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A03計画班

論文等 | 原著論文

2017

Tatsuaki Tsuruyama,
Kinetic Stability Analysis of Protein Assembly on the Center Manifold around the Critical Point.,
BMC Systems Biology, in press (2017).

概要: タンパク質の重合モデルに関する非線形方程式をつくり、重合に必要なATPの臨界濃度付近でゆらぎの振動が起こるのを臨界濃度付近の中心多様体上で摂動展開して、分岐の様子を数値シュミレーションした。 【鶴山竜昭:モデルの考案とシュミレーション解析、吉川研一:非線形解析に関する助言】

Yuto Hosaka, Kento Yasuda, Isamu Sou, Ryuichi Okamoto, and Shigeyuki Komura,
Thermally driven elastic micromachines,
Journal of the Physical Sciety of Japan 86, 113801/1-4 (2017).

概要: 我々は、酵素やモータータンパク質との関連性を重視して、三つの球が調和的なバネで連結された弾性的なマイクロマシンを提案した。球間のバネの導入により、分子内の緩和ダイナミクスを自然な形で考慮できるようになった。熱的に駆動される三つ玉マイクロマシンの運動は、各球に対するランジュバン方程式で記述した。我々は、マイクロマシンの遊泳速度を解析的に導出し、マイクロマシンは温度の高い球の方向に運動することを示した。 【岡本隆一(理論解析)】

Kenji Nishizawa, Marcel Bremerich, Heev Ayade, Christoph F. Schmidt, Takayuki Ariga, Daisuke Mizuno*,
Feedback-tracking microrheology in living cells,
SCIENCE ADVANCES 3, e1700318 (2017).

概要: 生き物の最小単位である細胞は様々なソフトマターの複合体により構成され、それらが熱的・非熱的な力に駆動されることで生命活動が営まれている。ソフトマターの性質は力学的な駆動に強く依存するため、その非線形・非平衡メカニズムを究明することで、生命現象の理解を深めることに繋がる。こうしたソフトマターの動力学を研究するための有力な手法にマイクロレオロジー計測法があるが、我々はこれを非平衡環境下で実行するために、流れや揺らぎに対して多重のフィードバックで追随しながら計測を行うシステムを開発した。本論文では、システムの概要と細胞力学に関連する成果について発表した。

Shoko Uemoto, Taro Toyota, Luca Chiari, Tomonori Nomoto, *Masanori Fujinami,,
Assemblies of molecular aggregates in the blebbing motion of an oil droplet on an aqueous solution containing surfactant,
Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects 529, 373-379 (2017).

概要: カチオン界面活性剤を含む水溶液の水面に,高級脂肪酸を溶解した炭化水素の油滴が加えられると,油滴は伸縮した後にブレッブ運動という複雑な変形をみせることが住野らにより報告されている。本研究では,表面張力の経時変化を準弾性レーザー散乱法で計測するのみならず,この油滴内部での流れや分子凝集体形成の過程をトレーサー粒子や蛍光分子を用いて追跡し,油滴の縁での分子凝集過程のみならず,油滴内部の変化もブレッブ運動に連動していることを見出した。

Atsuji Kodama, Yuka Sakuma, *Masayuki Imai, Toshihiro Kawakatsu, Nicolas Puff, and Miglena I. Angelova,
Migration of Phospholipid Vesicles Can Be Selectively Driven by Concentration Gradients of Metal Chloride Solutions,
Langmuir 33, 10698-10706 (2017).

概要: ベシクルに様々な金属イオンをインジェクションした時に観察される diffusiophoresis 現象を定量的に測定し、理論と比較することにより、ベシクル系での diffusiophoresis を検証した。 【佐久間由香:実験の計画と議論】

Kazusa Beppu, Ziane Izri, Jun Gohya, Kanta Eto, Masatoshi Ichikawa, *Yusuke T. Maeda,
Geometry-driven collective ordering of bacterial vortices,
Soft Matter 13, 5038-5043 (2017).

概要: 遊泳バクテリアの集団は彼らが泳ぐことによって溶液の中に乱流的な渦を形成しますが、彼らをこの渦程度の大きさの微小な部屋に閉じ込めると回転方向が安定な定常的な渦が発生する事が報告されています。この部屋を連結させると、連結の距離に応じて渦同士の安定な回転方向が強磁性的になったり反強磁性的になる事を明らかにしました。バクテリアたちの渦形成の背後にある集団運動の性質が、幾何学形状を通じて渦の回転方向という特徴的でマクロな性質にあらわれるという興味深い結果です。超電導など凝縮系の物理で見られる渦同士の相互作用と似た点もあるため、背後にあるメカニズムの対称性なども気になる所です。

Hiroaki Ito, Masahiro Makuta, Yukinori Nishigami, and *Masatoshi Ichikawa,
Active materials integrated with actomyosin,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 101001/1-6 (2017).

概要: 骨格筋から抽出したアクチンとミオシンを封入したマイクロ液滴の界面の変形運動を、内部に分散させたビーズの運動と相関付けて観察しました。界面が激しく揺動するとき、中のビーズも激しく動く事から、界面に形成されているコルテックス(殻)が運動するというよりは、内部のアクトミオシン束の協同的な動きによって界面が激しく揺動している事が確認されました。今後はビーズの動きを解析し、内部構造の蛍光画像などと比較する事で変形運動の全容や制御方法が分かってくると見込んでいます。

*Yasuyuki Kimura,
Hydrodynamically Induced Collective Motion of Optically Driven Colloidal Particles on a Circular Path,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 101003/1-7 (2017).

概要: 自己推進微小物体のような典型的なアクティブマターにおいて、構成要素間の流体力学的相互作用に由来する特徴的な集団運動は、生物系および人工系の両方で観察されている。光により駆動される低レイノルズ数の1次元系におけるこのようなマイクロメーターサイズの粒子の動きを、それらの流体力学的相互作用により議論した。この系では、平衡状態で観察される「結晶」または「クラスター」に似た規則的な定常的な、あるいは動的な配置が出現する。空間的に限定されたシステム、および、異なる粒子サイズを混合した系において、流体力学的相互作用の変化に伴う、集合運動の変化が観察された。本研究に関連した光操作技術および流体力学的方程式についても議論した。 【市川正敏(リズム運動の議論)】

Masami Noda, Yue Ma, Yuko Yoshikawa, Tadayuki Imanaka, Toshiaki Mori, Masakazu Furuta, Tatsuaki Tsuruyama and Kenichi Yoshikawa,
A single-molecule assessment of the protective effect of DMSO against DNA double-strand breaks induced by photo-and g-ray-irradiation, and freezing,
Scientific Reports 7, 8557/ 1-8 (2017).

概要: DMSO(Dimethyl Sulfoxide)は、有機物を良く溶かし、水とも混和性の良い溶媒であり、細胞生物学や生化学分野で、水に不溶な物質の溶剤として頻繁に用いられている。本論文では、細胞にとっても最も重篤な障害であるDNA二本鎖切断に対してのDMSOの保護作用を定量的に評価ている。光やγ線による切断や、凍結による切断を、DNAの一分子計測の手法を活用して、定量的に評価。いずれの損傷源であっても、2%の濃度でDMSOの保護作用が最大になるといった、貴重な知見を得ることに成功。 【吉川研一:研究全体の統括】

Marcel Hörning, François Blanchard, Akihiro Isomura, andKenichi Yoshikawa,
Dynamics of spatiotemporal line defects and chaos control in complex excitable systems,
Scientific Reports 7, 7757/1-9 (2017).

概要: 心筋細動などの、通常よりも大きな振動数での興奮現象には、局所的なラセン波の発生などが起こることが知られている。本研究では、このような異常な興奮現象に密接に関連していると思われる、時空間の発振パターに現れる線状欠陥(line defect)について論じたものである。培養した心筋シートに生じるline defectの時空間特性を解析し、興奮波の融合や衝突を通して、defectがどのような動的な変化を示すのかを定量的に調べ、理論的なモデルを提唱した。【吉川研一:研究の基本的なアイデアの提案、理論解析】

Kento Yasuda, Yuto Hosaka, Mizuki Kuroda, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Elastic three-sphere microswimmer in a viscous fluid,
Journal of the Physical Sciety of Japan 86, 093801/1-4 (2017).

概要: 我々は、三つの球が調和的なバネで連結された弾性的なマイクロマシンを提案した。これにより、タンパク質や酵素などの内部自由度に関わる緩和ダイナミクスを考慮することが可能となった。このような弾性的なマイクロマシンの純粘性媒質中の遊泳挙動を解析したところ、自然長の変化の周波数が小さい場合には、バネの長さが常に自然長に追従するため、NajafiとGolestanianの結果に帰着することを示した。一方、自然長の変化の周波数が大きい場合には、自然長への緩和が起こらず、遊泳速度は逆に周波数に反比例することがわかった。これは、弾性的なマイクロマシンが粘性的な媒質中を遊泳する場合、ある種の「粘弾性的」な効果が見られることを示している。 【岡本隆一(理論解析)】

*Ryuichi Okamoto, Shigeyuki Komura, and Jean-Baptiste Fournier,
Dynamics of a bilayer membrane coupled to a two-dimensional cytoskeleton: Scale transfers of membrane deformations,
Physical Review E 96, 012416/1-10 (2017).

概要: スペクトリンのフィラメントから成る細胞骨格が脂質二重膜のダイナミクスに及ぼす影響について検討した。細胞骨格は二次元の弾性的な三角格子としてモデル化し、脂質二重膜の変形と結合するとした。細胞骨格としての三角格子は並進対称性が破れているため、異なる波数のモードが結合する。そのため、脂質二重膜の長波長のゆらぎが、三角格子の格子定数よりも短い波長のゆらぎを誘起することがわかった。また、逆に生体膜に短波長のゆらぎを与えることによって、長波長のゆらぎを誘起する可能性も示した。 【岡本隆一(理論解析)】

Aoi Yoshida, Shoto Tsuji, Hiroaki Taniguchi, Takahiro Kenmotsu, Koichiro Sadakane, *Kenichi Yoshikawa,
Manipulating Living Cells to Construct a 3D Single-Cell Assembly without an Artificial Scaffold,
Polymers 9, 319/2-10 (2017).

概要: 現在再生医療や組織工学の分野において、機能的な細胞組織体を人工的に創成できるような手法の開発が重要な課題となっている。これまで、細胞と細胞を接着させて三次元の組織体(organoid)の構築には、合成ゲルなどの人工的な足場が使われてきましたが、実際の再生医療に用いることは難しいとされてきた。本研究グループでは、光ピンセット技術と高分子混雑効果を活用することで、デキストラン(天然の水溶性高分子)溶液中で安定した三次元の細胞組織体を構築することのできる新手法を考案。その実験結果を報告するとともに、高分子のdepletion effectがどのように細胞間相互作用を変化させるのかといった点について理論的な考察を行った。 【吉川研一:研究全体の統括】

Isamu Sou, Ryuichi Okamoto, Shigeyuki Komura, and Jean Wolff,
Coexistences of lamellar phases in ternary surfactant solutions,
Soft Materials 15, 1-10 (2017).

概要: 我々は、MilnerとRouxによって提唱された現象論的な自由エネルギーに、二重膜の並進エントロピーを加えることによって、DDABと水の二成分系で観察されている周期の異なる二つのラメラ相の共存を理論的に再現した。ここでは、微視的な相互作用は全て第二ビリアル係数に含め、ヘルフリッヒの立体相互作用はビリアル展開における補正項として考慮した。引き続き、二種類の脂質(脂質Aと脂質B)と水から成る三成分系のモデルを提唱した。三成分間の三種類の相互作用を変化させると、様々なタイプの三角相図が得られることがわかった。 【岡本隆一(理論解析)】

Daigo Yamamoto, Ryota Yamamoto, Takahiro Kozaki, Akihisa Shioi, Syuji Fujii and *Kenichi Yoshikawa,
Periodic Motions of Solid particles with Various Morphology under a DC Electrostatic Field,
Chemistry Letters 46, 1470-1472 (2017).

概要: 界面活性剤を溶存させた輸送中に、針電極対による定常的直流電位印加条件下で生じる、プラスチック(polystyrene)のミクロ粒子が示す運動パターンを報告した論文。プラスチック粒子の集合体の形状に依存して、自転や公転運動などが生じることを見出している。 【吉川研一:研究構想の提案、実験結果の解析】

Keisuke Mae, Hidetoshi Toyama, Erika Okita Nawa, Daigo Yamamoto, Akihisa Shioi, Yongjun Chen, *Kenichi Yoshikawa, Fumiyuki Toshimitsu, Naotoshi Nakashima and Kazunari Matsuda,
Self-Organized Micro-Spiral of Single-Walled Carbon Nanotubes,
Scientific Reports 7, 5267/1-12 (2017).

概要: カーボンナノチューブ(SWNT)を基板上、マイクロメータスケールのラセンや同心円の形状に揃えることが可能となったことを報告した論文。溶媒に分散させ、ガラスのミクロビーズを静置すると、いわゆるcoffee ring効果により、このような特異的な構造が自発的に生成する。非線形反応拡散方程式を援用して、自律的なミクロ構造が生成するメカニズムについても議論を行った。 【吉川研一:実験計画の発案と、秩序構造生成のメカニズムの議論】

Yuta Shimizu, Yuko Yoshikawa, Takahiro Kenmotsu, Seiji Komeda and *Kenichi Yoshikawa,
Conformational transition of DNA by dinuclear Pt(II) complexes causes cooperative inhibition of gene expression,
Chemical Physics Letters 678, 123-129 (2017).

