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A03-004吉川グループ

論文等 | 原著論文

2017

Tatsuaki Tsuruyama,
Kinetic Stability Analysis of Protein Assembly on the Center Manifold around the Critical Point.,
BMC Systems Biology, in press (2017).

概要: タンパク質の重合モデルに関する非線形方程式をつくり、重合に必要なATPの臨界濃度付近でゆらぎの振動が起こるのを臨界濃度付近の中心多様体上で摂動展開して、分岐の様子を数値シュミレーションした。 【鶴山竜昭:モデルの考案とシュミレーション解析、吉川研一:非線形解析に関する助言】

Kazusa Beppu, Ziane Izri, Jun Gohya, Kanta Eto, Masatoshi Ichikawa, *Yusuke T. Maeda,
Geometry-driven collective ordering of bacterial vortices,
Soft Matter 13, 5038-5043 (2017).

概要: 遊泳バクテリアの集団は彼らが泳ぐことによって溶液の中に乱流的な渦を形成しますが、彼らをこの渦程度の大きさの微小な部屋に閉じ込めると回転方向が安定な定常的な渦が発生する事が報告されています。この部屋を連結させると、連結の距離に応じて渦同士の安定な回転方向が強磁性的になったり反強磁性的になる事を明らかにしました。バクテリアたちの渦形成の背後にある集団運動の性質が、幾何学形状を通じて渦の回転方向という特徴的でマクロな性質にあらわれるという興味深い結果です。超電導など凝縮系の物理で見られる渦同士の相互作用と似た点もあるため、背後にあるメカニズムの対称性なども気になる所です。

Hiroaki Ito, Masahiro Makuta, Yukinori Nishigami, and *Masatoshi Ichikawa,
Active materials integrated with actomyosin,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 101001/1-6 (2017).

概要: 骨格筋から抽出したアクチンとミオシンを封入したマイクロ液滴の界面の変形運動を、内部に分散させたビーズの運動と相関付けて観察しました。界面が激しく揺動するとき、中のビーズも激しく動く事から、界面に形成されているコルテックス(殻)が運動するというよりは、内部のアクトミオシン束の協同的な動きによって界面が激しく揺動している事が確認されました。今後はビーズの動きを解析し、内部構造の蛍光画像などと比較する事で変形運動の全容や制御方法が分かってくると見込んでいます。

Masami Noda, Yue Ma, Yuko Yoshikawa, Tadayuki Imanaka, Toshiaki Mori, Masakazu Furuta, Tatsuaki Tsuruyama and Kenichi Yoshikawa,
A single-molecule assessment of the protective effect of DMSO against DNA double-strand breaks induced by photo-and g-ray-irradiation, and freezing,
Scientific Reports 7, 8557/ 1-8 (2017).

概要: DMSO(Dimethyl Sulfoxide)は、有機物を良く溶かし、水とも混和性の良い溶媒であり、細胞生物学や生化学分野で、水に不溶な物質の溶剤として頻繁に用いられている。本論文では、細胞にとっても最も重篤な障害であるDNA二本鎖切断に対してのDMSOの保護作用を定量的に評価ている。光やγ線による切断や、凍結による切断を、DNAの一分子計測の手法を活用して、定量的に評価。いずれの損傷源であっても、2%の濃度でDMSOの保護作用が最大になるといった、貴重な知見を得ることに成功。 【吉川研一:研究全体の統括】

Marcel Hörning, François Blanchard, Akihiro Isomura, andKenichi Yoshikawa,
Dynamics of spatiotemporal line defects and chaos control in complex excitable systems,
Scientific Reports 7, 7757/1-9 (2017).

概要: 心筋細動などの、通常よりも大きな振動数での興奮現象には、局所的なラセン波の発生などが起こることが知られている。本研究では、このような異常な興奮現象に密接に関連していると思われる、時空間の発振パターに現れる線状欠陥(line defect)について論じたものである。培養した心筋シートに生じるline defectの時空間特性を解析し、興奮波の融合や衝突を通して、defectがどのような動的な変化を示すのかを定量的に調べ、理論的なモデルを提唱した。【吉川研一:研究の基本的なアイデアの提案、理論解析】

Aoi Yoshida, Shoto Tsuji, Hiroaki Taniguchi, Takahiro Kenmotsu, Koichiro Sadakane, *Kenichi Yoshikawa,
Manipulating Living Cells to Construct a 3D Single-Cell Assembly without an Artificial Scaffold,
Polymers 9, 319/2-10 (2017).

概要: 現在再生医療や組織工学の分野において、機能的な細胞組織体を人工的に創成できるような手法の開発が重要な課題となっている。これまで、細胞と細胞を接着させて三次元の組織体(organoid)の構築には、合成ゲルなどの人工的な足場が使われてきましたが、実際の再生医療に用いることは難しいとされてきた。本研究グループでは、光ピンセット技術と高分子混雑効果を活用することで、デキストラン(天然の水溶性高分子)溶液中で安定した三次元の細胞組織体を構築することのできる新手法を考案。その実験結果を報告するとともに、高分子のdepletion effectがどのように細胞間相互作用を変化させるのかといった点について理論的な考察を行った。 【吉川研一:研究全体の統括】

Daigo Yamamoto, Ryota Yamamoto, Takahiro Kozaki, Akihisa Shioi, Syuji Fujii and *Kenichi Yoshikawa,
Periodic Motions of Solid particles with Various Morphology under a DC Electrostatic Field,
Chemistry Letters 46, 1470-1472 (2017).

概要: 界面活性剤を溶存させた輸送中に、針電極対による定常的直流電位印加条件下で生じる、プラスチック(polystyrene)のミクロ粒子が示す運動パターンを報告した論文。プラスチック粒子の集合体の形状に依存して、自転や公転運動などが生じることを見出している。 【吉川研一:研究構想の提案、実験結果の解析】

Keisuke Mae, Hidetoshi Toyama, Erika Okita Nawa, Daigo Yamamoto, Akihisa Shioi, Yongjun Chen, *Kenichi Yoshikawa, Fumiyuki Toshimitsu, Naotoshi Nakashima and Kazunari Matsuda,
Self-Organized Micro-Spiral of Single-Walled Carbon Nanotubes,
Scientific Reports 7, 5267/1-12 (2017).

概要: カーボンナノチューブ(SWNT)を基板上、マイクロメータスケールのラセンや同心円の形状に揃えることが可能となったことを報告した論文。溶媒に分散させ、ガラスのミクロビーズを静置すると、いわゆるcoffee ring効果により、このような特異的な構造が自発的に生成する。非線形反応拡散方程式を援用して、自律的なミクロ構造が生成するメカニズムについても議論を行った。 【吉川研一:実験計画の発案と、秩序構造生成のメカニズムの議論】

Yuta Shimizu, Yuko Yoshikawa, Takahiro Kenmotsu, Seiji Komeda and *Kenichi Yoshikawa,
Conformational transition of DNA by dinuclear Pt(II) complexes causes cooperative inhibition of gene expression,
Chemical Physics Letters 678, 123-129 (2017).

概要: 現在、がんの化学療法で最も良く用いられている薬物の一つのCisplatinに代わり、より治療効果が高くなると期待されている白金複核錯体について、それがDNAの高次構造を緩く凝縮させる効果があることを解明した論文。論文では、この高次構造転移が、薬物がある閾値濃度以上で活性が高くなる効果、すなわち、協同効果を引き起こしていることを明らかにしている。 【研究全体の統括】

Kanta Tsumoto and *Kenichi Yoshikawa,
The Aqueous Two Phase System (ATPS) Deserves Plausible Real-World Modeling for the Structure and Function of Living Cells,
MRS Advances 2, 2407-2413 (2017).

