208, 34-46 (2014).

概要: 生体膜のラフトモデルが提唱されて以来、従来の流動モザイクモデル的な描像が変わりつつある。ラフトモデルでは、多成分の脂質二重膜における動的な不均一構造が重要な役割を果たしている。本レビューでは生体膜やベシクルにおける側方相分離現象を主題として、最近10年程度の研究動向を概観する。ここでは主に物理化学的な立場の実験研究を中心にレビューし、さらにソフトマター物理学の観点から理論的な考察を行う。前半では多成分の脂質二重膜の相挙動や形態について説明をする。後半では生体膜と周囲の溶媒の流体力学効果を定式化して、ドメインサイズの成長則や濃度ゆらぎの減衰率について議論する。最後に、ラフトを二次元のマイクロエマルションと見なす最近の理論について説明する。 【今井正幸(実験的サポート)】

*Shuji Fujii, Shigeyuki Komura, and C.-Y. David Lu,
Structural rheology of focal conic domains: a stress-quench experiment,
Soft Matter 10, 5289-5295 (2014).

概要: ずり流動下におけるサーモトロピック・スメクチック相のフォーカル・コニック・ドメインにつていの実験的な研究を行った。ここでは、ずり応力を急激に変化させることによって、SmAI相からSmAII相への非平衡相転移を誘起して、フォーカル・コニック・ドメインの成長のダイナミクスを追跡した。実験的には三つの緩和モードが観測され、それぞれの物理的起源の考察を行った。

Ai Sakashita, Masayuki Imai, and *Hiroshi Noguchi,
Morphological variation of lipid vesicle confined in spherical vesicle,
Physical Review E 89, 040701(R)/1-4 (2014).

概要: 狭い空間の拘束による脂質ベシクルの形態変化を実験、理論両面から研究した。この結図に示すように、2重ストマトサイトやダブレットと名付けた形状など、拘束のない条件では見られない多くの形状が得られた。ミトコンドリアの内膜で見られるクリステと呼ばれるヒダ状の構造も得られた。ミトコンドリアは2つの膜からなるが、内側の膜が外膜より大きな面積を持つ。このように空間拘束は細胞小器官の形状を決定する重要なファクターの一つだと考えられる。 【今井正幸(実験)】

*Kazuhiko Seki, Saurabh Mogre, and Shigeyuki Komura,
Diffusion coefficients in leaflets of bilayer membranes,
Physical Review E 89, 022713/1-12 (2014).

概要: 脂質二重膜を二枚の結合した二次元流体として扱い、周囲の非対称な溶媒も取り入れた流体モデルを考察した。特に二枚のリーフレット間には、速度差に比例する摩擦力が働くとした。具体的な計算として、液体ドメインの拡散係数の摩擦係数依存性や、サイズ依存性などを詳細に調べた。 【今井正幸(実験的サポート)】

2013

*Hayato Shiba and Takeshi Kawasaki,
Spatiotemporal heterogeneity of local free volumes in highly supercooled liquid,
The Journal of Chemical Physics 139, 184502/1-8 (2013).

概要: 2次元2成分粒子系の過冷却液体のシミュレーションを行い、局所密度の時空ゆらぎと動的不均一性の関係を調べた。不均一に存在する、局所密度の低い空孔を追跡するために、構造緩和に匹敵するスケールの時間における、各粒子毎の「最小局所密度」を導入した。局所密度の低い領域と動的不均一の動く領域同士が対応することが見出されたが、相関長の対応は見られず、2成分斥力系においては密度の役割は第一義的ではない。また基準振動解析と自由体積との関係についての調べる試みも行った。本研究からは、密度が僅かに低くなった領域としてみられる脆弱な領域との間の相互作用が大規模振動を介して長波長の動的ゆらぎとなっている可能性が示唆される。  【宮崎 州正(議論と提案)】

*Ryuichi Okamoto, Youhei Fujitani, and Shigeyuki Komura,
Drag coefficient of a rigid spherical particle in a near-critical binary fluid mixture,
Journal of the Physical Society of Japan 82, 084003/1-10 (2013).

概要: 我々は流体の一方の成分との親和性を考慮した二成分流体中の流体力学を定式化して、ストークスの抵抗法則がどのように変更されるかを調べた。その結果、抵抗係数の補正は相関長の6乗に比例することが示された。(Papers of Editors' Choiceに選定された。)