概要: 現在、がんの化学療法で最も良く用いられている薬物の一つのCisplatinに代わり、より治療効果が高くなると期待されている白金複核錯体について、それがDNAの高次構造を緩く凝縮させる効果があることを解明した論文。論文では、この高次構造転移が、薬物がある閾値濃度以上で活性が高くなる効果、すなわち、協同効果を引き起こしていることを明らかにしている。 【研究全体の統括】

Hideo Shindou, Hideto Koso, Junko Sasak, Hiroki Nakanishi, Hiroshi Sagara,h Koh M. Nakagawa, Yoshikazu Takahashi, Daisuke Hishikawa, Yoshiko Iizuka-Hishikawa, Fuyuki Tokumasu, Hiroshi Noguchi, Sumiko Watanabe, Takehiko Sasaki, and Takao Shimizu,
Docosahexaenoic acid preserves visual function by maintaining correct disc morphology in retinal photoreceptor cells,
Journal of Biological Chemistry 292, 12054-12064 (2017).

概要: 光を受容する網膜視細胞に置いて、ドコサヘキサエン酸(DHA)の役割について研究した。DHA含有リン脂質生合成酵素(LPAAT3)欠損マウスでは視細胞内のディスク構造が破壊されることから、膜構造形成にDHAが重要な役割を担っていることを明らかにした。

Yuto Hosaka, Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, *Shigeyuki Komura,
Lateral diffusion induced by active proteins in a biomembrane,
Physical Review E 95, 052407/1-10 (2017).

概要: 二次元流体膜中のアクティブなタンパク質によって誘起される側方拡散を理論的に議論した。アクテイブなタンパク質は力双極子としてモデル化し、生体膜の流体力学は周囲の溶媒の存在も考慮した。その結果、受身粒子の拡散係数のサイズ依存性は様々な漸近的な振る舞いを示すことがわかった。 【岡本隆一(理論解析)】

Kanta Tsumoto and *Kenichi Yoshikawa,
The Aqueous Two Phase System (ATPS) Deserves Plausible Real-World Modeling for the Structure and Function of Living Cells,
MRS Advances 2, 2407-2413 (2017).

概要: 構造の異なる水溶性の高分子の水溶液中では、水/水の相分離が生じることがしられている(水性二相系、ATPS)。この相分離点近傍では、細胞サイズの液滴が安定化し、共存する分子種の局在化を引き起こすことを私達は明らかにしてきている。本論文では、PEG/dextran系を中心にして、DNAやたんぱく質などがどのような局在化を起こすのかを、実際の実験結果をもとに報告。さらに、高分子のdepletion効果を取り入れて、その特徴的な分配現象についても理論的な考察を行っている。 【吉川研一:研究全体の統括】

Naoko Ueno, Taisuke Banno, Arisa Asami, Yuki Kazayama, Yuya Morimoto, Toshihisa Osaki, Shoji Takeuchi, Hiroyuki Kitahata, *Taro Toyota,
Self-propelled motion of monodisperse underwater oil droplets formed by a microfluidic device,
Langmuir 33, 5393-5397 (2017).

概要: 界面活性剤水溶液中を駆動する油滴について,粒径を均一にして作製するマイクロ流体デバイスを開発した。これにより,油滴のサイズおよび界面活性剤濃度が駆動する油滴の速さに与える影響を調べ,その依存性が,マランゴニ効果のみならず,自発乳化によってもたらされるエネルギーの寄与にあることを示唆する結果を得た。 【北畑裕之:油滴の駆動機構に関する議論】

Hiroshi Noguchi and Jean-Baptiste Fournier,
Membrane structure formation induced by two types of banana-shaped proteins,
Soft Matter 13, 4099-4111 (2017).

概要: 2種類のバナナ状タンパク質の吸着による生体膜の構造変化を研究した。2種類のバナナ状タンパク質はドメインに沿って逆向きで同じ強度の自発曲率を持つ場合、周期的なヒダ状の構造を形成されることなどが明らかとなった。また、シミュレーション結果はFournierによるガウス近似を用いた解析的な予想とよい一致を示す。

Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Swimmer-microrheology,
Journal of the Physical Society of Japan 86, 043801/1-4 (2017).

概要: ソフトマターのような粘弾性体中を遊泳するマイクロマシン(スイマー)の動作機構について調べ、スイマーの遊泳速度とソフトマターの粘性率や弾性率を結びつける関係式を理論的に導出した。この関係式に基づくと、ソフトマター中のスイマーの運動では「ホタテ貝の定理」が破れることや、スイマー自身の構造非対称性が重要であることが明らかになった。スイマーを用いて粘性や弾性を調べる新しい測定概念は「スイマー・マイクロレオロジー」と命名され、本研究によりその基本原理が与えられた。 【Ryuichi Okamoto:理論解析、水野大介:実験に関する議論】

Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Anomalous diffusion in viscoelastic media with active force dipoles,
Physical Review E 95, 032417/1-14 (2017).

概要: アクティブな力双極子を有する粘弾性体中のブラウン運動について検討した。粘弾性体は二流体モデルで記述し、タンパク質を模倣したアクティブな力双極子の相関は特徴的な緩和時間をもつとした。プローブ粒子の平均二乗変位を計算した結果、熱ゆらぎのみ存在する場合、平均二乗変位は時間の0乗から1乗の間で変化することを求めた。一方、アクティブな力双極子によって、平均二乗変位は時間の0乗から2乗の間の全ての異常拡散が起こることを導いた。我々の結果は、近年の細胞中の異常拡散の振る舞いを適切に説明しており、生きている細胞と死んだ細胞では異常拡散のメカニズムが異なることが明らかになった。 【Ryuichi Okamoto:理論解析、水野大介:実験に関する議論】

Swaminath Bharadwaj, *Palakurissi B. Sunil Kumar, Shigeyuki Komura, Abhijit P. Deshpande,
Spherically symmetric solvent is sufficient to explain lower critical solution temperature in polymer solutions,
Macromolecular Theory and Simulations 26, 1600073/1-11 (2017).

概要: 両親媒性ビーズと疎水性ビーズを交互に配置した高分子の分子動力学シミュレーションを行い、温度の変化と共にコイル・グロビュール転移を起こすことを示した。このような振る舞いは、KolomeiskyとWidomの疎水性相互作用のモデルを使っても一般的に説明できることがわかった。

*Tomo Kurimura, Yoshiko Takenaka, Satoru Kidoaki, and *Masatoshi Ichikawa,
Fabrication of gold microwires by drying goldnanorods suspensions,
Advanced Materials Interfaces 1601125, 1-5 (2017).

概要: 机にこぼしたコーヒー液滴を放置しておくと輪ジミが出来ます。この輪ジミが出来る原理を応用する事で、金ナノロッドの分散溶液から金ナノロッドが集合した細線を自己組織的に作り出す事に成功しました。コロイド粒子の分散溶液が乾燥する時には、一般的に輪ジミが生成されます。この様な不均一な乾燥パターンは、インクジェット印刷や塗布工程などの工業プロセスでは大きな問題となるため、その解決方法が盛んに研究されています。本研究はその乾燥プロセスを制御する事で、一般的な輪ジミから垂直方向に延びる金ナノロッドの集合細線を作る事に成功しました。更に、細線の始点を制御する事や地点間を結ぶ方法を示したほか、実際に電流が流れる事も確認しました。

Kento Yasuda, Ryuichi Okamoto, *Shigeyuki Komura, and Alexander S. Mikhailov,
Localization and diffusion of tracer particles in viscoelastic media with active force dipoles,
EPL 117, 38001/1-7 (2017).

概要: 二流体モデルを用いて、粘弾性体中のトレーサー粒子のダイナミクスについて検討した。ここでは、非熱的なランダムな力は力双極子の形で考慮して、弾性成分と流体成分の両方に働くとした。その結果、拡散係数の増加を定量的に評価することができた。我々の計算結果は近年の実験結果を説明する。 【Ryuichi Okamoto:理論解析、水野大介:実験に関する議論】

Rinko Kubota, Yusuke Yamashita, Takahiro Kenmotsu, Yuko Yoshikawa, Kenji Yoshida, Yoshiaki Watanabe, Tadayuki Imanaka and *Kenichi Yoshikawa,
Double-Strand Breaks in Genome-Sized DNA Caused by Ultrasound,
ChemPhysChem 18, 959-964 (2017).

概要: 細胞にとって最も重篤な作用を及ぼすDNA二本鎖切断が超音波(30kHz)でどのように引き起こされるのかを,パルス波の超音波照射条件下で定量的に計測した論文.パルスの幅と間隔を適切にとると,DNA二本鎖損傷を最小化することが可能であることを明らかにした 【吉川研一:研究全体の統括】

Takuro Itoh, *Taro Toyota, Hiroyuki Higuchi, Michio M. Matsushita, Kentaro Suzuki, and *Tadashi Sugawara,
Cycle of charge carrier states with formation and extinction of a floating gate in an ambipolar tetracyanoquaterthienoquinoid-based field-effect transistor,
Chemical Physics Letters 671, 71-77 (2017).

概要: 双極性半導体として機能するTCT4Q(テトラシアノテトラチエノキノイド)からなる有機FETの室温でのIV特性には、印加されたゲート電位をバイアスストレスとして、その閾値電位が速やかにシフトすると言う特徴がある。この挙動は、ゲート電位印可によって生じたキャリアが、結晶内に速やかにトラップされることであると考えられる。キャリアのトラップおよび脱トラップの過程を、種々の温度で詳細に観察したところ、キャリアのトラップ、捕捉キャリアによるフローティングゲートの形成、逆電荷のキャリアの出現、捕捉されたキャリアと逆符号のキャリア間の対消滅という四つのステージを持ったサイクルが繰り返されていることを確認した。 

Tomohiro G. Noguchi, *Yasutaka Iwashita, and Yasuyuki Kimura,
Dependence of the Internal Structure on Water/Particle Volume Ratio in an Amphiphilic Janus Particle–Water–Oil Ternary System: From Micelle-like Clusters to Emulsions of Spherical Droplets,
Langmuir 33, 1030-1036 (2017).

概要: 親水性および疎水性半球からなる両親媒性ヤヌス粒子(AJP)は、最も単純な異方性コロイドの1つであり、均質な表面特性を有する粒子よりも高い表面活性を示す。その結果、AJP、水および油の三元系は、粒子のヤヌス構造および系組成に依存する内部構造を有する非常に安定なピッカリングエマルジョンを形成することができる。しかし、これらの構造の詳細は、Janusの特性が直接反映されると期待される少数液相とAJPの量が同じくらいの組成範囲では、十分に研究されてはいない。本研究では、粒子と少量の液相、水の体積比を2桁の範囲変化させ、粒子サイズの分解能で形成される構造を観察した。水の体積比がヤヌス粒子の体積比よりも小さい場合、粒子の親水性半球間の毛細管相互作用により、粒子の親水性側が内側に向いたミセル様クラスターを形成する。水分量が増加すると、これらのクラスターは棒状形態に成長する。水の体積が粒子の体積を超えると、液体 - 液体界面での粒子の表面活性のために、構造は球状の小滴、コロイド状の粒子からなるエマルジョン状態に相転移する。このように、体積分率の変化が三元系における構造形成のメカニズムを変化させ、自己組織化構造における大きな形態変化に粒子の異方性を反映することを見出した。

Seiji Komeda, Hiroki Yoneyama, Masako Uemura, Akira Muramatsu, Wakao Fukuda, Tadayuki Imanaka, Toshio Kanbe, Yuko Yoshikawa and *Kenichi Yoshikawa,
Specific Conformational Change in Giant DNA Caused by Anticancer Tetrazolato-Bridged Dinuclear Platinum(II) Complexes: Middle-Length Alkyl Substituents Exhibit Minimum Effect,
Inorganic Chemistry 56, 802–811 (2017).

概要: 次世代の抗がん剤の開発に向けて、その有力な候補として挙げられている物質群の白金複核錯体について、薬物のDNAの高次構造変化に対する作用が、高い抗がん活性の元となっていることを示した研究論文。DNA一分子計測が論文の柱となっています。 【吉川研一:DNA一分子観察の実験とその解析】

2016

T. V. Sachin Krishnan, Ryuichi Okamoto, and *Shigeyuki Komura,
Relaxation dynamics of a compressible bilayer vesicle containing highly viscous fluid,
Physical Review E 94, 062414/1-14 (2016).

概要: 圧縮性のある脂質二重膜の緩和ダイナミクスの詳細な解析を行い、特にベシクル内外の粘性率の非対称性の効果を調べた。自由エネルギーの解析の結果、脂質密度と膜曲率の幾何学的な結合により、長波長と中間的波長で起こる二種類の不安定性が存在することがわかった。特にベシクルの内側の粘性率が外側と比べて大きくなると、曲げモードとスリップモードのクロスオーバーが短波長側に大きくシフトすることがわかった。また、二重膜が不安定領域に近づくと、緩和ダイナミクスは著しく遅くなることを見つけた。

Masa Tsuchiya, Alessandro Giuliani, Midori Hashimoto, Jekaterina Erenpreisa and *Kenichi Yoshikawa,
Self-Organizing Global Gene Expression Regulated through Criticality: Mechanism of the Cell-Fate Change,
Plos One, 1-47 (2016).

概要: 発生初期の段階の細胞の遺伝子発現の網羅的解析に基づいて、遺伝子群の動向についての新しいモデルを提唱した論文。細胞集団そして単一細胞レベル、どちらの場合も、自己組織化臨界現象(Self-organized Criticality)を通して、2万程度の遺伝子が協同的にその発現レベルを変化させていることを示している。ゲノムDNAの高次構造転移が臨界現象と直接関連している可能性を議論 【吉川研一(実験データに基づくモデルの理論面での議論)】

Akira Muramatsu, Yuta Shimizu, Yuko Yoshikawa, Wakao Fukuda, Naoki Umezawa, Yuhei Horai, Tsunehiko Higuchi, Shinsuke Fujiwara, Tadayuki Imanaka and *Kenichi Yoshikawa,
Naturally occurring branched-chain polyamines induce a crosslinked meshwork structure in a giant DNA,
The Journal of Chemical Physics 145, 235103/1-7 (2016).