概要: 構造の異なる水溶性の高分子の水溶液中では、水/水の相分離が生じることがしられている(水性二相系、ATPS)。この相分離点近傍では、細胞サイズの液滴が安定化し、共存する分子種の局在化を引き起こすことを私達は明らかにしてきている。本論文では、PEG/dextran系を中心にして、DNAやたんぱく質などがどのような局在化を起こすのかを、実際の実験結果をもとに報告。さらに、高分子のdepletion効果を取り入れて、その特徴的な分配現象についても理論的な考察を行っている。 【吉川研一:研究全体の統括】

*Tomo Kurimura, Yoshiko Takenaka, Satoru Kidoaki, and *Masatoshi Ichikawa,
Fabrication of gold microwires by drying goldnanorods suspensions,
Advanced Materials Interfaces 1601125, 1-5 (2017).

概要: 机にこぼしたコーヒー液滴を放置しておくと輪ジミが出来ます。この輪ジミが出来る原理を応用する事で、金ナノロッドの分散溶液から金ナノロッドが集合した細線を自己組織的に作り出す事に成功しました。コロイド粒子の分散溶液が乾燥する時には、一般的に輪ジミが生成されます。この様な不均一な乾燥パターンは、インクジェット印刷や塗布工程などの工業プロセスでは大きな問題となるため、その解決方法が盛んに研究されています。本研究はその乾燥プロセスを制御する事で、一般的な輪ジミから垂直方向に延びる金ナノロッドの集合細線を作る事に成功しました。更に、細線の始点を制御する事や地点間を結ぶ方法を示したほか、実際に電流が流れる事も確認しました。

Rinko Kubota, Yusuke Yamashita, Takahiro Kenmotsu, Yuko Yoshikawa, Kenji Yoshida, Yoshiaki Watanabe, Tadayuki Imanaka and *Kenichi Yoshikawa,
Double-Strand Breaks in Genome-Sized DNA Caused by Ultrasound,
ChemPhysChem 18, 959-964 (2017).

概要: 細胞にとって最も重篤な作用を及ぼすDNA二本鎖切断が超音波(30kHz)でどのように引き起こされるのかを,パルス波の超音波照射条件下で定量的に計測した論文.パルスの幅と間隔を適切にとると,DNA二本鎖損傷を最小化することが可能であることを明らかにした 【吉川研一:研究全体の統括】

Seiji Komeda, Hiroki Yoneyama, Masako Uemura, Akira Muramatsu, Wakao Fukuda, Tadayuki Imanaka, Toshio Kanbe, Yuko Yoshikawa and *Kenichi Yoshikawa,
Specific Conformational Change in Giant DNA Caused by Anticancer Tetrazolato-Bridged Dinuclear Platinum(II) Complexes: Middle-Length Alkyl Substituents Exhibit Minimum Effect,
Inorganic Chemistry 56, 802–811 (2017).

概要: 次世代の抗がん剤の開発に向けて、その有力な候補として挙げられている物質群の白金複核錯体について、薬物のDNAの高次構造変化に対する作用が、高い抗がん活性の元となっていることを示した研究論文。DNA一分子計測が論文の柱となっています。 【吉川研一:DNA一分子観察の実験とその解析】

2016

Masa Tsuchiya, Alessandro Giuliani, Midori Hashimoto, Jekaterina Erenpreisa and *Kenichi Yoshikawa,
Self-Organizing Global Gene Expression Regulated through Criticality: Mechanism of the Cell-Fate Change,
Plos One, 1-47 (2016).

概要: 発生初期の段階の細胞の遺伝子発現の網羅的解析に基づいて、遺伝子群の動向についての新しいモデルを提唱した論文。細胞集団そして単一細胞レベル、どちらの場合も、自己組織化臨界現象(Self-organized Criticality)を通して、2万程度の遺伝子が協同的にその発現レベルを変化させていることを示している。ゲノムDNAの高次構造転移が臨界現象と直接関連している可能性を議論 【吉川研一(実験データに基づくモデルの理論面での議論)】

Akira Muramatsu, Yuta Shimizu, Yuko Yoshikawa, Wakao Fukuda, Naoki Umezawa, Yuhei Horai, Tsunehiko Higuchi, Shinsuke Fujiwara, Tadayuki Imanaka and *Kenichi Yoshikawa,
Naturally occurring branched-chain polyamines induce a crosslinked meshwork structure in a giant DNA,
The Journal of Chemical Physics 145, 235103/1-7 (2016).

概要: 100℃近い熱水環境下で生育する好熱菌の体内で産生されている分岐型ポリアミンの、DNAの高次構造に対する作用を実験的に調べた。その結果、分岐型ポリアミンはDNA鎖の間の架橋構造を形成する傾向があることが、原子間力顕微鏡などによる計測で明らかとなった。それに対して、通常の細菌や動物細胞などに多量に存在する、直鎖型ポリアミン(spermidine, spermineなど)では、折り畳み転移を引き起こすよりも低い濃度領域では、DNA鎖間を平行配列させる。分岐型ポリアミンについての生物的な観点からの議論も行っている。

*Tatsuaki Tsuruyama, Takuya Hiratsuka, Wulamujiang Aini, Takuro Nakamura,
STAT5A modulates chemokine receptor CCR6 expression and enhances pre-B cell growth in a CCL20-dependent manner. J cellular biochemistry.,
J Cell Biochem 117, 2630-2642 (2016).

概要: シグナル伝達分子STAT5Aは、自然免疫においてサイトカインシグナル伝達(Socs)遺伝子のサプレッサーを介してサイトカインに対するB細胞応答に寄与することが知られている。 しかしながら、ケモカインに対するB細胞応答におけるその直接の役割はほとんど理解されていなかった。 この研究では、自然免疫応答におけるSTAT5Aの役割を調べた。 STAT5AはC-Cモチーフ受容体6(Ccr6)の転写をアップレギュレートして、そのリガンドであるCCL20に対する応答を誘導することを見出した。 STAT5Aの転写活性は、インターフェロン活性化部位への結合を介して進行した。さらにリンパ球の未熟なタイプであるプレ-B細胞のゲノム中のCCR6プロモーター中のGASエレメントに結合することでSTAT5AおよびCCR6は、プレB細胞のCCL20依存性コロニー増殖を増加させた。 【平塚拓也:実験データの取得、ウラムジャンアイニ:論文執筆協力中村卓郎:実験手法の指導、実験データの分析、吉川研一:細胞内シグナル伝達の分析に関する助言】

*Shunsuke F. Shimobayashi, Mafumi Hishida, Tomo Kurimura and Masatoshi Ichikawa,
Nanoscale hydration dynamics of DNA-lipid blend dry films: DNA-size dependency,
Physical Chemistry Chemical Physics 2016, 18, 31664-31669 (2016).

概要: DNA分子をその間に挟んだ脂質二分子膜のラメラを水和させた際の膨潤カイネティクスを高輝度小角X線散乱実験によって明らかにしました。これまでの研究で開発した、DNAなどの生体高分子を封入したリポソームを効率的に作成する実験手法における、リポソーム生成の初期過程にあたります。膨潤の初期過程ではDNAや膜が激しく、そして密になって運動しており、光学顕微鏡ではその動態の判別が付きませんでした。高エネルギー加速器研究所の高輝度X線を用いる事により、ミリ秒からの初期過程を明らかにすることが出来ました。DNA分子が持続長程度で短いときは単純な緩和を示しましたが、DNA分子が非常に長い場合は振動緩和の様な挙動を見せました。からまり合うDNAが示す粘弾性と水和のダイナミクスが相まってこの様な挙動になったと思われます。この研究により、DNAなどの生体分子を高効率にリポソームに封入する際の設計に物理的な指針を与える事が出来ました。 【菱田真史(X散乱測定実験と解析)、北畑裕之(実験協力)】

Jerzy Górecki, Jonna N Gorecka, Bogdan Nowakowski, Hiroshi Ueno, Tatsuaki Tsuruyama and *Kenichi Yoshikawa,
Sensing Parameter of a Time Dependent Inflow with an Enzymatic Reaction,
Advances in Unconventional Computing 2, 85-104 (2016).