概要: 100℃近い熱水環境下で生育する好熱菌の体内で産生されている分岐型ポリアミンの、DNAの高次構造に対する作用を実験的に調べた。その結果、分岐型ポリアミンはDNA鎖の間の架橋構造を形成する傾向があることが、原子間力顕微鏡などによる計測で明らかとなった。それに対して、通常の細菌や動物細胞などに多量に存在する、直鎖型ポリアミン(spermidine, spermineなど)では、折り畳み転移を引き起こすよりも低い濃度領域では、DNA鎖間を平行配列させる。分岐型ポリアミンについての生物的な観点からの議論も行っている。

*Hayato Shiba, Yasunori Yamada, Takeshi Kawasaki, and Kang Kim,
Unveiling Dimensionality Dependence of Glassy Dynamics: 2D Infinite Fluctuation Eclipses Inherent Structural Relaxation,
Physical Review Letters 117, 245701/1-6 (2016).

概要: 大規模分子動力学計算を用いて、2次元と3次元のガラス動力学が根本的に異なることを示した。2次元では結晶におけるMermin-Wagnerの定理と同じ原理により、巨大な長波長音波振動が発生し、対数的に発散する熱振動振幅によって特徴づけられる。その由来は弾性極限におけるデバイ近似の次元依存性に他ならず、最大約1000万粒子数に及ぶ分子動力学の低周波領域の状態密度の周波数依存性の直接計算によってもその根拠が示された。この対数的に発散する巨大振動は、伝統的な密度場をベースとした緩和関数や動的不均一性によるガラス動力学の特徴づけに根本的な問題をもたらす。振動の影響を受けない協調再配置の動力学を特徴付ける関数の導入により、2次元系においても、ガラス的緩和固有の動力学を抽出することができる。 【宮崎 州正(議論と助言)】

*Tatsuaki Tsuruyama, Takuya Hiratsuka, Wulamujiang Aini, Takuro Nakamura,
STAT5A modulates chemokine receptor CCR6 expression and enhances pre-B cell growth in a CCL20-dependent manner. J cellular biochemistry.,
J Cell Biochem 117, 2630-2642 (2016).

概要: シグナル伝達分子STAT5Aは、自然免疫においてサイトカインシグナル伝達(Socs)遺伝子のサプレッサーを介してサイトカインに対するB細胞応答に寄与することが知られている。 しかしながら、ケモカインに対するB細胞応答におけるその直接の役割はほとんど理解されていなかった。 この研究では、自然免疫応答におけるSTAT5Aの役割を調べた。 STAT5AはC-Cモチーフ受容体6(Ccr6)の転写をアップレギュレートして、そのリガンドであるCCL20に対する応答を誘導することを見出した。 STAT5Aの転写活性は、インターフェロン活性化部位への結合を介して進行した。さらにリンパ球の未熟なタイプであるプレ-B細胞のゲノム中のCCR6プロモーター中のGASエレメントに結合することでSTAT5AおよびCCR6は、プレB細胞のCCL20依存性コロニー増殖を増加させた。 【平塚拓也:実験データの取得、ウラムジャンアイニ:論文執筆協力中村卓郎:実験手法の指導、実験データの分析、吉川研一:細胞内シグナル伝達の分析に関する助言】

Koh M. Nakagawa and *Hiroshi Noguchi,
Nonuniqueness of local stress of three-body potentials in molecular simulations,
Physical Review E 94, 053304/1-11 (2016).

概要: 古典分子動力学計算において2体力による局所応力をIrving-Kirkwood-Noll法を用いて求めることができる。多体力については2体力に分解して計算されるが、その分解法はまだ十分に確立されていない。我々は新しくForce Center Decomposition、Hybrid Decomposition という分解方法を提唱し、3体力についても不定性があることを示した。いずれも運動量, 角運動量保存を満たす局所応力テンソルを与えるが、得られる応力分布は分解法に大きく依存することが明らかとなった。

*Shunsuke F. Shimobayashi, Mafumi Hishida, Tomo Kurimura and Masatoshi Ichikawa,
Nanoscale hydration dynamics of DNA-lipid blend dry films: DNA-size dependency,
Physical Chemistry Chemical Physics 2016, 18, 31664-31669 (2016).

概要: DNA分子をその間に挟んだ脂質二分子膜のラメラを水和させた際の膨潤カイネティクスを高輝度小角X線散乱実験によって明らかにしました。これまでの研究で開発した、DNAなどの生体高分子を封入したリポソームを効率的に作成する実験手法における、リポソーム生成の初期過程にあたります。膨潤の初期過程ではDNAや膜が激しく、そして密になって運動しており、光学顕微鏡ではその動態の判別が付きませんでした。高エネルギー加速器研究所の高輝度X線を用いる事により、ミリ秒からの初期過程を明らかにすることが出来ました。DNA分子が持続長程度で短いときは単純な緩和を示しましたが、DNA分子が非常に長い場合は振動緩和の様な挙動を見せました。からまり合うDNAが示す粘弾性と水和のダイナミクスが相まってこの様な挙動になったと思われます。この研究により、DNAなどの生体分子を高効率にリポソームに封入する際の設計に物理的な指針を与える事が出来ました。 【菱田真史(X散乱測定実験と解析)、北畑裕之(実験協力)】

Jean Wolff, *Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Budding transition of asymmetric two-component lipid domains,
Physical Review E 94, 032406/1-8 (2016).

概要: 二重膜間で非対称な組成を持つ二成分脂質ドメインのバディングについて考察した。モデルではドメインの曲率弾性エネルギー、ドメインの境界で働く線エネルギー、二重膜の相分離エネルギーの三つの寄与を考慮した。また、それぞれの単層膜の自発曲率は、二種類の脂質分子の濃度差に対して線形的に依存するとした。相図を計算した結果、様々な共存状態が存在することがわかった。

Taisuke Banno, Arisa Asami, Naoko Ueno, Hiroyuki Kitahata, Yuki Koyano, Kouichi Asakura, *Taro Toyota,
Deformable self-propelled micro-object comprising underwater oil droplets,
Scientific Reports 6, 31292 (2016).

概要: 水中を変形しながら泳ぎ回るアメーバ様の動きをする細胞サイズの人工の油滴を創製しました。顕微鏡画像を用いた運動解析より、この油滴の運動機構は、油滴の後方で形成される強い流れ場と油滴内部の局所的な対流構造によって、速度変化の後に変形が誘起されるという新たな運動機構であることを推定しました。 【北畑裕之(運動の解析)】

Jerzy Górecki, Jonna N Gorecka, Bogdan Nowakowski, Hiroshi Ueno, Tatsuaki Tsuruyama and *Kenichi Yoshikawa,
Sensing Parameter of a Time Dependent Inflow with an Enzymatic Reaction,
Advances in Unconventional Computing 2, 85-104 (2016).

概要: 細胞は外部環境の経時的変化に応じて自律的に情報処理(演算)を行い、適切に応答することにより生命活動を維持している。この論文では、酵素反応が自律的な演算を行うことが可能であることを、新しい理論的なモデルのなかで示してきている。今回の出版は、「細胞の自律演算モデル」を単行本の中の分担執筆として一章をまとめたもの。 【吉川研一:非線形常微分によるモデル化、鶴山竜昭:生物の外部刺激に対する動的応答についの考察】

*Hiroshi Noguchi,
Construction of nuclear envelope shape by a high-genus vesicle with pore-size constraint,
Biophysical Journal 111, 824-831 (2016).

概要: 核膜は小胞体と繋がっているが、小胞体を除くと、高いトポロジー種数を持つストマトサイトと見なせる。この形状は核膜孔複合体による膜孔サイズの拘束だけでは形成されず、核質の浸透圧による核質体積の増加、核膜槽の体積の減少、核膜孔間の反発力などによって安定化させることができることを明らかにした。

Yuta Tamura and *Yasuyuki Kimura,
Two-dimensional assemblies of nematic colloids in homeotropic cells and their response to electric fields,
Soft Matter 12, 6817-6826 (2016).

概要: 液体のように位置の秩序はないが、方向の秩序を持つ異方性液体であるネマチック液晶(液晶ディスプレイに利用されている)中にミクロンサイズの粒子を分散させると異方的な相互作用が働く。本研究で用いた粒子間には、電気双極子間の相互作用と同じ形の相互作用が働いている。この異方的相互作用を利用すれば、異方的かつエネルギー的に安定なさまざまな構造体の作成が可能である。本研究は、光ピンセットで粒子を操作して、球状粒子系では、従来報告例のないさまざまな構造体の作成を行った。例えば、リング(多角形)、アルキメデスタイリングされた2次元格子、穴あき正方格子、カゴメ格子などの作成に成功した。また、電場により液晶の配向制御可能なことを利用して、作成された構造体を等方的に収縮させることにも成功した。その結果、最大5Vで20%(1次元的な長さで)の構造体の収縮を実現した。

Tomo Kurimura, Seori Mori, Masako Miki and *Kenichi Yoshikawa,
Rotary motion of a micro-solid particle under a stationary difference of electric potential,
The Journal of Chemical Physics 145, 034902/1-4 (2016).

概要: mm以下のスケールで、一対の針型電極を用いて直流電圧を印加すると、伝導度の低い油性媒質中、水滴が規則的な往復運動を引き起こすことについては、すでに我々のグループが報告してきている。本論文では、プラスチックのミクロ粒子が、自律的運動をするといった新規な実験結果を報告している。実際に、粒子は電極間で2ロールの公転運動を示すことを見出した。ミクロ水滴の場合は、水滴自体が電極近傍で荷電反転することが運動の駆動力であったが、プラスチック粒子の場合は電極間の場の輸送の流れが運動を引き起こしている。運動の様相については、簡単化した流体運動のモデルで、その運動モードを再現することに成功した。  【吉川研一(実験や解析を含めた研究のとりまとめ)、市川正敏(実験のアドバイス)】

Irwin Zaid and *Daisuke Mizuno,
Analytical Limit Distributions from Random Power-Law Interactions,
Physical Review Letters 117, 030602 (2016).

概要: 自然界は重力、静電気力、流体力学場、等々のべき的に減衰する相互作用で満ち溢れている。個々の相互作用を単純に数学的に足し合わせたときの統計分布は、個々の相互作用の分散が有限である時にはガウス分布に、分布の裾野がべき的に広がり発散する場合にはレビ分布と呼ばれる安定分布に収束することが期待される(中心極限定理)。しかしながら、3次元空間中にべき的な相互作用を引き起こす揺らぎの源が乱雑に分散している場合、レビとガウスの中間の多様な統計分布が観測される。我々は、この新しい物理的極限分布の特性関数(分布関数のフーリエ変換)の解析的な表現を見出した。

Soutaro Oda, Yoshitsugu Kubo, Chwen-Yang Shew and *Kenichi Yoshikawa,
Fluctuations induced transition of localization of granular objects caused by degrees of crowding,
Physica D 336, 39-46 (2016).

概要: 生命体は非平衡ゆらぎにより、自らの生命を創り出し、その活動を維持している。本研究では、「ゆらぎ」と「秩序構造」に着目し、サイズの異なる粒子の集団に外部から振動をあたえるといった実験を行った。その結果、粒子集団が空間的に閉じ込められた環境下で、粒子のサイズに応じて相分離して、閉鎖空間内に局在化することを発見した。空間内の混雑度が低い環境では大きな粒子が空間外部に、混雑度が高い場合には大きな粒子が空間内部に局在する。排除体積効果を取り込むことにより並進運動の自由度を求めて、系のエントロピーを理論的に計算した。その結果、実験で得られた粒子の局在条件を理論的に説明することが可能であることを示した。

Jerzy Górecki, Jonna N. Gorecka, Bogdan Nowakowski, Hiroshi Ueno and *Kenichi Yoshikawa,
How many enzyme molecules are needed for discrimination oriented applications?,
Physical Chemistry Chemical Physics 18, 20518-20527 (2016).

概要: Hill係数が2-3程度の弱い協同効果を示す酵素系の場合は、細胞内では、数ゆらぎの効果のために、on/off型のswitchingが起こりにくくなることが予想される。本研究では、基質などの分子数ゆらぎをとりいれて、細胞に対しての外部からの刺激がどのような応答を引き起こすかを理論及び数値実験により検証した。その結果、細胞内の酵素分子数が1000程度あるとスイッ チングを起こすことが可能になることを推定。

Takuya Hiratsuka, Yuji Takei, Rei Ohmori, Yuuki Imai, Makoto Ozeki, Keiji Tamaki, Hironori Haga, Takashi Nakamura, *Tatsuaki Tsuruyama,
ZFP521 contributes to pre-B-cell lymphomagenesis through modulation of the pre-B-cell receptor signaling pathway,
Oncogene 35, 3227-3238 (2016).

概要: マウスのレトロウイルスのZNF521遺伝子内挿入により同遺伝子の高発現が、プレB細胞性白血病を引き起こすことが明らかになった。この遺伝子高発現は、さらにプレB細胞の表面受容体に会合するBLNK、BTK、BANK1シグナル分子の高発現を引き起こし、ついで細胞増殖因子c-myc、サイクリンD3などの高発現をを引き起こすことで白血病を引き起こす一連のシグナルカスケードが明らかにされた。 【吉川研一(レトロウイルス挿入の部位のゆらぎによるzfp521の発現量への影響について示唆をうけた。次回論文で挿入部位のゆらぎについて共同報告する予定)】

Chika Tongu, Takahiro Kenmotsu, Yuko Yoshikawa, Anatoly A. Zinchenko, Ning Chen and *Kenichi Yoshikawa,
Divalent Cation Shrinks DNA but Inhibits its Compaction with Trivalent Cation,
The Journal of Chemical Physics 144, 205101/1-7 (2016).

概要: 蛍光顕微鏡によるDNA一分子観察の方法論を用い、ゲノムサイズDNA (T4 DNA 166 kbp)の高次構造変化を観察し、2価と3価のカチオンは、溶液中に単独で存在する場合は、DNAを凝縮させるように働くが、2価と3価が共存する場合は、お互いの寄与が競合し、DNAの凝縮を阻害することを明らかにした。また、本研究において、この多価カチオンによる競合効果について、対イオン凝縮理論に系全体の並進エントロピー利得を考慮した物理モデルを提案し、実験データの多価カチオン濃度依存性を再現できることを示した。

Hiroki Sakuta, Nobuyuki Magome, Yoshihito Mori and *Kenichi Yoshikawa,
Negative/Positive Chemotaxis of a Droplet: Dynamic Response to a Stimulant Gas,
Applied Physics Letters 108, 203703/1-4 (2016).

概要: 生物が示す走化性に注目して、ガスに対して同様の振る舞いを見せる液滴系を発見した。酸性であるオレイン酸のcmサイズの液滴に塩基性のアンモニアをガス刺激として与えると液滴はガス刺激から逃げる方向に運動した(負の走化性)。オレイン酸とアンモニアの間で生じる酸塩基反応でオレイン酸がイオン化されることで界面活性を示し、界面張力が場所特異的に変化することで生じるマランゴニ流により運動が誘起されていると考えられる。また、塩基性のアニリン液滴と酸性の塩酸ガスによる系において液滴はガスに引き付けられる方向に運動した(正の走化性)。このように、生物の走化性を模倣するモデル系としてガス刺激を感知して運動する液滴系の実験で興味深い結果が得られた。

Kento Yasuda, *Shigeyuki Komura, and Ryuichi Okamoto,
Dynamics of a membrane interacting with an active wall,
Physical Review E 93, 052407/1-12 (2016).

概要: ランダムな速度を発生するアクティブな壁と相互作用する生体膜のブラウン運動の解析を行った。壁がランダムな速度を発生する場合、平均二乗変位が時間に比例する時間領域が存在することがわかった。さらにアクティブな壁が特徴的な時間スケールを有する場合、平均二乗変位が時間に比例する領域がさらに拡大することもわかった。

*Ryuichi Okamoto, Naofumi Shimokawa, and Shigeyuki Komura,
Nano-domain formation in charged membranes: Beyond the Debye-Huckel approximation,
EPL 114, 28002/1-6 (2016).

概要: 荷電脂質と中性脂質の混合膜におけるミクロ相分離の可能性について議論した。我々はデバイ・ヒュッケル近似を使わずに、静的な構造関数を求めた。解析の結果、ミクロ相分離が起こる場合の特徴的な波長は数十ナノメートルに留まることがわかり、これまでに光学顕微鏡でミクロ相分離が観察できない理由を指摘した。

Shu Hashimoto, Aoi Yoshida, Taeko Ohta, Hiroaki Taniguchi, Koichiro Sadakane and *Kenichi Yoshikawa,
Formation of Stable Cell-Cell Contact without a Solid/Gel Scaffold: Non-invasive Manipulation by Laser under Depletion Interaction with a Polymer,
Chemical Physics Letters 655-656, 11-16 (2016).

概要: 従来の細胞生物学では必要不可欠とされていたゲルなどの固体基盤を用いることなく3次元細胞集合体を安定に構築することに成功した。高分子溶液中の任意の細胞をレーザーピンセット技術により、同溶液中の他の細胞の下へと非接触で搬送し、数分間放置すると、高分子が存在しない環境でもその接着を維持するという事が確認された。本研究では、この細胞接着のメカニズムについて接着面の細胞膜上の物質の自発的な転移の観点から考察している。

*Hiroshi Noguchi,
Shape deformation of lipid membranes by banana-shaped protein rods: Comparison with isotropic inclusions and membrane rupture,
Physical Review E 93, 052404/1-10 (2016).

概要: バナナ状タンパク質の吸着による生体膜の変形を数値計算を用いて研究した。タンパク質の弾性を上げたり、膜端の線張力を下げたりすると、タンパク質による膜変形が膜の破裂を起こし、高いトポロジー種数を持つトロイド状のベシクルを形成することなどを明らかにした。

*Ryuichi Okamoto, Yuichi Kanemori, Shigeyuki Komura, and Jean-Baptiste Fournier,
Relaxation dynamics of two-component fluid bilayer membranes,
The European Physical Journal E 39, 52/1-21 (2016).

概要: 二種類の脂質からなる二重膜を「曲げ弾性をもった二成分流体」としてモデル化し、その動的挙動を調べた。二成分に拡張したことによって、以前に得られていた緩和モードに加えて、新たに相互拡散に起因する二つの新たな緩和モードが現れる。特に、相分離臨界点近くにおいてはこれらのモードが他のモードに比べてはるかに遅い緩和モードとなることがわかった。

2017

*Kentaro Suzuki, and Tadashi Sugawara,
Phototaxis of oil droplets comprising a caged fatty acid tightly linked to internal convection,
ChemPhysChem 17, 2300-2303 (2016).

概要: 紫外線照射による光分解反応によってオレイン酸を生じるケージドオレイン酸からなる粒径100 um程度の油滴に、一定方向から紫外線を照射したところ、油滴が紫外線に向かって自己駆動することを見出した。これは、照射された紫外線が油滴を透過できないため、光分解反応によるオレイン酸の生成が、紫外線照射面のみに限られるので、照射面でのみ表面張力の減少がおこることで、油滴を動かすマランゴニ流が水相に生じているためであると解釈される。さらに、継続して紫外線を照射していると、油滴の駆動速度に非線形な加速が見られることを見出した。これは、十分に化学反応が進行すると油滴内部に対流を生じ、これが油滴表面の界面活性剤濃度勾配を増強し、マランゴニ効果を増大させるためであると理解される。 【今井正幸(流体力学に関する知識提供)、北畑裕之(マランゴニ効果に関する情報提供)、豊田太郎(自己駆動油滴に関する情報提供)】

2016

*Naofumi Shimokawa, Hiroki Himeno, Tsutomu Hamada, Masahiro Takagi, Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Phase diagrams and ordering in charged membranes: Binary mixtures of charged and neutral lipids,
The Journal of Physical Chemistry B 120, 6358-6367 (2016).

概要: 荷電脂質と中性脂質の二成分混合膜の巨視的な相分離について議論した。具体的には飽和脂質と不飽和脂質の組み合わせを考え、電荷をもつ頭部が飽和脂質に存在する場合と、不飽和脂質に存在する場合を明確に区別するモデルを構築した。自由エネルギーを用いて相図を計算した結果、頭部電荷と尾部の組み合わせが異なると、荷電脂質としても大きく相挙動が異なることがわかった。 【濱田勉(実験を担当)】

Takehiro Jimbo, Yuka Sakuma, Naohito Urakami, Primož Ziherl, and *Masayuki Imai,
Role of inverse-Cone-Shape Lipids in Temperature-Controlled Self-Reproduction of Binary Vesicles,
Biophysical Journal 110, 1551-1562 (2016).

概要: 温度変化により球状のベシクルが変形し分裂する過程を繰り返すモデル自己生産ベシクルの過程を3次元解析した。その機構を分子の形状と2分子膜内での分布が連携することにより回帰性のある変形や分裂が観察されることを膜弾性モデルを基に議論した。 【佐久間由香(現象の発見と研究計画の立案)】

Tomo Kurimura and *Masatoshi Ichikawa,
Noise-supported actuator: Coherent resonance in the oscillations of a micrometersized object under a direct current-voltage,
Applied Physics Letters 108, 144101/1-4 (2016).

概要: ノイズやゆらぎを利用して効果的に駆動するアクチュエータの動作原理を実験で確認しました。これまでの研究で、対向針電極間に直流の電圧を掛けた時に、その間に浮かぶ物体が往復運動をしめす事を報告しています。このとき、電圧ノイズによって往復運動領域が拡がり、より低電圧からの駆動が起きる事を発見しました。本論文では、ホワイトノイズの印加によって往復運動が誘起される事や、その効率が最大となるホワイトノイズ強度が有る事(共鳴的)、誘起された運動の周波数がホワイトノイズ帯域の端に依るもので無い事などを実験で確認しました。これらの結果を基に、coherent resonance (確率共鳴 stochastic resonanceの仲間)と呼ばれる、リミットサイクル振動子とノイズとの共鳴現象であると結論付けました。この原理を応用すれば、生体分子モータの様に熱ゆらぎが相対的に大きくなるナノメートルの世界でも規則的な運動を効率的に取り出せる機構の設計ができます。 【中尾裕也(議論、アドバイス) 吉川研一(議論)】

Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and *Takashi Taniguchi,
Direct observations of transition dynamics from macro- to micro-phase separation in asymmetric lipid bilayers induced by externally added glycolipids,
Europhysics Letters 113, Number 5, 56005-p1-p6 (2016).

概要: 細胞膜の非対称性を真似た系を作ると、マクロ相分離がミクロ相分離に転移する事を実験とシミュレーションから明らかにしました。近年、脂質膜系での相分離現象が盛んに研究されています。しかし、細胞膜ではミクロ相分離状態などだと推定されている条件でも、モデル膜系ではマクロ相分離になる事が殆どで、その原因は不明でした。先行研究として、膜タンパク質の添加によるミクロ化が報告されています。この様な系で、細胞膜の非対称性に着目し、糖脂質ガングリオシドのGM1を相分離したベシクルに添加すると、水と油の様にマクロ相分離状態になっていたベシクル膜の相分離が、帯形状を経由して分散したミクロドメインに変化していく事を発見しました。通常の相分離カイネティクスを逆回しにした過程となっています。この逆回しのプロセスの動力学過程の研究はこれまでに無いものでした。ガングリオシドの添加が膜の自発曲率を上昇させるというモデルを基に、3次元に浮かぶ2次元液膜小胞のTDGLシミュレーションを行うと、実験の定性的傾向が再現される事が確認されました。本研究自体は形状と相分離が膜の自発曲率を介して強くカップルした系に特有の面白い現象に関する報告であり、直接的な意味での生化学的な役割は良く分かっていませんが、細胞膜の非対称性を真似るとラフトの様にミクロな相分離になったというその関連には興味が沸きます。 【谷口貴志(シミュレーション)、吉川研一(実験協力)】

*John J. Molina, Kotaro Otomura, Hayato Shiba, Hideki Kobayashi, Masaki Sano, and Ryoichi Yamamoto,
Rheological evaluation of colloidal dispersions using the smoothed profile method: formulation and applications,
Journal of Fluid Mechanics 792, 590-619 (2016).

概要: コロイド分散系のレオロジー特性を、粒子間の流体力学相互作用を直接ナビエストークス方程式の数値シミュレーションで評価するための方法論の大幅な拡 張を行った。具体的には、均一なせん断流を実現する Lees-Edwards 周期境界条件の下で、 粒子分散系のレオロジー特性を評価するための定式化を行った。この拡張により、系の粘性を調べる際に一般的な定常(DC)せん断流だけではなく、粘弾性を調べる際に必要となる振動せん断流をも実現することが可能となったのみならず、系の全応力や任意の場所に おける局所応力など、レオロジー評価に必要な全ての物理量を直接数値計算で求めることが 可能となった。

*Hiroshi Noguchi,
Membrane tubule formation by banana-shaped proteins with or without transient network structure,
Scientific Reports 6, 20935 (2016).

概要: バナナ状タンパク質による膜チューブ形成のダイナミクスをメッシュレス膜模型によるシミューレションを用いて研究した。タンパク質に沿った自発曲率に加えて、側方に弱い自発曲率を加えることでチューブ形成のダイナミクスが大きく変わることが分かった。平衡状態の性質はそれほど変化しないが、集合途中にみられるネットワーク構造の安定性が変わることによって、チューブ形成速度が大きく変わる。側方に負の自発曲率を持つ場合、膜全体に広がったネットワークを形成し、ネットワークからチューブが伸びる。それに対して、側方に正の自発曲率を持つ場合は、ネットワークは形成せずに、多くの短いチューブが形成される。このように、側方方向の相互作用も無視できないことが明らかとなった。

Atsuji Kodama, Yuka Sakuma, *Masayuki Imai, Yutaka Oya, Toshihiro Kawakatsu, Nicolas Puff, and Miglena I. Angelova,
Migration of phospholipid vesicles in response to OH- stimuli,
Soft Matter 12, 2877-2886 (2016).

概要: リン脂質ベシクルん水酸化物イオンをインジェクションすると、その濃度勾配の高い方向にベシクルが駆動する現象を見出した。これは、ベシクル表面で水酸化物イオンにより脂質が加水分解され、それによる表面エネルギーの勾配でベシクルの周りに流れができ、ベシクルが動くためであると考えられる。 【佐久間由香(現象の発見と実験計画の立案)】

Hayato Shiba, Hiroshi Noguchi, and *Jean-Baptiste Fournier,
Monte Carlo study of the frame, fluctuation and internal tensions of fluctuating membranes with fixed area,
Soft Matter 12, 2373-2380 (2016).

概要: 弾性脂質膜のゆらぎを記述する自由エネルギー汎関数として、1973年に導入されたヘルフリッヒ自由エネルギーがよく知られている。ここで重要な弾性係数である表面張力には、複数の定義が存在する。揺らぐ膜面の微分幾何的な曲面に沿った計量によって計られた面積変化によって生ずる張力を「内部張力」と呼ぶ。一方、実際に我々が実験を行うときに制御可能な面積は、実面積ではなく、平らな射影されたフレームの面積 (別名「射影面積」)である。射影面積に対して共役な表面張力を別に定義することができ るが、これはとりもなおさず力学的に測定される「力学張力」である。これらの間には明確に差があるはずであり、脂質膜面のゆらぎを実際に支配している張力(「ゆらぎ応力」)が どちらであるのかをここでは問題として取り上げた。本研究では、理想膜面を記 述できる格子膜模型を構築し、内部張力、力学張力の双方を正確に固定可能なモンテカルロ シミュレーションの枠組みを構築した。曲率エネルギー汎関数に用いる膜面曲率の定義として、(A) モンジュ近似に限定されたガウス近似のゆらぎを自明に実現する線形曲率公式 (B) 微分幾何的に膜面の曲率を記述する非線形曲率、の双方を用い比較したところ、(A) においてはゆらぎ応力は理論の予言通り内部応力と一致し、(B) においてはゆらぎ応力は力学応力に精度の範囲で一致した。すなわち、膜面ゆらぎは測定可能な力学張力によって支配され、測定不可能 である内部張力は役割を果たさないことが示唆された。 【芝隼人(研究全体の提案と数値計算)、野口博司(モデルの発案と数値計算)】

Yuki Oda, Koichiro Sadakane, Yuko Yoshikawa, Tadayuki Imanaka, Kingo Takiguchi, Masahito Hayashi, Takahiro Kenmotsu and *Kenichi Yoshikawa,
Highly Concentrated Ethanol Solution Behaves as a Good Solvent for DNA as Revealed by Single-Molecule Observation,
ChemPhysChem 17(4), 471-473 (2016).