概要: 細胞は外部環境の経時的変化に応じて自律的に情報処理(演算)を行い、適切に応答することにより生命活動を維持している。この論文では、酵素反応が自律的な演算を行うことが可能であることを、新しい理論的なモデルのなかで示してきている。今回の出版は、「細胞の自律演算モデル」を単行本の中の分担執筆として一章をまとめたもの。 【吉川研一:非線形常微分によるモデル化、鶴山竜昭:生物の外部刺激に対する動的応答についの考察】

Tomo Kurimura, Seori Mori, Masako Miki and *Kenichi Yoshikawa,
Rotary motion of a micro-solid particle under a stationary difference of electric potential,
The Journal of Chemical Physics 145, 034902/1-4 (2016).

概要: mm以下のスケールで、一対の針型電極を用いて直流電圧を印加すると、伝導度の低い油性媒質中、水滴が規則的な往復運動を引き起こすことについては、すでに我々のグループが報告してきている。本論文では、プラスチックのミクロ粒子が、自律的運動をするといった新規な実験結果を報告している。実際に、粒子は電極間で2ロールの公転運動を示すことを見出した。ミクロ水滴の場合は、水滴自体が電極近傍で荷電反転することが運動の駆動力であったが、プラスチック粒子の場合は電極間の場の輸送の流れが運動を引き起こしている。運動の様相については、簡単化した流体運動のモデルで、その運動モードを再現することに成功した。  【吉川研一(実験や解析を含めた研究のとりまとめ)、市川正敏(実験のアドバイス)】

Soutaro Oda, Yoshitsugu Kubo, Chwen-Yang Shew and *Kenichi Yoshikawa,
Fluctuations induced transition of localization of granular objects caused by degrees of crowding,
Physica D 336, 39-46 (2016).

概要: 生命体は非平衡ゆらぎにより、自らの生命を創り出し、その活動を維持している。本研究では、「ゆらぎ」と「秩序構造」に着目し、サイズの異なる粒子の集団に外部から振動をあたえるといった実験を行った。その結果、粒子集団が空間的に閉じ込められた環境下で、粒子のサイズに応じて相分離して、閉鎖空間内に局在化することを発見した。空間内の混雑度が低い環境では大きな粒子が空間外部に、混雑度が高い場合には大きな粒子が空間内部に局在する。排除体積効果を取り込むことにより並進運動の自由度を求めて、系のエントロピーを理論的に計算した。その結果、実験で得られた粒子の局在条件を理論的に説明することが可能であることを示した。

Jerzy Górecki, Jonna N. Gorecka, Bogdan Nowakowski, Hiroshi Ueno and *Kenichi Yoshikawa,
How many enzyme molecules are needed for discrimination oriented applications?,
Physical Chemistry Chemical Physics 18, 20518-20527 (2016).

概要: Hill係数が2-3程度の弱い協同効果を示す酵素系の場合は、細胞内では、数ゆらぎの効果のために、on/off型のswitchingが起こりにくくなることが予想される。本研究では、基質などの分子数ゆらぎをとりいれて、細胞に対しての外部からの刺激がどのような応答を引き起こすかを理論及び数値実験により検証した。その結果、細胞内の酵素分子数が1000程度あるとスイッ チングを起こすことが可能になることを推定。

Takuya Hiratsuka, Yuji Takei, Rei Ohmori, Yuuki Imai, Makoto Ozeki, Keiji Tamaki, Hironori Haga, Takashi Nakamura, *Tatsuaki Tsuruyama,
ZFP521 contributes to pre-B-cell lymphomagenesis through modulation of the pre-B-cell receptor signaling pathway,
Oncogene 35, 3227-3238 (2016).

概要: マウスのレトロウイルスのZNF521遺伝子内挿入により同遺伝子の高発現が、プレB細胞性白血病を引き起こすことが明らかになった。この遺伝子高発現は、さらにプレB細胞の表面受容体に会合するBLNK、BTK、BANK1シグナル分子の高発現を引き起こし、ついで細胞増殖因子c-myc、サイクリンD3などの高発現をを引き起こすことで白血病を引き起こす一連のシグナルカスケードが明らかにされた。 【吉川研一(レトロウイルス挿入の部位のゆらぎによるzfp521の発現量への影響について示唆をうけた。次回論文で挿入部位のゆらぎについて共同報告する予定)】

Chika Tongu, Takahiro Kenmotsu, Yuko Yoshikawa, Anatoly A. Zinchenko, Ning Chen and *Kenichi Yoshikawa,
Divalent Cation Shrinks DNA but Inhibits its Compaction with Trivalent Cation,
The Journal of Chemical Physics 144, 205101/1-7 (2016).

概要: 蛍光顕微鏡によるDNA一分子観察の方法論を用い、ゲノムサイズDNA (T4 DNA 166 kbp)の高次構造変化を観察し、2価と3価のカチオンは、溶液中に単独で存在する場合は、DNAを凝縮させるように働くが、2価と3価が共存する場合は、お互いの寄与が競合し、DNAの凝縮を阻害することを明らかにした。また、本研究において、この多価カチオンによる競合効果について、対イオン凝縮理論に系全体の並進エントロピー利得を考慮した物理モデルを提案し、実験データの多価カチオン濃度依存性を再現できることを示した。

Hiroki Sakuta, Nobuyuki Magome, Yoshihito Mori and *Kenichi Yoshikawa,
Negative/Positive Chemotaxis of a Droplet: Dynamic Response to a Stimulant Gas,
Applied Physics Letters 108, 203703/1-4 (2016).

概要: 生物が示す走化性に注目して、ガスに対して同様の振る舞いを見せる液滴系を発見した。酸性であるオレイン酸のcmサイズの液滴に塩基性のアンモニアをガス刺激として与えると液滴はガス刺激から逃げる方向に運動した(負の走化性)。オレイン酸とアンモニアの間で生じる酸塩基反応でオレイン酸がイオン化されることで界面活性を示し、界面張力が場所特異的に変化することで生じるマランゴニ流により運動が誘起されていると考えられる。また、塩基性のアニリン液滴と酸性の塩酸ガスによる系において液滴はガスに引き付けられる方向に運動した(正の走化性)。このように、生物の走化性を模倣するモデル系としてガス刺激を感知して運動する液滴系の実験で興味深い結果が得られた。

Shu Hashimoto, Aoi Yoshida, Taeko Ohta, Hiroaki Taniguchi, Koichiro Sadakane and *Kenichi Yoshikawa,
Formation of Stable Cell-Cell Contact without a Solid/Gel Scaffold: Non-invasive Manipulation by Laser under Depletion Interaction with a Polymer,
Chemical Physics Letters 655-656, 11-16 (2016).

概要: 従来の細胞生物学では必要不可欠とされていたゲルなどの固体基盤を用いることなく3次元細胞集合体を安定に構築することに成功した。高分子溶液中の任意の細胞をレーザーピンセット技術により、同溶液中の他の細胞の下へと非接触で搬送し、数分間放置すると、高分子が存在しない環境でもその接着を維持するという事が確認された。本研究では、この細胞接着のメカニズムについて接着面の細胞膜上の物質の自発的な転移の観点から考察している。

Tomo Kurimura and *Masatoshi Ichikawa,
Noise-supported actuator: Coherent resonance in the oscillations of a micrometersized object under a direct current-voltage,
Applied Physics Letters 108, 144101/1-4 (2016).

概要: ノイズやゆらぎを利用して効果的に駆動するアクチュエータの動作原理を実験で確認しました。これまでの研究で、対向針電極間に直流の電圧を掛けた時に、その間に浮かぶ物体が往復運動をしめす事を報告しています。このとき、電圧ノイズによって往復運動領域が拡がり、より低電圧からの駆動が起きる事を発見しました。本論文では、ホワイトノイズの印加によって往復運動が誘起される事や、その効率が最大となるホワイトノイズ強度が有る事(共鳴的)、誘起された運動の周波数がホワイトノイズ帯域の端に依るもので無い事などを実験で確認しました。これらの結果を基に、coherent resonance (確率共鳴 stochastic resonanceの仲間)と呼ばれる、リミットサイクル振動子とノイズとの共鳴現象であると結論付けました。この原理を応用すれば、生体分子モータの様に熱ゆらぎが相対的に大きくなるナノメートルの世界でも規則的な運動を効率的に取り出せる機構の設計ができます。 【中尾裕也(議論、アドバイス) 吉川研一(議論)】

Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and *Takashi Taniguchi,
Direct observations of transition dynamics from macro- to micro-phase separation in asymmetric lipid bilayers induced by externally added glycolipids,
Europhysics Letters 113, Number 5, 56005-p1-p6 (2016).