概要: ethanol水溶液は、細胞からDNAを取り出す際の溶媒として、分子生物学領域では極めて一般的に用いられている。これは、ethanol水溶液が、DNAを効率よく沈殿させる性質を有するからである。本研究では、ethanol濃度がたかくなり、70%以上になると、凝縮状態のDNAが脱凝縮を起こして、コイル状態の形態となり、溶液に再溶解する現象を見出した。高濃度のethanol溶液では、水とアルコール分子がnmレベルのクラスターを作っており、これが、高度に荷電を帯びたDNA分子の脱凝縮を引き起こしている可能性について、議論を行った。

Yukinori Nishigami, *Hiroaki Ito, Seiji Sonobe, and *Masatoshi Ichikawa,
Non-periodic oscillatory deformation of an actomyosin microdroplet encapsulated within a lipid interface,
Scientific Reports 6, 18964/1-11 (2016).

概要: アクティブにゆらぎつつ形を変える人工細胞的なものを創りました。ミクロ液滴内にアメーバのアクチンとミオシンを封入したものです。液滴内部表面に再構成させたcortexが収縮を始める前、液滴内部に自律的に形成されたアクトミオシンの構造によって界面が応力を受け、それが液滴表面の激しいゆらぎになっている事を発見しました。この界面ゆらぎは熱揺らぎよりも遥かに大きいもので、分子モーターの力生成と自己組織化が生み出した、非平衡の界面ゆらぎです。本論文ではこの界面ゆらぎのパワースペクトルやサイズ依存性等を調べ、その性質を明らかにしました。大まかには、大きい振幅のへこみ変形がアンサンブル平均としてランダムな場所、時間で発生し、その時間相関が10sのオーダーでした。また、興味深い事に内部の構造体の対称性が大きく破れると、それに応じて界面ゆらぎの頻度や振幅も局在化し、特異な変形を見せました。この界面ゆらぎと変形を更に推し進める事で、細胞運動を再現するモデルを作る事が出来ると期待できます。 【義永那津人(解析やモデルに関するアドバイス)、濵田勉(実験に関するアドバイス)、永井健(解析やモデルに関するアドバイス)】

Yuta Tamura and *Yasuyuki Kimura,
Fabrication of ring assemblies of nematic colloids and their electric response,
Applied Physics Letters 108, 011903 (2016).

概要: ネマチック液晶中に分散したミクロンサイズのコロイド粒子は液晶の配向欠陥となり、液晶の弾性エネルギーを増大させる。このため、複数のコロイド粒子間には弾性ひずみに起因した長距離かつ異方的な相互作用が働く。本研究では、セル表面および粒子表面での液晶配向が垂直な状況を用意し、粒子に点欠陥が付随するダイポール型粒子-欠陥対を用いて、光ピンセットによる粒子操作により新しい構造体の作成を行った。ダイポール型粒子を反平行に配列させることで任意の長さの鎖状構造を作成した。この鎖状構造をもとに4,6,8,10角形の環状構造を作成した。さらに、環状多角形の1次元列、および8角形からなる2次元格子(4-8-8アルキメデスタイル)構造を作成した。これらは特定の方向における粒子間の斥力を反映して、非最密な構造体が準安定に形成される点で興味深い。また、作成した構造体が、10V程度の電場下で1次元サイズが20%収縮することを見出した。

2015

*Hiroshi Noguchi,
Shape transitions of high-genus fluid vesicles,
EPL 112, 58004/1-6 (2015).

概要: 動的三角格子模型シミュレーションを用いて、大きなトポロジー種数 (genus) の持つベシクルの形状を研究した。genus-3以上においては、穴の配置の変化によって形態変化が連続的な変化から不連続な転移に変わることが明らかとなった。体積の比較的大きい場合は、ストマトサイトから穴が一列に並んだ円盤状へ変化は連続的だが、体積の小さい場合は、多面体状ストマトサイトからの不連続な転移となる。このように穴の配置が形態の安定性に大きな影響を持つ。

*Hiroaki Ito, Yukinori Nishigami, Seiji Sonobe, and *Masatoshi Ichikawa,
Wrinkling of a spherical lipid interface induced by actomyosin cortex,
Physical Review E 92, 062711/1-8 (2015).

概要: 脂質一分子膜を備えた油中水滴の中に actomyosin を封入し、その膜の内側に cortex を再構成させました。時間の経過と共に actomyosin は ATP を消費していきます。すると、ミオシン周りのATPが次第に枯渇し、ミオシンがアクチンフィラメントと結合してる時間が伸びていきます。そのとき、ミオシンは実質的な cross linker となり、cortex内部に応力を溜め込んでいきます。この応力によってcortexは面方向に収縮します。本系でもそれが「しわ (wringkling)」の発生原因になっていると考えました。cortexの収縮力、界面張力や曲げ剛性を入れたモデルによってwringklingの要件を計算し、実験結果にフィットしました。その結果、モデルは実験で出てきたサイズ・曲率依存性のスケーリングを良く説明し、フィッティングパラメータとして出てきたcortexの実効厚さ約200nmは、実験の蛍光像や過去のcortexの報告と良い一致を示しました。液滴の曲率という細胞サイズの微小空間に、変形形状が依存するという興味深い結果が得られました。 【義永那津人(解析やモデルに関するアドバイス)、濵田勉(実験に関するアドバイス)、永井健(解析やモデルに関するアドバイス)】

Takuma Hoshino, Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Correlated lateral phase separations in stacks of lipid membranes,
Journal of Chemical Physics 143, 243124/1-9 (2015).

概要: 近年、多成分脂質二重膜が三次元的に積み重なった系における相分離の実験が行われ、ドメインが円柱状に積層することが報告された。我々は、積層した二次元イジングモデルを用いて、異なる膜の相分離の連動性を調べた。各脂質膜で脂質分子の組成は保存するため、川崎ダイナミクスを用いたモンテ・カルロシミューレーションを行い、相分離ドメインの構造について検討した。その結果、膜間に有限の相互作用が存在すると、熱平衡状態においてドメインは必ず連結することが明らかになった。また、我々はドメインの成長ダイナミクスにも着目し、膜間に働く相互作用による成長指数の変化を検討した。その結果、温度クエンチの深さが膜間相互作用の増加とともに深くなることで、膜の相分離が加速されることがわかった。またクエンチの深さを一定にすると、系は二次元から三次元へのクロスオーバー現象を示し、成長指数はむしろ減少することを示した。

Tomohiro Yanao, Sosuke Sano and *Kenichi Yoshikawa,
Chiral selection in wrapping, crossover, and braiding of DNA mediated by asymmetric bend-writhe elasticity,
AIMS Biophysics 2(4), 666–694 (2015).

概要: DNAに代表されるようなラセン型の高分子について、bending(屈曲)とwrithig(ねじれ)は独立の構造変数として取り扱われることがこれまでは多かった。本研究では、ラセンのchiralityに応じて、一般的に、bendingとwrithingは非対称のcouplingを示すことを、Monte Carlo計算や解析的な手法により明らかにした。このような物性を考慮することにより、例えば、ゲノムDNAがヒストンンタンパク質の周りに巻き付くときには、左巻きを選択することが説明できることなどを明らかにしている。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Hiroshi Ueno, Tatsuaki Tsuruyama, Bogdan Nowakowski, Jerzy Górecki, and *Kenichi Yoshikawa,
Discrimination of time-dependent inflow properties with a cooperative dynamical system.,
Chaos 25, 103115 (2015).

概要: 細胞内 Mitogen-activated Protein Kinaseシグナル伝達系をもとにした非線形アロステリックモデルに基づく数値計算シミュレーションを詳細に行った。その結果、シグナル伝達系が外部刺激の周期的摂動の振幅、周波数を識別するバンドパスフィルター機構を備えている、すなわち、特定の範囲の振幅、周波数の値に対して酵素濃度が大きく変化する可能性が示された。わずかな外部環境の変化に対して敏感に応答する細胞内シグナル伝達の性質を説明できる重要な成果である。 【吉川研一(バンドパスフィルター機構について解析の枠組みに関する基本アイデアを示唆された。)】

Tatsuaki Tsuruyama, Wulamujiang Aini, Takuya Hiratsuka,
Reassessment of H&E-stained clot specimens and immunohistochemistry of phosphorylated Stat5 for histologic diagnosis of MDS/MPN.,
Pathology 47, 673-7 (2015).

概要: 血液細胞の白血病化の前段階である骨髄異形成症候群は、これまでヘマトキシリンエオシン染色による診断が困難であった。骨髄異形成症候群・慢性骨髄性白血病など関連白血病疾患において赤血球、白血球、巨核球の形態異常に加え、細胞質のヘマトキシリンエオシン染色性の不均一・ゆらぎが新たな診断規準になることを示した。加えてSTAT5のリン酸化の検出が診断に有用であることが示された。 【吉川研一(血液細胞の染色性の不均一性、形態ゆらぎが診断の根拠となる示唆を受けた。)】

Masanobu Tanaka, Marcel Hörning, Hiroyuki Kitahata and *Kenichi Yoshikawa,
Elimination of a spiral wave pinned at an obstacle by a train of plane waves: Effect of diffusion between obstacles and surrounding media,
Chaos 25, 103127 (2015).

概要: 興奮系にディフェクトがあるとき、ディフェクトにらせん波がトラップされることが知られている。このようならせん波は心臓でも見られており、そのらせん波の除去は重要な問題である。これまでに、物質の流出入がないディフェクトにトラップされたらせん波の除去可能性について議論した。今回、物質がディフェクト内に拡散できるときのらせん波の除去可能性について数値計算および解析を中心として調査した。 【北畑裕之(理論解析)、吉川研一(研究のとりまとめ)】

*Shigeyuki Komura, Kento Yasuda, and Ryuichi Okamoto,
Dynamics of two-component membranes surrounded by viscoelastic media,
Journal of Physics: Condensed Matter 27, 432001/1-7 (2015).

概要: 我々はアクティブなタンパク質を含む生体膜を考えて、特に生体膜の周囲の媒質が粘弾性体である場合に、膜断片のゆらぎ(平均二乗変位)の解析を行った。我々のモデルにおいて、タンパク質は膜内を側方拡散して、さらに局所的に膜の曲率を誘起すると仮定した。その結果、拡張されたEinsteinの関係式として、膜断片の平均二乗変位を導出した。周囲の粘弾性体の弾性率が周波数に対して冪的に依存する場合、膜断片はその冪指数を反映した異常拡散を示すことがわかった。この異常拡散は熱ゆらぎの効果として生じるが、我々はさらにタンパク質が媒質に対してアクティブな非平衡力を及ぼす場合についても同様の計算を行った。その結果、拡張されたEinsteinの関係式は修正を受けて、タンパク質の力双極子エネルギーに依存する実効的温度を用いて表されることがわかった。この関係式を用いると、生体膜のゆらぎから細胞質のレオロジー的性質を知ることができるため、我々はこれを「生体膜マイクロレオロジー」と呼んでいる。

*Hiroshi Noguchi,
Formation of polyhedral vesicles and polygonal membrane tubes induced by banana-shaped proteins,
Journal of Chemical Physics 143, 243109/1-7 (2015).

概要: バナナ形状のBARドメインの持つタンパク質による膜変形をメッシュレス膜模型によるシミュレーションを用いて研究した。タンパク質密度を上げていると膜チューブは多角形状チューブ、ベシクルは多面体状に変形することが明らかとなった。多角形形成は単純化した幾何学模型において曲げ弾性エネルギーの変化を考えることで説明できる。

Kensuke Kurihara, Yusaku Okura, Muneyuki Matsuo, Taro Toyota, Kentaro Suzuki, and *Tadashi Sugawara,
A recursive vesicle-based model protocell with a primitive model cell cycle,
Nature Communications 6, 8352 (2015).

概要: ベシクル内部のDNAを増幅した後、膜分子前駆体を添加すると速やかにベシクル自己生産が起こり、自己増殖するベシクル型人工細胞が、当研究室より報告されている。しかし、分裂したベシクルにはDNAの原料であるdNTPが枯渇しており、そのままでは再度DNAを増幅することは出来ない。本研究では、二種のリン脂質(双性イオン型とアニオン型)からなるベシクル膜の電荷に注目し、その比率が娘ベシクルとは逆のベシクルにdNTPを充填し、コンベイヤベシクルとした。分散媒が酸性になると、コンベイヤベシクルは娘ベシクルと接着・融合し、dNTPを娘ベシクルに充填するため、繰り返し自己増殖が可能となった。さらに、この繰り返し自己増殖するベシクル型人工細胞には、原始的細胞周期(分裂相、摂取相、複製相、成熟相)が存在することを見出した。 【菅原正(実験総括と論文執筆)、豊田太郎(機構の議論)、今井正幸(膜ダイナミクスの議論)】

Shogo Okubo, Shuhei Shibata, Yuriko Sasa Kawamura, Masatoshi Ichikawa and *Yasuyuki Kimura,
Dynamic clustering of driven colloidal particles on a circular path,
Physical Review E 92, 032303 (2015).

概要: 円環上をその接線方向に一定の駆動力を受けて運動するコロイド粒子系は、流体力学相互作用によりさまざまな非自明な集団運動を示す。本研究ではことに、粒子サイズが集団運動に及ぼす影響を特定の条件下で調べた。同一粒子径粒子の系では、クラスターの生成消滅を繰り返す運動と特定のサイズのクラスターを形成する2つの場合があることがわかった。また、異粒子径粒子(サイズ比が大きい場合)の系では、粒子の配列により決定論的に最終のクラスターが決まり、動的な変化を示さないことがわかった。粒子サイズ比を変えることで静的・動的クラスター形成の転移が起こることを数値シミュレーションおよび実験により明らかにした。 【市川正敏(シミュレーションに関する議論)】

Shogo Okubo, Shuhei Shibata, Yuriko Sasa Kawamura, Masatoshi Ichikawa and *Yasuyuki Kimura,
Dynamic clustering of driven colloidal particles on a circular path,
Physical Review E 92, 032303 (2015).

概要: 円環上をその接線方向に一定の駆動力を受けて運動するコロイド粒子系は、流体力学相互作用によりさまざまな非自明な集団運動を示す。本研究ではことに、粒子サイズが集団運動に及ぼす影響を特定の条件下で調べた。同一粒子径粒子の系では、クラスターの生成消滅を繰り返す運動と特定のサイズのクラスターを形成する2つの場合があることがわかった。また、異粒子径粒子(サイズ比が大きい場合)の系では、粒子の配列により決定論的に最終のクラスターが決まり、動的な変化を示さないことがわかった。粒子サイズ比を変えることで静的・動的クラスター形成の転移が起こることを数値シミュレーションおよび実験により明らかにした。

Naohito Urakami, Akio Takai, Masayuki Imai and Takashi Yamamoto,
Molecular dynamics simulation for shape change of water-in-oil droplets,
Molecular Simulation 41, 986-992 (2015).

概要: 高分子を膜(マイクロエマルション)の中に閉じ込めることによるマイクロエマルションの形態転移の実験結果を分子シミュレーションで再現した。

Yue Ma, Naoki Ogawa, Yuko Yoshikawa, Toshiaki Mori, Tadayuki Imanaka, Yoshiaki Watanabe and *Kenichi Yoshikawa,
Protective Effect of Ascorbic Acid against Double-strand Breaks in Giant DNA: Marked Differences among the Damage Induced by Photo-irradiation, Gamma-rays and Ultrasound,
Chemical Physics Letters 638, 205-209 (2015).

概要: 一分子計測の実験手法を活用することにより、ゲノムサイズのDNAの二本鎖切断についての、アスコルビン酸の保護作用を定量的に評価した。可視光照射によす活性酸素の切断については、1/3提訴に損傷を減らす効果があった。ガンマ線照射については、30%損傷を軽減する効果があった。それに対して、超音波による損傷では保護作用は観察されなかった。損傷源に依存した保護効果の違いを、物理化学的なメカニズムの違いにより説明している。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Yongjun Chen, Kosuke Suzuki and *Kenichi Yoshikawa,
Self-organized Target and Spiral Patterns through the “Coffee Ring” Effect,
Journal of Chemical Physics 143, 084702 (2015).

概要: C60の溶液を蒸発させることにより、μmスケールの同心円やラセンの構造が自発的に生成することを見出し、そのメカニズムについて考察を行った。この現象は、一種のcoffee ring効果であるとみなすことができる。Nucleationと沈殿形成が、contact lineの移動にともなって起こり、これにより規則的なパターンんが生成していると考えられる。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Naoki Umezawa, Yuhei Horai, Yuki Imamura, Makoto Kawakubo, Mariko Nakahira, Nobuki Kato, Akira Muramatsu, Yuko Yoshikawa, *Kenichi Yoshikawa and Tsunehiko Higuchi,
Structurally Diverse Polyamines: Solid-Phase Synthesis and Interaction with DNA,
ChemBioChem 16, 1811-1819 (2015).

概要: 水溶液中でプラス5の陽荷電をもつポリアミンを化学合成し、DNAへの作用を系統的に研究。直鎖型のポリアミンが、折り畳み転移を引き起こす活性が最も大きいことを見出し、2次構造変化も併せて引きこ押すことなどを報告。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Xiaojun Ma, Tomohiro Aoki, Tatsuaki Tsuruyama, and Shuh Narumiya,
Definition of prostaglandin E2-EP2 signals in the colon tumor microenvironment which amplify inflammation and tumor growth.,
Cancer Reserach 75, 2822-32 (2015).

概要: 結腸における炎症は、結腸・直腸癌の発生に大きく寄与する。好中球および腫瘍関連線維芽細胞におけるEP2が大腸の炎症を増幅し、腫瘍微小環境を形成することによって、結腸腫瘍形成を促進することが明らかにされた。従ってEP2拮抗薬は大腸癌の化学予防のための抗炎症剤アスピリンの有望な代替候補であることが示唆された。 【吉川研一(微小な環境の変化が炎症の大幅な増幅を引き起こし、腫瘍形成に至るモデルを示唆した。)】

Hisako Takigawa-Imamura, Ritsuko Morita, Takafumi Iwaki, Takashi Tsuji and *Kenichi Yoshikawa,
Tooth germ invagination from cell–cell interaction: Working hypothesis on mechanical instability,
Journal of Theoretical Biology 382, 284 (2015).

概要: 歯の発生の段階では、蕾型(bud)の構造が先ず生成し、その後その先頭の位置が陥没し、その陥入した位置に、歯の原器が形成することが、本論文の共著者らの研究により明らかになってきている。ここでは、budの表皮を形成する細胞シートと、bud内部の細胞の各々が細胞分裂することによる、力学的不安定性を取り入れたモデルを提案して、細胞分裂にともなって、自発的に陥入する現象が生じることを明らかにした。発生や形態形成の新しい理論的モデルといえる。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Daigo Yamamoto, Tsuyoshi Takada, Masashi Tachibana, Yuta Iijima, Akihisa Shioi and Kenichi Yoshikawa,
Micromotors working in water through artificialaerobic metabolism,
Nanoscale 7, 13186–13190 (2015).

概要: ethanol水溶液中で、白金のミクロ粒子が自発運動することを発見し、その運動のメカニズムについて議論を行った。近年、過酸化水素含有の水溶液で、ミクロ粒子が自発運動をすることが明らかになり、盛んに研究されている。しかしながら、この系では、酸化反応にともなう泡の発生が運動に深くかかわっている可能性があり、生体における化学→ 運動エネルギー変化に対応するモデルとはなっていないと考えられる。それに対して、本研究では、泡の発生の無い、温和な条件下で自発運動することを示している。今後、等温系での化学エンジンとして大きく研究が発展する可能性が有る。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Keita Ikari, Yuka Sakuma, Takehiro Jimbo, Atsuji Kodama, *Masayuki Imai, Pierre-Alain Monnard, and Steen Rasmussen,
Dynamics of fatty acid vesicles in response to pH stimuli,
Soft Matter 11, 6327-6334 (2015).

概要: 脂肪酸ベシクルにNaOHをインジェクションすると脂肪酸の可溶化がおこり、ベシクルの変形、孔形成、および膜融合が誘起されることを実験的に示し、膜弾性理論からその振る舞いを定量化した。 【佐久間由香(実験の立案と解析)】

*Tsutomu Hamada, Rie Fujimoto, Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa, *Masahiro Takagi,
Molecular behavior of DNA in a cell-sized compartment coated by lipids,
Physical Review E 91, 62717 (2015).

概要: 油中水滴の内部に閉じ込めたDNAが、小胞サイズに依存して膜への吸着・脱吸着を変化させることを見出した。また、fold状態のDNA分子が膜面に吸着した後unfold状態に変化する現象を発見し、このunfolding転移の確率もまた小胞サイズに依存した。理論的考察から、空間サイズ依存的なDNA分子ダイナミクスを記述する自由エネルギーを定式化した。

Masa Tsuchiya, Alessandro Giuliani, Midori Hashimoto, Jekaterina Erenpreisa and Kenichi Yoshikawa,
Emergent Self-Organized Criticality in Gene Expression Dynamics: Temporal Development of Global Phase Transition Revealed in a Cancer Cell Line,
PLOS ONE 10(6), e0128565 (2015).

概要: がん細胞での、グローバルな遺伝子発現パターンの時間発展を解析。その結果、時間発展に伴い、双安定な発現パターンが、臨界状態を経て大域的な転移現象を示すことを明らかにした。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Hiroaki Ito, Navina Kuss, Bastian E. Rapp, Masatoshi Ichikawa, Thomas Gutsmann, Klaus Brandenburg, Johannes M. B. Pöschl, and *Motomu Tanaka,
Quantification of the Influence of Endotoxins on the Mechanics of Adult and Neonatal Red Blood Cells,
Journal of Physical Chemistry B 119, 7837−7845 (2015).

概要: 自作した微小流路を用いて、新生児と成人の赤血球の形状ゆらぎを高分解能で追跡し、振幅の2乗平均から赤血球の曲げ弾性と張力、および細胞骨格との結合の強さ(ずり応力)を定量した。また敗血症のモデルとしてリポ多糖や抗敗血症薬が細胞の力学特性に与える寄与の定量解析にも成功した。

Daigo Yamamoto, Chika Nakajima, Akihisa Shioi, Marie Pierre Krafft, Kenichi Yoshikawa ,
The evolution of spatial ordering of oil drops fast spreading on a water surface,
Nature Communications 6, 7189/1-6 (2015).

概要: フッ素系の油は、普通の油とは相分離するなど、化学的に特異な性質を示す物質として注目されている。本論文では、perfluorooctylbromide (PFOB) を水面に滴下すると、水面上で薄膜を形成した後、空孔 (hole)が現れ、その周りに液滴が自発的に配列することを報告。さらに、空孔の成長に伴い、放射状に小滴群が一次元配列パターンを形成し、その後この小滴群は全体として膨張・収縮を繰り返し、ハチの巣構造を形成するといった、興味深い時間発展が起こることを見出した。理論的には、濡れ転移の非線形性を取り入れることにより、このような規則構造の現れる機構を説明している。本現象は、生物の集団運動など、自然界の時空間の自己秩序形成のメカニズムを理解するためのよいモデル系になると期待される。(注目の論文として紹介記事掲載) 【市川正敏(実験や解析手法に関して議論)】

Yongjun Chen, Shun N. Watanabe and *Kenichi Yoshikawa,
Roughening Dynamics of Radial Imbibition in a Porous Medium,
Journal of Physical Chemistry C 199(22), 12508–12513 (2015).

概要: 2次元の細孔系での液体の浸透パターンの時間発展の実験をおこない、その結果にも基づいて理論的なモデルを提案。自発的な浸透が起こる系では、時間発展の成長が、0.6の指数のスケーリング則で表されることを明らかにした。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Yoshitsugu Kubo, *Shio Inagaki, *Masatoshi Ichikawa, and Kenichi Yoshikawa,
Mode bifurcation of a bouncing dumbbell with chirality,
Physical Review E 91, 052905/1-9 (2015).

概要: 本研究ではダンベル形状の金属物体を加振板の上にのせた時に、物体が見せる運動モードの転移を詳しく調べました。加振強度を大きくしていくにつれて、ダンベルはランダム運動からダンベルの軸方向に進む並進運動、並進運動からダンベルの軸を中心にして転がり往復する転がりモードへと転移していく事が明らかになりました。本論文では特に、前後非対称性が無いにも関わらず一方向運動する点に着目し、メカニズムの解明を行いました。転移挙動をダンベルの特徴を取り入れた計算機シミュレーションで再現して実験と比較すると共に、分岐付近での力学的な構造を考え、運動方程式を調べました。ダンベルの左右は最初ランダムに跳ね上げられてランダム運動します。ある加振強度に達すると、ダンベル左右のうち振幅の大きい方が周期解として記述される運動に入れるようになります。これだけだと周期運動から出る事も可能ですが、もう少し加振強度が強くなると小さい振幅の側の減衰が相対的に速くなり、片側だけが周期運動するモードに対する擾乱がどんどん小さくなります。このとき片側の周期運動には線形安定性が有るので、結果としてリミットサイクルの様になります。この解析で、運動モード転移に見られるヒステリシスや反発係数(素材)の違い、転移点の依存性などを良く説明できた事から、並進運動への転移に関しては十分な理解が得られました。自発的な対称性の破れとして面白い現象だと考えます。 【吉川研一、市川正敏、櫻井建成(実験結果や解析に関して議論)、北畑裕之(実験結果や解析に関して議論)、永井健(実験結果や解析に関して議論)】

*Takafumi Iwaki, Tomomi Ishido, Ken Hirano, Alexei Lazutin, Valentina V. Vasilevskaya, Takahiro Kenmotsu and Kenichi Yoshikawa,
Marked difference in conformational fluctuation between giant DNA molecules in circular and linear forms,
Journal of Chemical Physics 142, 145101 (2015).

概要: 線状と環状の巨大DNA分子(208kbp)について、水溶液中の高次構造の観察を、蛍光顕微鏡をもちいた単一分子鎖観察をおこなった。その結果、線状分子に比べ環状分子は、約40%構造揺らぎが小さくなることが明らかとなった。一方、長軸長については、わずか10%程度の減少が起こるにすぎないことが分かった。極めて面白いことに、環状分子の構造揺らぎの緩和時間は、線状に比べ約1/10と、極めて短くなることが見出された。このような実験で得られた高次構造やその揺らぎの特徴について、粗視化した半剛直高分子鎖のモデルのモンテカルロ計算により再現することができた。さらに、平均場近似により、このような傾向が生じるメカニズムを論じた。なお、本論文は、当該学術雑誌のFEATURED ARTICLEに選ばれ、論文中の「ゲノムDNAの一分子揺らぎの計測例」が論文誌の表紙を飾りました。【市川正敏(実験結果についての議論)】

*Yoshiyuki Kageyama, Tomonori Ikegami, Natsuko Hiramatsu, *Sadamu Takeda, and Tadashi Sugawara,
Structure and growth behavior of centimeter-sized helical oleate assemblies formed with assistance of medium-length carboxylic acids,
Soft Matter 11, 3550-3558 (2015).