概要: 細胞膜の非対称性を真似た系を作ると、マクロ相分離がミクロ相分離に転移する事を実験とシミュレーションから明らかにしました。近年、脂質膜系での相分離現象が盛んに研究されています。しかし、細胞膜ではミクロ相分離状態などだと推定されている条件でも、モデル膜系ではマクロ相分離になる事が殆どで、その原因は不明でした。先行研究として、膜タンパク質の添加によるミクロ化が報告されています。この様な系で、細胞膜の非対称性に着目し、糖脂質ガングリオシドのGM1を相分離したベシクルに添加すると、水と油の様にマクロ相分離状態になっていたベシクル膜の相分離が、帯形状を経由して分散したミクロドメインに変化していく事を発見しました。通常の相分離カイネティクスを逆回しにした過程となっています。この逆回しのプロセスの動力学過程の研究はこれまでに無いものでした。ガングリオシドの添加が膜の自発曲率を上昇させるというモデルを基に、3次元に浮かぶ2次元液膜小胞のTDGLシミュレーションを行うと、実験の定性的傾向が再現される事が確認されました。本研究自体は形状と相分離が膜の自発曲率を介して強くカップルした系に特有の面白い現象に関する報告であり、直接的な意味での生化学的な役割は良く分かっていませんが、細胞膜の非対称性を真似るとラフトの様にミクロな相分離になったというその関連には興味が沸きます。 【谷口貴志(シミュレーション)、吉川研一(実験協力)】

Yuki Oda, Koichiro Sadakane, Yuko Yoshikawa, Tadayuki Imanaka, Kingo Takiguchi, Masahito Hayashi, Takahiro Kenmotsu and *Kenichi Yoshikawa,
Highly Concentrated Ethanol Solution Behaves as a Good Solvent for DNA as Revealed by Single-Molecule Observation,
ChemPhysChem 17(4), 471-473 (2016).

概要: ethanol水溶液は、細胞からDNAを取り出す際の溶媒として、分子生物学領域では極めて一般的に用いられている。これは、ethanol水溶液が、DNAを効率よく沈殿させる性質を有するからである。本研究では、ethanol濃度がたかくなり、70%以上になると、凝縮状態のDNAが脱凝縮を起こして、コイル状態の形態となり、溶液に再溶解する現象を見出した。高濃度のethanol溶液では、水とアルコール分子がnmレベルのクラスターを作っており、これが、高度に荷電を帯びたDNA分子の脱凝縮を引き起こしている可能性について、議論を行った。

Yukinori Nishigami, *Hiroaki Ito, Seiji Sonobe, and *Masatoshi Ichikawa,
Non-periodic oscillatory deformation of an actomyosin microdroplet encapsulated within a lipid interface,
Scientific Reports 6, 18964/1-11 (2016).

概要: アクティブにゆらぎつつ形を変える人工細胞的なものを創りました。ミクロ液滴内にアメーバのアクチンとミオシンを封入したものです。液滴内部表面に再構成させたcortexが収縮を始める前、液滴内部に自律的に形成されたアクトミオシンの構造によって界面が応力を受け、それが液滴表面の激しいゆらぎになっている事を発見しました。この界面ゆらぎは熱揺らぎよりも遥かに大きいもので、分子モーターの力生成と自己組織化が生み出した、非平衡の界面ゆらぎです。本論文ではこの界面ゆらぎのパワースペクトルやサイズ依存性等を調べ、その性質を明らかにしました。大まかには、大きい振幅のへこみ変形がアンサンブル平均としてランダムな場所、時間で発生し、その時間相関が10sのオーダーでした。また、興味深い事に内部の構造体の対称性が大きく破れると、それに応じて界面ゆらぎの頻度や振幅も局在化し、特異な変形を見せました。この界面ゆらぎと変形を更に推し進める事で、細胞運動を再現するモデルを作る事が出来ると期待できます。 【義永那津人(解析やモデルに関するアドバイス)、濵田勉(実験に関するアドバイス)、永井健(解析やモデルに関するアドバイス)】

2015

*Hiroaki Ito, Yukinori Nishigami, Seiji Sonobe, and *Masatoshi Ichikawa,
Wrinkling of a spherical lipid interface induced by actomyosin cortex,
Physical Review E 92, 062711/1-8 (2015).

概要: 脂質一分子膜を備えた油中水滴の中に actomyosin を封入し、その膜の内側に cortex を再構成させました。時間の経過と共に actomyosin は ATP を消費していきます。すると、ミオシン周りのATPが次第に枯渇し、ミオシンがアクチンフィラメントと結合してる時間が伸びていきます。そのとき、ミオシンは実質的な cross linker となり、cortex内部に応力を溜め込んでいきます。この応力によってcortexは面方向に収縮します。本系でもそれが「しわ (wringkling)」の発生原因になっていると考えました。cortexの収縮力、界面張力や曲げ剛性を入れたモデルによってwringklingの要件を計算し、実験結果にフィットしました。その結果、モデルは実験で出てきたサイズ・曲率依存性のスケーリングを良く説明し、フィッティングパラメータとして出てきたcortexの実効厚さ約200nmは、実験の蛍光像や過去のcortexの報告と良い一致を示しました。液滴の曲率という細胞サイズの微小空間に、変形形状が依存するという興味深い結果が得られました。 【義永那津人(解析やモデルに関するアドバイス)、濵田勉(実験に関するアドバイス)、永井健(解析やモデルに関するアドバイス)】

Tomohiro Yanao, Sosuke Sano and *Kenichi Yoshikawa,
Chiral selection in wrapping, crossover, and braiding of DNA mediated by asymmetric bend-writhe elasticity,
AIMS Biophysics 2(4), 666–694 (2015).

概要: DNAに代表されるようなラセン型の高分子について、bending(屈曲)とwrithig(ねじれ)は独立の構造変数として取り扱われることがこれまでは多かった。本研究では、ラセンのchiralityに応じて、一般的に、bendingとwrithingは非対称のcouplingを示すことを、Monte Carlo計算や解析的な手法により明らかにした。このような物性を考慮することにより、例えば、ゲノムDNAがヒストンンタンパク質の周りに巻き付くときには、左巻きを選択することが説明できることなどを明らかにしている。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Hiroshi Ueno, Tatsuaki Tsuruyama, Bogdan Nowakowski, Jerzy Górecki, and *Kenichi Yoshikawa,
Discrimination of time-dependent inflow properties with a cooperative dynamical system.,
Chaos 25, 103115 (2015).

概要: 細胞内 Mitogen-activated Protein Kinaseシグナル伝達系をもとにした非線形アロステリックモデルに基づく数値計算シミュレーションを詳細に行った。その結果、シグナル伝達系が外部刺激の周期的摂動の振幅、周波数を識別するバンドパスフィルター機構を備えている、すなわち、特定の範囲の振幅、周波数の値に対して酵素濃度が大きく変化する可能性が示された。わずかな外部環境の変化に対して敏感に応答する細胞内シグナル伝達の性質を説明できる重要な成果である。 【吉川研一(バンドパスフィルター機構について解析の枠組みに関する基本アイデアを示唆された。)】

Tatsuaki Tsuruyama, Wulamujiang Aini, Takuya Hiratsuka,
Reassessment of H&E-stained clot specimens and immunohistochemistry of phosphorylated Stat5 for histologic diagnosis of MDS/MPN.,
Pathology 47, 673-7 (2015).