概要: オレイン酸はpH = 8付近で螺旋状構造体を形成するが、その鎖長は100 µm程度である。今回、螺旋構造体を形成する際に、N-ドカノイル-L-アラニン、あるいはノナン酸、オクタン酸のナトリウム塩を少量添加しておくと、1 cmを超える螺旋構造体が形成されることが見出された。これらの塩は、界面活性剤として水溶液に溶解しているオレイン酸を螺旋末端部に連結している凝集体に運搬するため伸長が続くことがわかった。 【菅原正(超分子化学)】

Masahiro Mizuno, Taro Toyota, Miki Konishi, Yoshiyuki Kageyama, *Masumi Yamada, and Minoru Seki,
Formation of monodisperse hierarchical lipid particles utilizing microfluidic droplets in a non-equilibrium state,
Langmuir 31, 2334-2341 (2015).

概要: リン脂質ジャイアントベシクルの作製過程で分散媒を酢酸エチルから水に交換すると、リン脂質の集合状態が異なるコア―シェル型の微粒子が生成することがわかった。この交換過程をマイクロ流体デバイスで制御することで、粒径を制御したり、他の水溶性・疎水性分散質を取り込ませたコア―シェル微粒子を作製できることを示した。 【豊田太郎(微粒子の構造と形成過程の解釈)】

Kanta Tsumoto, Masafumi Arai, Naoki Nakatani, Shun N. Watanabe and *Kenichi Yoshikawa,
Does DNA Exert an Active Role in Generating Cell-Sized Spheres in an Aqueous Solution with a Crowding Binary Polymer?,
Life 5(1), 459-466 (2015).

概要: 2種類の水溶性高分子の混雑環境下、水―水の二相分離が生じることは、水性二相分配(ATPS)と呼ばれ、これまでにも知られていた。本研究では、混雑する2種類の高分子の混雑環境にDNA分子を更に加えた時の影響を調べた。その結果、DNAはより剛直性の高い高分子の分率の高い液滴側に選択的に取り込まれることが明らかとなった。更に、詳細な実験を行ったところ、DNAが水性二相分配が進行させる効果があることが示唆されるような実験結果が得られた。 【市川正敏、濱田勉(実験結果についての議論)】

Koh M. Nakagawa and *Hiroshi Noguchi,
Morphological changes of amphiphilic molecular assemblies induced by chemical reactions,
Soft Matter 11, 1403-1411 (2015).

概要: 化学反応下での界面活性剤集合体の形態変化を粗視化分子シミュレーションを用いて研究した。油滴から棒状ベシクルやトロイド状ベシクルが形成される過程が明らかとなった。また、疎水性粒子の包含によってバイセルからのベシクル形成が促進されることがあること分かった。 【菅原正、豊田太郎(化学反応下での界面活性剤集合体の形態変化の実験について議論)】

Takahiro Umeki, Masahiko Ohata, *Hiizu Nakanishi, Masatoshi Ichikawa,
Dynamics of microdroplets over the surface of hot water,
Scientific Reports 5, 8046/1-6 (2015).

概要: コーヒーやお茶の表面を光にすかした時に見える白いもやの膜に関して研究を行った。この白いもやが直径数十マイクロメートルの水滴である事はその白色散乱を見れば予想がつくが、その水滴が水面上で見せるダイナミックな現象に興味を持ち直接観察した。その結果、マクロな観察で対流に沿って出来る様に見える、白いもやの割れ現象が、水滴の雪崩的な連続消滅であることを明らかにした。 【北畑裕之(実験結果に関して議論)、永井健(実験結果に関して議論)】

Jean Wolff, *Shigeyuki Komura, and David Andelman,
Budding of domains in mixed bilayer membranes,
Physical Review E 91, 012708/1-10 (2015).

概要: 我々は二成分の脂質二重膜を考え、膜内のドメインによって誘起されるバディングのモデルを提唱した。重要な仮定として、それぞれの単層膜の自発曲率は、二種類の脂質分子の濃度差に対して線形的に依存するとした。ドメインの形状としては、平坦、不完全バディング、完全バディングの三状態を想定した。我々のモデルにより、二枚の単層膜間の濃度の非対称性によってバディングが誘起されることがわかった。

Kingo Takiguchi, Makiko Egishi, Yohko Tanaka-Takiguchi, Masahito Hayashi and Kenichi Yoshikawa,
Specific Transformation of Assembly with Actin Filaments and Molecular Motors in a Cell-Sized Self-Emerged Liposome,
Origins of Life and Evolution of Biospheres 44(4), 325-329 (2015).

概要: 細胞サイズのリン脂質小胞に取り込まれたアクチンの自発的な構造転移についての報告。アクチンは原核、真核細胞ともに存在する、細胞の構造や運動性に関わる重要なたんぱく質であり、これを取り込んだ人工的な細胞モデルについて実験的な研究を行った。Spindle, Aster, Cortexなどの特徴的な構造がこのモデルで自己生成することを見出した。 【吉川研一(研究のとりまとめ)】

Anatoly A. Zinchenko and *Kenichi Yoshikawa,
Compaction of Double-Stranded DNA by Negatively Charged Proteins and Colloids,
Current Opinion in Colloid & Interface Science 20, 60-65 (2015).

概要: PEGなどの水溶性の中性高分子存在下、DNAが折り畳み転移を引き起すこすことは良く知られている。それに対して、本論文の著者らは、負に帯電した高分子や、ナノパーティクルの濃度をあげることにより、DNAの折り畳み転移が引き起こされることを見出した。興味深いことに、中性高分子の混雑環境下では、一価の塩(NaClなど)の濃度を高くとることによりDNAの折り畳み転移が促進されるが、負に帯電したものによる混雑効果では、塩は折り畳み転移を阻害することが明らかとなった。これらの結果は、負に帯電した高分子やナノパーティクルの実効的の排除体積に対する塩の効果を考えることにより、半定量的に説明することが可能であることを明らかにした。 【市川正敏(実験結果についての議論)】

*Hiroshi Noguchi, Ai Sakashita, and Masayuki Imai,
Shape transformations of toroidal vesicles,
Soft Matter 11, 193-201 (2015).

概要: トーラス状の脂質ベシクルの形状を動的三角格子模型によるシミュレーションと共焦点顕微鏡による直接観察を用いて研究した。円盤にハンドルのついた形状やラケット状などのこれまで知られていなかった形状を明らかにした。 【今井正幸(実験)】

*Hiroshi Noguchi, Ai Sakashita and Masayuki Imai,
Shape transformations of toroidal vesicles,
Soft Matter 11, 193-201 (2015).

概要: ドーナッツ型など穴の開いたベシクルの形態について、共焦点顕微鏡と計算機シミュレーションにより、系統的に調べその振る舞いを明らかにした。 【野口博司(主著者)】

*Chwen-Yang Shew and Kenichi Yoshikawa,
A toy model for nucleus-sized crowding confinement,
Journal of Physics: Condensed Matter 27(6), 064118/1-7 (2015).

概要: 細胞環境中での高分子の状態を調べるために、球状のカプセル内を混雑状態とし、そこに存在する高分子の存在様式を、簡単なモデルを設定して、モンテカルロ計算を行った。その結果、混雑度の増大に伴って、高分子鎖は、カプセルの内部から、その内表面に移行する様になることを見出した。このような傾向は、最近の吉川らのDNA一分子観察の実験によっても得られており、細胞が熱揺らぎの下、混雑環境下生命現象を維持していることとも関連して、興味深い結果をなっている。 【市川正敏、濱田勉(情報交換と議論)】

*Shio Inagaki, Hiroyuki Ebata and Kenichi Yoshikawa,
Steadily oscillating axial bands of binary granules in a nearly filled coaxial cylinder,
Physical Review E 91, 010201(R)/1-5 (2015).

概要: 2種類の紛体を回転ドラムに充填した状態で、水平軸の周りに回転を行わせ、紛体の分離パターンの時間変化を観測した。その結果、充填率の上昇にともなって、単調な相分離(coarsening)、進行波、そして、進行方向の時間的な振動へと、モード分岐が引き起こされることを見出した。回転ドラム内の、内層と外層との交換をとりいれた、現象的な方程式を導出し、理論的な考察をおこなった。ここで得られて式は、Cahn-Hilliard型の式であるが、そのなかに、内層と外層との間の対流運動を取り入れたモデルとなっている。これにより、実験によって得られた傾向をほぼ再現することが可能となった。これまでの、回転ドラム実験では、充填率が低いものがほとんどであったが、充填率を上げることにより、時間の並進対称性や反転対称性が破れることが明らかとなった。 【市川正敏(実験方法に関してのアドバイス)】

2014

Yuka Takeuchi, Yoko Sugawara, Tadashi Sugawara, and *Masakazu Iwasaka,
Magnetic rotation of monosodium urate and urinary tract stones for clinical treatment applications,
Magnetics, IEEE Transactions on 50, 6101204 (2014).

概要: 体内での尿酸ナトリウムやシュウ酸カルシウムの結晶化は、通風や尿路結石などの原因であり、その対応が求められている。そこで本研究では、水中に分散させたこれら塩の結晶に対する磁場応答性を確認した。顕微鏡観察により、尿酸ナトリウム結晶は磁場に平行に配向くし、シュウ酸カルシウム結晶は磁場に垂直に配向することを確認した。さらに、尿酸ナトリウム結晶を水中に分散させた分散液の散乱スペクトルを確認したところ、磁場による結晶回転を散乱強度の変化として確認することができ、さらに配向は磁場のON/OFF、印加方向などで制御できる。このような方法は、体内にできたこの種の結晶の配向を制御することに使えるのではないか。 【菅原正(結晶構造)】

Yuri Mizukawa, Kentaro Suzuki, Shigefumi Yamamura, Yoko Sugawara, Tadashi Sugawara, and *Masakazu Iwasaka,
Magnetic manipulation of nucleic acid base microcrystals for DNA sensing,
Magnetics, IEEE Transactions on 50, 5001904 (2014).

概要: 核酸塩基のマイクロ結晶が、水中で示す磁場配向性を利用した新しいDNA認識法に関する研究を行った。再結晶により得られたグアニンのマイクロ結晶は、その反磁性磁化率異方性により、結晶の長軸を磁場に垂直にするような磁場配向を起こすのに必要な磁場の大きさは、一般的な永久磁石レベルの数百mTで、十分なことがわかった。この結晶表面にDNAを吸着させ、DNAが吸着しなかった場合との磁場配向性の程度を、配向角の大小で比較した。その結果、DNAを吸着させることにより、磁場配向性が弱まる傾向が認められた。 【菅原正(結晶構造)】

*Hiroshi Noguchi,
Two- or three-step assembly of banana-shaped proteins coupled with shape transformation of lipid membranes,
EPL 108, 48001/1-6 (2014).

概要: バナナ状タンパク質の脂質膜上での自己集合についてメッシュレス膜模型を用いたシミュレーションによって研究した。膜の曲げ変形を介した自己集合は、異方的な集合過程に分かれ、段階的に起こることが明らかとなった。

Hiroki Himeno, Naofumi Shimokawa, Shigeyuki Komura, David Andelman, *Tsutomu Hamada, and Masahiro Takagi,
Charge-induced phase separation in lipid membranes,
Soft Matter 10, 7959-7967 (2014).

概要: 荷電脂質を含む多成分脂質ベシクルにおける相分離挙動を実験的に観察し、理論的な説明を試みた。脂質の頭部と炭化水素鎖の組み合わせにより、相分離温度が上昇する場合と下降する場合の両方があることがわかった。また、脂質四成分系では三相共存が実験的に観察された。理論的にはポアッソン・ボルツマン方程式と相分離の理論を統一的に扱った。 【濱田勉(実験的サポート)】

*Shunsuke F. Shimobayashi and *Masatoshi Ichikawa,
Emergence of DNA-Encapsulating Liposomes from a DNA-Lipid Blend Film,
Journal of Physical Chemistry B 118, 10688-10694 (2014).

概要: ゲノムサイズの長いDNAをその内部に封入した細胞サイズリポソームを効率的に作成する手法を新たに開発しました。細胞サイズのリポソームを作成する手法は複数ありますが、大きく2系統に分ける事が出来ます。1つは油中液滴を形成させる方法、もう1つは乾燥フィルムから形成させる方法です。両者とも長所短所有りますが、こと高濃度の生体高分子を封入する方法としては、前者の油中水滴による界面透過法が殆ど唯一の選択肢でした。今回、リポソーム形成メカニズムを詳細に検討する事で、後者のフィルムからの方法で界面透過法に迫る濃度での効率的形成に成功しました。端的には、静置水和法(simple hydration)の改良である湊元methodと、dehydration-rehydration法の良いとこどりです。更に、リポソーム形成時に顕れる現象を、絡まり合う高分子のダイナミクスや粘弾性相分離といったソフトマター物理の知見を生かして解析する事で、特に長いDNAの封入効率を劇的に高める事が出来ました。工学的には前者の界面透過法とその親戚が現状でベストであり、それに対する本手法の際立った優位点は大量生産に対するスケーラビリティです。一方、学術的な意義として、細胞内部のような高濃度の生体高分子溶液を封入したリポソームが自然な条件設定で自発的に出来うる事を示した本研究は、生命発生、特に細胞のはじまりを探求する研究として興味深い結果です。 【吉川研一(議論と動的光散乱測定への協力)、濵田勉(議論とアドバイス)】

Fumi Takabatake, Kenichi Yoshikawa, and *Masatoshi Ichikawa,
Communication: Mode bifurcation of droplet motion under stationary laser irradiation,
The Journal of Chemical Physics 141, 051103/1-4 (2014).