概要: 血液細胞の白血病化の前段階である骨髄異形成症候群は、これまでヘマトキシリンエオシン染色による診断が困難であった。骨髄異形成症候群・慢性骨髄性白血病など関連白血病疾患において赤血球、白血球、巨核球の形態異常に加え、細胞質のヘマトキシリンエオシン染色性の不均一・ゆらぎが新たな診断規準になることを示した。加えてSTAT5のリン酸化の検出が診断に有用であることが示された。 【吉川研一(血液細胞の染色性の不均一性、形態ゆらぎが診断の根拠となる示唆を受けた。)】

Masanobu Tanaka, Marcel Hörning, Hiroyuki Kitahata and *Kenichi Yoshikawa,
Elimination of a spiral wave pinned at an obstacle by a train of plane waves: Effect of diffusion between obstacles and surrounding media,
Chaos 25, 103127 (2015).

概要: 興奮系にディフェクトがあるとき、ディフェクトにらせん波がトラップされることが知られている。このようならせん波は心臓でも見られており、そのらせん波の除去は重要な問題である。これまでに、物質の流出入がないディフェクトにトラップされたらせん波の除去可能性について議論した。今回、物質がディフェクト内に拡散できるときのらせん波の除去可能性について数値計算および解析を中心として調査した。 【北畑裕之(理論解析)、吉川研一(研究のとりまとめ)】

Shogo Okubo, Shuhei Shibata, Yuriko Sasa Kawamura, Masatoshi Ichikawa and *Yasuyuki Kimura,
Dynamic clustering of driven colloidal particles on a circular path,
Physical Review E 92, 032303 (2015).

概要: 円環上をその接線方向に一定の駆動力を受けて運動するコロイド粒子系は、流体力学相互作用によりさまざまな非自明な集団運動を示す。本研究ではことに、粒子サイズが集団運動に及ぼす影響を特定の条件下で調べた。同一粒子径粒子の系では、クラスターの生成消滅を繰り返す運動と特定のサイズのクラスターを形成する2つの場合があることがわかった。また、異粒子径粒子(サイズ比が大きい場合)の系では、粒子の配列により決定論的に最終のクラスターが決まり、動的な変化を示さないことがわかった。粒子サイズ比を変えることで静的・動的クラスター形成の転移が起こることを数値シミュレーションおよび実験により明らかにした。

Yue Ma, Naoki Ogawa, Yuko Yoshikawa, Toshiaki Mori, Tadayuki Imanaka, Yoshiaki Watanabe and *Kenichi Yoshikawa,
Protective Effect of Ascorbic Acid against Double-strand Breaks in Giant DNA: Marked Differences among the Damage Induced by Photo-irradiation, Gamma-rays and Ultrasound,
Chemical Physics Letters 638, 205-209 (2015).

概要: 一分子計測の実験手法を活用することにより、ゲノムサイズのDNAの二本鎖切断についての、アスコルビン酸の保護作用を定量的に評価した。可視光照射によす活性酸素の切断については、1/3提訴に損傷を減らす効果があった。ガンマ線照射については、30%損傷を軽減する効果があった。それに対して、超音波による損傷では保護作用は観察されなかった。損傷源に依存した保護効果の違いを、物理化学的なメカニズムの違いにより説明している。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Yongjun Chen, Kosuke Suzuki and *Kenichi Yoshikawa,
Self-organized Target and Spiral Patterns through the “Coffee Ring” Effect,
Journal of Chemical Physics 143, 084702 (2015).

概要: C60の溶液を蒸発させることにより、μmスケールの同心円やラセンの構造が自発的に生成することを見出し、そのメカニズムについて考察を行った。この現象は、一種のcoffee ring効果であるとみなすことができる。Nucleationと沈殿形成が、contact lineの移動にともなって起こり、これにより規則的なパターンんが生成していると考えられる。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Naoki Umezawa, Yuhei Horai, Yuki Imamura, Makoto Kawakubo, Mariko Nakahira, Nobuki Kato, Akira Muramatsu, Yuko Yoshikawa, *Kenichi Yoshikawa and Tsunehiko Higuchi,
Structurally Diverse Polyamines: Solid-Phase Synthesis and Interaction with DNA,
ChemBioChem 16, 1811-1819 (2015).

概要: 水溶液中でプラス5の陽荷電をもつポリアミンを化学合成し、DNAへの作用を系統的に研究。直鎖型のポリアミンが、折り畳み転移を引き起こす活性が最も大きいことを見出し、2次構造変化も併せて引きこ押すことなどを報告。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Xiaojun Ma, Tomohiro Aoki, Tatsuaki Tsuruyama, and Shuh Narumiya,
Definition of prostaglandin E2-EP2 signals in the colon tumor microenvironment which amplify inflammation and tumor growth.,
Cancer Reserach 75, 2822-32 (2015).

概要: 結腸における炎症は、結腸・直腸癌の発生に大きく寄与する。好中球および腫瘍関連線維芽細胞におけるEP2が大腸の炎症を増幅し、腫瘍微小環境を形成することによって、結腸腫瘍形成を促進することが明らかにされた。従ってEP2拮抗薬は大腸癌の化学予防のための抗炎症剤アスピリンの有望な代替候補であることが示唆された。 【吉川研一(微小な環境の変化が炎症の大幅な増幅を引き起こし、腫瘍形成に至るモデルを示唆した。)】

Hisako Takigawa-Imamura, Ritsuko Morita, Takafumi Iwaki, Takashi Tsuji and *Kenichi Yoshikawa,
Tooth germ invagination from cell–cell interaction: Working hypothesis on mechanical instability,
Journal of Theoretical Biology 382, 284 (2015).

概要: 歯の発生の段階では、蕾型(bud)の構造が先ず生成し、その後その先頭の位置が陥没し、その陥入した位置に、歯の原器が形成することが、本論文の共著者らの研究により明らかになってきている。ここでは、budの表皮を形成する細胞シートと、bud内部の細胞の各々が細胞分裂することによる、力学的不安定性を取り入れたモデルを提案して、細胞分裂にともなって、自発的に陥入する現象が生じることを明らかにした。発生や形態形成の新しい理論的モデルといえる。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Daigo Yamamoto, Tsuyoshi Takada, Masashi Tachibana, Yuta Iijima, Akihisa Shioi and Kenichi Yoshikawa,
Micromotors working in water through artificialaerobic metabolism,
Nanoscale 7, 13186–13190 (2015).

概要: ethanol水溶液中で、白金のミクロ粒子が自発運動することを発見し、その運動のメカニズムについて議論を行った。近年、過酸化水素含有の水溶液で、ミクロ粒子が自発運動をすることが明らかになり、盛んに研究されている。しかしながら、この系では、酸化反応にともなう泡の発生が運動に深くかかわっている可能性があり、生体における化学→ 運動エネルギー変化に対応するモデルとはなっていないと考えられる。それに対して、本研究では、泡の発生の無い、温和な条件下で自発運動することを示している。今後、等温系での化学エンジンとして大きく研究が発展する可能性が有る。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

*Tsutomu Hamada, Rie Fujimoto, Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa, *Masahiro Takagi,
Molecular behavior of DNA in a cell-sized compartment coated by lipids,
Physical Review E 91, 62717 (2015).

概要: 油中水滴の内部に閉じ込めたDNAが、小胞サイズに依存して膜への吸着・脱吸着を変化させることを見出した。また、fold状態のDNA分子が膜面に吸着した後unfold状態に変化する現象を発見し、このunfolding転移の確率もまた小胞サイズに依存した。理論的考察から、空間サイズ依存的なDNA分子ダイナミクスを記述する自由エネルギーを定式化した。

Masa Tsuchiya, Alessandro Giuliani, Midori Hashimoto, Jekaterina Erenpreisa and Kenichi Yoshikawa,
Emergent Self-Organized Criticality in Gene Expression Dynamics: Temporal Development of Global Phase Transition Revealed in a Cancer Cell Line,
PLOS ONE 10(6), e0128565 (2015).

概要: がん細胞での、グローバルな遺伝子発現パターンの時間発展を解析。その結果、時間発展に伴い、双安定な発現パターンが、臨界状態を経て大域的な転移現象を示すことを明らかにした。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Hiroaki Ito, Navina Kuss, Bastian E. Rapp, Masatoshi Ichikawa, Thomas Gutsmann, Klaus Brandenburg, Johannes M. B. Pöschl, and *Motomu Tanaka,
Quantification of the Influence of Endotoxins on the Mechanics of Adult and Neonatal Red Blood Cells,
Journal of Physical Chemistry B 119, 7837−7845 (2015).

概要: 自作した微小流路を用いて、新生児と成人の赤血球の形状ゆらぎを高分解能で追跡し、振幅の2乗平均から赤血球の曲げ弾性と張力、および細胞骨格との結合の強さ(ずり応力)を定量した。また敗血症のモデルとしてリポ多糖や抗敗血症薬が細胞の力学特性に与える寄与の定量解析にも成功した。

Daigo Yamamoto, Chika Nakajima, Akihisa Shioi, Marie Pierre Krafft, Kenichi Yoshikawa ,
The evolution of spatial ordering of oil drops fast spreading on a water surface,
Nature Communications 6, 7189/1-6 (2015).

概要: フッ素系の油は、普通の油とは相分離するなど、化学的に特異な性質を示す物質として注目されている。本論文では、perfluorooctylbromide (PFOB) を水面に滴下すると、水面上で薄膜を形成した後、空孔 (hole)が現れ、その周りに液滴が自発的に配列することを報告。さらに、空孔の成長に伴い、放射状に小滴群が一次元配列パターンを形成し、その後この小滴群は全体として膨張・収縮を繰り返し、ハチの巣構造を形成するといった、興味深い時間発展が起こることを見出した。理論的には、濡れ転移の非線形性を取り入れることにより、このような規則構造の現れる機構を説明している。本現象は、生物の集団運動など、自然界の時空間の自己秩序形成のメカニズムを理解するためのよいモデル系になると期待される。(注目の論文として紹介記事掲載) 【市川正敏(実験や解析手法に関して議論)】

Yongjun Chen, Shun N. Watanabe and *Kenichi Yoshikawa,
Roughening Dynamics of Radial Imbibition in a Porous Medium,
Journal of Physical Chemistry C 199(22), 12508–12513 (2015).

概要: 2次元の細孔系での液体の浸透パターンの時間発展の実験をおこない、その結果にも基づいて理論的なモデルを提案。自発的な浸透が起こる系では、時間発展の成長が、0.6の指数のスケーリング則で表されることを明らかにした。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Yoshitsugu Kubo, *Shio Inagaki, *Masatoshi Ichikawa, and Kenichi Yoshikawa,
Mode bifurcation of a bouncing dumbbell with chirality,
Physical Review E 91, 052905/1-9 (2015).

概要: 本研究ではダンベル形状の金属物体を加振板の上にのせた時に、物体が見せる運動モードの転移を詳しく調べました。加振強度を大きくしていくにつれて、ダンベルはランダム運動からダンベルの軸方向に進む並進運動、並進運動からダンベルの軸を中心にして転がり往復する転がりモードへと転移していく事が明らかになりました。本論文では特に、前後非対称性が無いにも関わらず一方向運動する点に着目し、メカニズムの解明を行いました。転移挙動をダンベルの特徴を取り入れた計算機シミュレーションで再現して実験と比較すると共に、分岐付近での力学的な構造を考え、運動方程式を調べました。ダンベルの左右は最初ランダムに跳ね上げられてランダム運動します。ある加振強度に達すると、ダンベル左右のうち振幅の大きい方が周期解として記述される運動に入れるようになります。これだけだと周期運動から出る事も可能ですが、もう少し加振強度が強くなると小さい振幅の側の減衰が相対的に速くなり、片側だけが周期運動するモードに対する擾乱がどんどん小さくなります。このとき片側の周期運動には線形安定性が有るので、結果としてリミットサイクルの様になります。この解析で、運動モード転移に見られるヒステリシスや反発係数(素材)の違い、転移点の依存性などを良く説明できた事から、並進運動への転移に関しては十分な理解が得られました。自発的な対称性の破れとして面白い現象だと考えます。 【吉川研一、市川正敏、櫻井建成(実験結果や解析に関して議論)、北畑裕之(実験結果や解析に関して議論)、永井健(実験結果や解析に関して議論)】

*Takafumi Iwaki, Tomomi Ishido, Ken Hirano, Alexei Lazutin, Valentina V. Vasilevskaya, Takahiro Kenmotsu and Kenichi Yoshikawa,
Marked difference in conformational fluctuation between giant DNA molecules in circular and linear forms,
Journal of Chemical Physics 142, 145101 (2015).

概要: 線状と環状の巨大DNA分子(208kbp)について、水溶液中の高次構造の観察を、蛍光顕微鏡をもちいた単一分子鎖観察をおこなった。その結果、線状分子に比べ環状分子は、約40%構造揺らぎが小さくなることが明らかとなった。一方、長軸長については、わずか10%程度の減少が起こるにすぎないことが分かった。極めて面白いことに、環状分子の構造揺らぎの緩和時間は、線状に比べ約1/10と、極めて短くなることが見出された。このような実験で得られた高次構造やその揺らぎの特徴について、粗視化した半剛直高分子鎖のモデルのモンテカルロ計算により再現することができた。さらに、平均場近似により、このような傾向が生じるメカニズムを論じた。なお、本論文は、当該学術雑誌のFEATURED ARTICLEに選ばれ、論文中の「ゲノムDNAの一分子揺らぎの計測例」が論文誌の表紙を飾りました。【市川正敏(実験結果についての議論)】

Kanta Tsumoto, Masafumi Arai, Naoki Nakatani, Shun N. Watanabe and *Kenichi Yoshikawa,
Does DNA Exert an Active Role in Generating Cell-Sized Spheres in an Aqueous Solution with a Crowding Binary Polymer?,
Life 5(1), 459-466 (2015).

概要: 2種類の水溶性高分子の混雑環境下、水―水の二相分離が生じることは、水性二相分配(ATPS)と呼ばれ、これまでにも知られていた。本研究では、混雑する2種類の高分子の混雑環境にDNA分子を更に加えた時の影響を調べた。その結果、DNAはより剛直性の高い高分子の分率の高い液滴側に選択的に取り込まれることが明らかとなった。更に、詳細な実験を行ったところ、DNAが水性二相分配が進行させる効果があることが示唆されるような実験結果が得られた。 【市川正敏、濱田勉(実験結果についての議論)】

Takahiro Umeki, Masahiko Ohata, *Hiizu Nakanishi, Masatoshi Ichikawa,
Dynamics of microdroplets over the surface of hot water,
Scientific Reports 5, 8046/1-6 (2015).

概要: コーヒーやお茶の表面を光にすかした時に見える白いもやの膜に関して研究を行った。この白いもやが直径数十マイクロメートルの水滴である事はその白色散乱を見れば予想がつくが、その水滴が水面上で見せるダイナミックな現象に興味を持ち直接観察した。その結果、マクロな観察で対流に沿って出来る様に見える、白いもやの割れ現象が、水滴の雪崩的な連続消滅であることを明らかにした。 【北畑裕之(実験結果に関して議論)、永井健(実験結果に関して議論)】

Kingo Takiguchi, Makiko Egishi, Yohko Tanaka-Takiguchi, Masahito Hayashi and Kenichi Yoshikawa,
Specific Transformation of Assembly with Actin Filaments and Molecular Motors in a Cell-Sized Self-Emerged Liposome,
Origins of Life and Evolution of Biospheres 44(4), 325-329 (2015).

概要: 細胞サイズのリン脂質小胞に取り込まれたアクチンの自発的な構造転移についての報告。アクチンは原核、真核細胞ともに存在する、細胞の構造や運動性に関わる重要なたんぱく質であり、これを取り込んだ人工的な細胞モデルについて実験的な研究を行った。Spindle, Aster, Cortexなどの特徴的な構造がこのモデルで自己生成することを見出した。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Anatoly A. Zinchenko and *Kenichi Yoshikawa,
Compaction of Double-Stranded DNA by Negatively Charged Proteins and Colloids,
Current Opinion in Colloid & Interface Science 20, 60-65 (2015).

概要: PEGなどの水溶性の中性高分子存在下、DNAが折り畳み転移を引き起すこすことは良く知られている。それに対して、本論文の著者らは、負に帯電した高分子や、ナノパーティクルの濃度をあげることにより、DNAの折り畳み転移が引き起こされることを見出した。興味深いことに、中性高分子の混雑環境下では、一価の塩(NaClなど)の濃度を高くとることによりDNAの折り畳み転移が促進されるが、負に帯電したものによる混雑効果では、塩は折り畳み転移を阻害することが明らかとなった。これらの結果は、負に帯電した高分子やナノパーティクルの実効的の排除体積に対する塩の効果を考えることにより、半定量的に説明することが可能であることを明らかにした。 【市川正敏(実験結果についての議論)】

*Chwen-Yang Shew and Kenichi Yoshikawa,
A toy model for nucleus-sized crowding confinement,
Journal of Physics: Condensed Matter 27(6), 064118/1-7 (2015).

概要: 細胞環境中での高分子の状態を調べるために、球状のカプセル内を混雑状態とし、そこに存在する高分子の存在様式を、簡単なモデルを設定して、モンテカルロ計算を行った。その結果、混雑度の増大に伴って、高分子鎖は、カプセルの内部から、その内表面に移行する様になることを見出した。このような傾向は、最近の吉川らのDNA一分子観察の実験によっても得られており、細胞が熱揺らぎの下、混雑環境下生命現象を維持していることとも関連して、興味深い結果をなっている。 【市川正敏、濱田勉(情報交換と議論)】

*Shio Inagaki, Hiroyuki Ebata and Kenichi Yoshikawa,
Steadily oscillating axial bands of binary granules in a nearly filled coaxial cylinder,
Physical Review E 91, 010201(R)/1-5 (2015).

概要: 2種類の紛体を回転ドラムに充填した状態で、水平軸の周りに回転を行わせ、紛体の分離パターンの時間変化を観測した。その結果、充填率の上昇にともなって、単調な相分離(coarsening)、進行波、そして、進行方向の時間的な振動へと、モード分岐が引き起こされることを見出した。回転ドラム内の、内層と外層との交換をとりいれた、現象的な方程式を導出し、理論的な考察をおこなった。ここで得られて式は、Cahn-Hilliard型の式であるが、そのなかに、内層と外層との間の対流運動を取り入れたモデルとなっている。これにより、実験によって得られた傾向をほぼ再現することが可能となった。これまでの、回転ドラム実験では、充填率が低いものがほとんどであったが、充填率を上げることにより、時間の並進対称性や反転対称性が破れることが明らかとなった。 【市川正敏(実験方法に関してのアドバイス)】

2014

*Shunsuke F. Shimobayashi and *Masatoshi Ichikawa,
Emergence of DNA-Encapsulating Liposomes from a DNA-Lipid Blend Film,
Journal of Physical Chemistry B 118, 10688-10694 (2014).

概要: ゲノムサイズの長いDNAをその内部に封入した細胞サイズリポソームを効率的に作成する手法を新たに開発しました。細胞サイズのリポソームを作成する手法は複数ありますが、大きく2系統に分ける事が出来ます。1つは油中液滴を形成させる方法、もう1つは乾燥フィルムから形成させる方法です。両者とも長所短所有りますが、こと高濃度の生体高分子を封入する方法としては、前者の油中水滴による界面透過法が殆ど唯一の選択肢でした。今回、リポソーム形成メカニズムを詳細に検討する事で、後者のフィルムからの方法で界面透過法に迫る濃度での効率的形成に成功しました。端的には、静置水和法(simple hydration)の改良である湊元methodと、dehydration-rehydration法の良いとこどりです。更に、リポソーム形成時に顕れる現象を、絡まり合う高分子のダイナミクスや粘弾性相分離といったソフトマター物理の知見を生かして解析する事で、特に長いDNAの封入効率を劇的に高める事が出来ました。工学的には前者の界面透過法とその親戚が現状でベストであり、それに対する本手法の際立った優位点は大量生産に対するスケーラビリティです。一方、学術的な意義として、細胞内部のような高濃度の生体高分子溶液を封入したリポソームが自然な条件設定で自発的に出来うる事を示した本研究は、生命発生、特に細胞のはじまりを探求する研究として興味深い結果です。 【吉川研一(議論と動的光散乱測定への協力)、濵田勉(議論とアドバイス)】

Fumi Takabatake, Kenichi Yoshikawa, and *Masatoshi Ichikawa,
Communication: Mode bifurcation of droplet motion under stationary laser irradiation,
The Journal of Chemical Physics 141, 051103/1-4 (2014).

概要: レーザー光によって局所加熱されたcmサイズの液滴が、光強度に応じて自律的に運動モードを変化させる事を実験的に示しました。光が弱いときから順に、静止、ランダム、往復、回転、と運動モードを変化させます。この結果は、PRE 87, 013009 (2013)を実験によって検証したものに相当します。流動パターンと液滴の動きは先の論文における予想とほぼ同じであり、本研究によって十分に検証されたものと考えています。一方で、実験的な見地からは、また別の転移を含んでいる可能性を指摘しました。適当な時間遅れ、例えば慣性的な振る舞いによっても、同様の転移を見せる可能性があります。 【吉川研一(実験系のアドバイスや論文執筆)、北畑裕之(議論と理論面からのアドバイス)、永井健(議論と理論面からのアドバイス)、義永那津人(議論と理論面からのアドバイス)】

*Tatsuaki Tsuruyama,
A model of cell biological signaling predicts the phase transition of signaling and provides mathematical formula of signaling,
PLOS ONE 9, e102911 (2014).

概要: タンパク質集合における反応速度解析において、モノマータンパク質の拡散係数にタンパク質の濃度依存性を導入し、非線形速度論モデルを設定した。その結果、集合過程が、集合に必要なATPなどの補因子の濃度に強く依存し、補因子の臨界濃度近傍でモノマータンパク質の濃度ゆらぎが周期的に起こる可能性が示唆された。その場合、振動数が補因子の濃度の対数関数で近似される可能性も示唆された。 【吉川研一(非線形解析における理論的指導)】

Tomohiro Yanao and *Kenichi Yoshikawa,
Chiral symmetry breaking of a double-stranded helical chain through bend-writhe coupling,
Physical Review E 89, 062713/1-16 (2014).

概要: DNAに代表されるような、特定のカイラリティにラセンを巻いた高分子について、bendingとwrithingの非線形相互作用の、構造にたいする影響について、シミュレーションおよび解析手法により迫った研究。ここで用いたモデルは、二本の弾性的な紐が巻き付くことにより二重ラセンを形成しているとするものである。このようなラセン高分子は、曲げ(bending)のストレスがかかると、ラセンが解かれて緩む方向の変化を引き起すことを見出した。このことにより、丸棒状の構造体に巻き付くときには、二重ラセンの本来のカイラリティとは逆のカイラリティを示すことを明らかにした。このような傾向は、実際にDNAがヒストン蛋白に巻き付くときにみられる傾向と同一であり、ラセン高分子がしめす高次構造の特徴の基本をなしていると推論。

Yutaka Sumino and *Kenichi Yoshikawa,
Amoeba-like motion of an oil droplet Chemical model of self-motile organisms,
The European Physical Journal Special Topics 223, 1345–1352 (2014).

概要: アメーバ―用の自律運動をしめす、化学的なモデル実験系についての著者らの幾つかの研究結果を取りまとめて論じたもの。この自発運動は、水・油・界面活性剤からなり、弾性をしめす構造体の生成と崩壊の繰り返しがその原因となっている。この意味で、アメーバ運動で現象的にしられていることと対応している。これまでのアメーバ―運動に関する理論モデルを検討し、その問題点を明らかにし、モデル実験系から得られた理論モデルがより一般的であると推論。また、最近の著者らの中性子散乱ほうなどをもちいる、ミクロな分子形態の変化の実験結果についても紹介。モデル実験系の有用性についての議論を最後に行っている。

Masa Tsuchiya, Midori Hashimoto, Yoshiko Takenaka, Ikuko N. Motoike and *Kenichi Yoshikawa,
Global Genetic Response in a Cancer Cell: Self-Organized Coherent Expression Dynamics,
PLOS ONE 9(8), e105491 (2014).

概要: ヒト癌細胞(MCF-7; 乳がん由来)に、成長因子(EGF)および細胞分裂促進因子(HRG)を投与したときの、時間に依存した遺伝子発現のプロファイルの変化を解析した。22035個の遺伝子について実験的に得られたデータについて、時間差分の経時変化の非線形特性に注目した。投与の初期段階において、遺伝子群がon/offに特徴づけられる応答をしめすことが分かった。時間とともに、この統計集団が臨界状態をへて、別の双安定的な発現プロファイルを示すことも明らかとなった。このような時間依存の分岐現象が、ゲノムDNAの高次構造の転移現象に由来している可能性を議論した。

*Anatoly A. Zinchenko, Kanta Tsumoto, Shizuaki Murata and Kenichi Yoshikawa,
Crowding by Anionic Nanoparticles Causes DNA Double-Strand Instability and Compaction,
The Journal of Physical Chemistry B 118, 1256-1262 (2014).

概要: 負に帯電したnanoparticleによる混雑環境下で、DNAに折り畳み転移を引き起こされることを明らかにした。興味深いことにDNAは20-30nm程度のループを形成していることが分かった。更に重要なこととして、nanoparticleによるDNAの凝縮体は、helix-coil転移の転移温度が低くなることも見出している。 【吉川研一(実験結果の定量的解析および理論化、論文全体の構成)】

*Chwen-Yang Shew, Kenta Kondo and Kenichi Yoshikawa,
Rigidity of a spherical capsule switches the localization of encapsulated particles between inner and peripheral regions under crowding condition: Simple model on cellular architecture,
The Journal of Chemical Physics 140, 024907/1-9 (2014).

概要: 細胞内の混雑環境下での、高分子や細胞顆粒の自発的な分離について、モンテカルロ法による計算を援用して、理論的な考察をおこなった。硬い膜い囲まれた場合は、小球が膜近傍に位置し、大球は中央部分に存在する様になる。膜が柔らかくなると、大球が膜表面に接触する配置を取るようになる。これは、例えば、細胞核の細胞内での存在様式などとも関連している可能性があり、興味深い 【吉川研一(論文全体の構成、研究テーマの発案、理論的考察】

Rastko Joksimovic, Shun N. Watanabe, Sven Riemer, Michael Gradzielski and *Kenichi Yoshikawa,
Self-organized patterning through thedynamic segregation of DNA and silicananoparticles,
Scientific Reports 4, 3660/1-7 (2014).

概要: DNAとシリカナノ粒子の混合系の水溶液を乾燥させると、放射上の特徴的なパターンが自発的に表れることを見出した。放射上の線は、配向したDNA分子が集合してできていると考えられる。また、興味深いごとに、ナノ粒子が存在する領域に、マイクロメータスケールの、三日月型やヒョウタン型の島構造が生成する。【論文の着想、理論的考察、全体のとりまとめ】

2013

Fumihiko Kono, Tetsuya Honda, Aini Wulamujiang, Hironori Haga, *Tatsuaki Tsuruyama,
IFN-γ/CCR5 expression in invariant NKT cells and CCL5 expression in capillary veins of dermal papillae correlate with development of psoriasis vulgaris,
British Journal of Dermatology, in press (2013).

概要: ナチュラルキラーT細胞の皮膚における同定と、定量的計測の結果、IFN-γ/CCR5陽性ナチュラルキラーT細胞と真皮乳頭にある毛細血管のCCL5発現は乾癬における表皮細胞の過形成および微小膿瘍の発症と相関していることが明らかになった。 【鶴山竜昭(標本の作成、形態分析、論文執筆)、吉川研一(形態ゆらぎ定量分析に関する助言)】

Yu Kakimoto, Shinji Ito, Hitoshi Abiru, Hirokazu Kotani, Munetaka Ozeki, Keiji Tamaki, Tatsuaki Tsuruyama*,
Sorbin and SH3 domain-containing protein 2 is released from infarcted heart in the very early phase: proteomic analysis of cardiac tissues from patients,
Journal of American Heart Association 2, e000565 (2013).

概要: 急性心筋梗塞による傷害心筋を顕微鏡下でレーザー光線で採取し、LC/MSによる分析を行った結果、傷害心筋で正常心筋に比べSorbin and SH3 domain-containing protein 2(Sorbs2)が有意に減少していた。さらに患者の血液中にSorbs2が健常人に比べ有意に高濃度で検出され、Sorbs2が梗塞の診断にも有用なマーカーであることが明らかになった。 【鶴山竜昭(顕微鏡診断、レーザー光線による採取、LC/MSデータ分析、血液データの分析、論文の執筆)、】

*Hiroaki Ito, Toru Yamanaka, Shou Kato, Tsutomu Hamada, Masahiro Takagi, *Masatoshi Ichikawa, *Kenichi Yoshikawa,
Dynamical formation of lipid bilayer vesicles fromlipid-coated droplets across a planar monolayer at an oil/water interface,
Soft Matter 9, 9539–9547 (2013).

概要: 油中水滴の界面透過のメカニズムを速度過程の面から明らかにした研究です。脂質2分子膜の小胞はリポソームとも呼ばれ、細胞膜の膜だけ再構成した入れ物として、人工細胞等の「うつわ」として利用されてきました。その様な研究は50年ほどの歴史が有りますが、実際のところ、細胞の中味の様な高濃度溶液でリポソームを作成する事は困難でした。その問題点を克服したリポソーム作成手法として、界面透過法という方法が最近盛んに使われるようになっています。脂質の1分子膜を伴った油中水滴を、別の油水界面を通過させる事で2分子膜小胞をつくるこの手法は、マイクロピペットやマイクロ流体デバイスなどを応用した様々な派生手法が有りますが、いずれも油水系で1分子膜+1分子膜プロセスという点は共通です。この論文はそのプロセスを速度過程の面から明らかにしました。まず、液滴の透過は自発的に起こりますが、だいたい途中で引っかかります。この速度過程を横倒しにした顕微鏡光学系で観察しました。次に、その透過ダイナミクスを理論解析(単純に言うと界面の発展方程式を球面で考えたもの)すると、実験の傾向と一致する事が示せました。大きな液滴は透過の最後の方で遅くなり、小さな液滴は最初のバリアが高いという結果です。更に、これを半静的な測定で検証したみたところ、よい一致が得られました。界面透過法の中で最も重要なプロセスのメカニズムが明らかになった事で、様々な派生手法の設計にも役に立つと期待できます。

Tomo Kurimura, *Masatoshi Ichikawa, Masahiro Takinoue, *Kenichi Yoshikawa,
Back-and-forth micromotion of aqueous droplets in a dc electric field,
Physical Review E 88, 042918/1-5 (2013).

概要: ノイズで振動状態が安定化する50μmスケールの微小なリミットサイクル振動子を実現した研究です。対向針電極の間に油中水滴を置き、電極に直流電圧を掛けると、液滴球が電極によって帯電し、静電反発する事で対面の電極に飛ばされ、それを繰り返します。同様の往復振動はマクロな系や、金属球などでも起こります。本研究ではそれを微細化して、駆動電圧を大きく下げる事に成功しました。このとき、静電と誘電の両方の効果を考慮する事で、この水滴運動の系がリミットサイクルと呼べる系である事が明らかになりました。低次の対称性を考慮した水滴の運動方程式を立て、安定状態から振動状態への分岐を線形安定性解析すると、ホップ分岐の線が V~L^(3/2)という、非自明なスケーリング則を取る事が導けます(V電圧、L電極間距離)。このスケーリング則を実験と比較すると、過去の結果も含めて良好な対応があることが分かりました。さらに、電圧にホワイトノイズ(1Vpp)を印加すると、閾値電圧以下の条件にもかかわらず、非常に安定な振動が開始・維持されました。これは、確率共鳴の仲間として coherent resonance と呼ばれている現象に相当します。熱揺らぎの下で、スムーズな運動をすることのできるミクロモーターとして、今後の発展が期待できます。