概要: レーザー光によって局所加熱されたcmサイズの液滴が、光強度に応じて自律的に運動モードを変化させる事を実験的に示しました。光が弱いときから順に、静止、ランダム、往復、回転、と運動モードを変化させます。この結果は、PRE 87, 013009 (2013)を実験によって検証したものに相当します。流動パターンと液滴の動きは先の論文における予想とほぼ同じであり、本研究によって十分に検証されたものと考えています。一方で、実験的な見地からは、また別の転移を含んでいる可能性を指摘しました。適当な時間遅れ、例えば慣性的な振る舞いによっても、同様の転移を見せる可能性があります。 【吉川研一(実験系のアドバイスや論文執筆)、北畑裕之(議論と理論面からのアドバイス)、永井健(議論と理論面からのアドバイス)、義永那津人(議論と理論面からのアドバイス)】

*Tatsuaki Tsuruyama,
A model of cell biological signaling predicts the phase transition of signaling and provides mathematical formula of signaling,
PLOS ONE 9, e102911 (2014).

概要: タンパク質集合における反応速度解析において、モノマータンパク質の拡散係数にタンパク質の濃度依存性を導入し、非線形速度論モデルを設定した。その結果、集合過程が、集合に必要なATPなどの補因子の濃度に強く依存し、補因子の臨界濃度近傍でモノマータンパク質の濃度ゆらぎが周期的に起こる可能性が示唆された。その場合、振動数が補因子の濃度の対数関数で近似される可能性も示唆された。 【吉川研一(非線形解析における理論的指導)】

*Shuji Fujii, Shigeyuki Komura, and Chun-Yi David Lu,
Structural rheology of the smectic phase,
Materials 7, 5146-5168 (2014).

概要: サーモトロピック液晶のスメクチック・レオロジーに関して、特に構造レオロジーの観点から包括的なレビューを行った。我々はレオロジー測定と顕微鏡観察を組み合わせて、温度とずり応力を変数とする動的相図をを作成した。それによると、動的なスメクチック相は二種類あり、一方の相ではフォーカル・コニック・ドメインが形成されていることがわかった。このようなスメクチック相の弾性の起源は、フォーカル・コニック・ドメインの実効的な表面張力が担っていることを実験的に見出した。

*Shigeyuki Komura and David Andelman,
Physical aspects of heterogeneities in multi-component lipid membranes,
Advances in Colloid and Interface Science 208, 34-46 (2014).

概要: 生体膜のラフトモデルが提唱されて以来、従来の流動モザイクモデル的な描像が変わりつつある。ラフトモデルでは、多成分の脂質二重膜における動的な不均一構造が重要な役割を果たしている。本レビューでは生体膜やベシクルにおける側方相分離現象を主題として、最近10年程度の研究動向を概観する。ここでは主に物理化学的な立場の実験研究を中心にレビューし、さらにソフトマター物理学の観点から理論的な考察を行う。前半では多成分の脂質二重膜の相挙動や形態について説明をする。後半では生体膜と周囲の溶媒の流体力学効果を定式化して、ドメインサイズの成長則や濃度ゆらぎの減衰率について議論する。最後に、ラフトを二次元のマイクロエマルションと見なす最近の理論について説明する。 【今井正幸(実験的サポート)】

Tomohiro Yanao and *Kenichi Yoshikawa,
Chiral symmetry breaking of a double-stranded helical chain through bend-writhe coupling,
Physical Review E 89, 062713/1-16 (2014).

概要: DNAに代表されるような、特定のカイラリティにラセンを巻いた高分子について、bendingとwrithingの非線形相互作用の、構造にたいする影響について、シミュレーションおよび解析手法により迫った研究。ここで用いたモデルは、二本の弾性的な紐が巻き付くことにより二重ラセンを形成しているとするものである。このようなラセン高分子は、曲げ(bending)のストレスがかかると、ラセンが解かれて緩む方向の変化を引き起すことを見出した。このことにより、丸棒状の構造体に巻き付くときには、二重ラセンの本来のカイラリティとは逆のカイラリティを示すことを明らかにした。このような傾向は、実際にDNAがヒストン蛋白に巻き付くときにみられる傾向と同一であり、ラセン高分子がしめす高次構造の特徴の基本をなしていると推論。

Yutaka Sumino and *Kenichi Yoshikawa,
Amoeba-like motion of an oil droplet Chemical model of self-motile organisms,
The European Physical Journal Special Topics 223, 1345–1352 (2014).

概要: アメーバ―用の自律運動をしめす、化学的なモデル実験系についての著者らの幾つかの研究結果を取りまとめて論じたもの。この自発運動は、水・油・界面活性剤からなり、弾性をしめす構造体の生成と崩壊の繰り返しがその原因となっている。この意味で、アメーバ運動で現象的にしられていることと対応している。これまでのアメーバ―運動に関する理論モデルを検討し、その問題点を明らかにし、モデル実験系から得られた理論モデルがより一般的であると推論。また、最近の著者らの中性子散乱ほうなどをもちいる、ミクロな分子形態の変化の実験結果についても紹介。モデル実験系の有用性についての議論を最後に行っている。

Kentaro Takahashi and Yasuyuki Kimura,
Dynamics of colloidal particles in electrohydrodynamic convection of nematic liquid crystal,
Physical Review E 90, 012502/1-5 (2014).

概要: ネマチック液晶の電気対流中でのミクロンサイズのコロイド粒子のダイナミクスを調べた。電気対流の閾値以上ではまず、液晶場に垂直に対流ロールが発生するが、粒子は1つのロールにトラップされて、対流により回転する様子が観察された。その際、角速度は電圧の増大に伴って単調に増大した。より高い電圧の下ではロール軸が時間的に揺らぎ、粒子はしばしば隣のロールに飛び移る様子が観察された。ロール軸に垂直方向の粒子の運動は長時間では拡散的となり、その実効的な拡散定数は分子拡散の場合の10^3–10^4倍となった。観察された粒子の運動を対流中での粒子輸送の簡単な確率的モデルによる結果を比較した。 実験で観測された拡散定数の増大をロール中の回転速度、ロール幅、隣接ロールへの遷移確率により定量的に説明することに成功した。 【長屋智之(液晶電気対流の情報提供)】

*Shuji Fujii, Shigeyuki Komura, and C.-Y. David Lu,
Structural rheology of focal conic domains: a stress-quench experiment,
Soft Matter 10, 5289-5295 (2014).

概要: ずり流動下におけるサーモトロピック・スメクチック相のフォーカル・コニック・ドメインにつていの実験的な研究を行った。ここでは、ずり応力を急激に変化させることによって、SmAI相からSmAII相への非平衡相転移を誘起して、フォーカル・コニック・ドメインの成長のダイナミクスを追跡した。実験的には三つの緩和モードが観測され、それぞれの物理的起源の考察を行った。

Masa Tsuchiya, Midori Hashimoto, Yoshiko Takenaka, Ikuko N. Motoike and *Kenichi Yoshikawa,
Global Genetic Response in a Cancer Cell: Self-Organized Coherent Expression Dynamics,
PLOS ONE 9(8), e105491 (2014).

概要: ヒト癌細胞(MCF-7; 乳がん由来)に、成長因子(EGF)および細胞分裂促進因子(HRG)を投与したときの、時間に依存した遺伝子発現のプロファイルの変化を解析した。22035個の遺伝子について実験的に得られたデータについて、時間差分の経時変化の非線形特性に注目した。投与の初期段階において、遺伝子群がon/offに特徴づけられる応答をしめすことが分かった。時間とともに、この統計集団が臨界状態をへて、別の双安定的な発現プロファイルを示すことも明らかとなった。このような時間依存の分岐現象が、ゲノムDNAの高次構造の転移現象に由来している可能性を議論した。

Sayuri Tanaka, Yuma Oki, and Yasuyuki Kimura*,
Melting process of a single finite-sized two-dimensional colloidal crystal,
Physical Review E 89, 052305/1-9 (2014).

概要: 有限サイズの2次元コロイド結晶の融解過程をビデオマイクロスコピーにより調べた。局所的な面積密度φとヘキサチック秩序ψ6を各ボロノイセルに対して求めた。結晶(クラスター)の中心からの距離の関数としてφと|ψ6|を求め、その時間変化を調べた。その結果、φはクラスター中ではほぼ一定の値を示し、その値が時間とともに単調に減少することがわかった。一方、|ψ6(r)|は初期過程では|ψ6| = 1の核が存在するが、その後、rの単調減少関数となることがわかった。さらに、ソフトコア粒子を用いた有限サイズ結晶の融解過程をブラウンダイナミクスシミュレーションを用いて調べ、融解過程における有限サイズ効果を確かめた。また、得られた結果は定性的に実験とよい一致をみた。 【市川正敏(シリカ粒子の熱泳動効果についての実験的な協力)】

David A. Head, Emi Ikebe, Akiko Nakamasu, Peijuan Zhang, Lara Gay Villaruz, Suguru Kinoshita, Shoji Ando, and *Daisuke Mizuno,
High-frequency affine mechanics and nonaffine relaxation in a model cytoskeleton,
Physical Review E 89, 042711/1-5 (2014).

概要: 真核生物の細胞内部には細胞骨格と呼ばれる繊維状のタンパク質重合体(アクチン、微小管、中間径フィラメント)からなるネットワークが張り巡らされている。この細胞骨格は、外部環境から加えられた力、あるいは内部で自発的に生じた力を受け止めて、さらには別の場所(例えば細胞膜上の力学受容体)に伝播させることで、細胞や器官の様々な振る舞いに影響を与える。細胞内部における力学刺激と、それに対する生理的応答は共にミクロなスケールで進行するために、そのメカニズムを理解するにはまず微視的な応力の存在下における細胞骨格の微視的な力学応答を調べる必要がある。 そこで本研究では、中間径フィラメントであるビメンチンゲルの内部に分散させた直径2ミクロンのコロイド粒子を光トラップし、微視的な空間スケールの力の単極子を生成させた。そこから数ミクロン離れた場所に存在するコロイド粒子の熱揺らぎを観測することで(マイクロレオロジー)、周辺のビメンチンゲルの力学特性を求めた。その結果細胞骨格ゲルの力学応答は加えられた力に依存して大きく変化し(非線形硬化現象)、これによりシステムの対称性が破れて異方的な特性を示すことが分かった。 我々は、得られた実験結果は空間スケールによらない変形(affine変形)を仮定した力学モデルでは全く理解することができないことを示す。構成高分子の持続長が架橋点間距離よりも長い細胞骨格においては、巨視的なスケールの変形と架橋点間距離程度の変形が異なること(非-affine)は、十分にあり得ることである。ミそこでクロな空間スケールにおける非-affineな変形を考慮することで、実験結果(非線形かつ異方的な力学応答)を説明する理論モデルを提示する。

Ai Sakashita, Masayuki Imai, and *Hiroshi Noguchi,
Morphological variation of lipid vesicle confined in spherical vesicle,
Physical Review E 89, 040701(R)/1-4 (2014).

概要: 狭い空間の拘束による脂質ベシクルの形態変化を実験、理論両面から研究した。この結図に示すように、2重ストマトサイトやダブレットと名付けた形状など、拘束のない条件では見られない多くの形状が得られた。ミトコンドリアの内膜で見られるクリステと呼ばれるヒダ状の構造も得られた。ミトコンドリアは2つの膜からなるが、内側の膜が外膜より大きな面積を持つ。このように空間拘束は細胞小器官の形状を決定する重要なファクターの一つだと考えられる。 【今井正幸(実験)】

Ai Sakashita, Masayuki Imai, and *Hiroshi Noguchi,
Morphological variation of a lipid vesicle confined in a spherical vesicle,
Physical Review E 89, 040701/1-4 (2014).

概要: ベシクル内に閉じ込められたベシクルの拘束の強さを変化させた時の変形の振る舞いを共焦点顕微鏡と計算機シミュレーションで系統的に追跡したもの。 【野口博司(主著者)】

*Tomoyuki Mochida, Yusuke Funasako, Kousuke Takazawa, Masashi Takahashi, Michio M. Matsushita, and Tadashi Sugawara,
Chemical control of the monovalent-divalent electron-transfer phase transition in biferrocenium-TCNQ salts,
Chemical Communications 50, 5473-5475 (2014).

概要: ドナー分子 としてフェロセンの誘導体(1',1'''-ジネオペンチルビフェロセン)、アクセプター分子としてTCNQの誘導体(F1TCNQ)を混合して結晶化すると、成分比1:3のイオン性分子結晶を形成する。その電荷状態は室温付近ではD+A3型の一価であるが、120 K付近で一次相転移を示し、D2+A32−型の二価へと変化した。同塩結晶中に母体であるTCNQ(F1TCNQよりアクセプター性が低い)をドープしたところ、その添加濃度に応じて転移温度が低温にシフトした。一方、F1TCNQよりアクセプター性の高いF2TCNQをドープした場合には、高温へとシフトした。どちらの場合も、転移温度の周辺挙動はブロードニングする。これは、ドーピングにより本結晶中に存在する3分子のアクセプターの構成比率に揺らぎが生じたためと考えられる。さらに、ドナー分子のネオペンチル基を、嵩高さが小さいイソブチル基に置換した分子を用いて、F1TCNQとの1:3イオン性分子結晶を作製すると、その一価から二価への転移温度は高温へとシフトした。これは、置換基の化学圧力によるアニオン-カチオン間の距離の圧縮が、マーデルングエネルギーを減少させたことによると見られる。 【菅原正(物性考察)】

*Kazuhiko Seki, Saurabh Mogre, and Shigeyuki Komura,
Diffusion coefficients in leaflets of bilayer membranes,
Physical Review E 89, 022713/1-12 (2014).

概要: 脂質二重膜を二枚の結合した二次元流体として扱い、周囲の非対称な溶媒も取り入れた流体モデルを考察した。特に二枚のリーフレット間には、速度差に比例する摩擦力が働くとした。具体的な計算として、液体ドメインの拡散係数の摩擦係数依存性や、サイズ依存性などを詳細に調べた。 【今井正幸(実験的サポート)】

*Anatoly A. Zinchenko, Kanta Tsumoto, Shizuaki Murata and Kenichi Yoshikawa,
Crowding by Anionic Nanoparticles Causes DNA Double-Strand Instability and Compaction,
The Journal of Physical Chemistry B 118, 1256-1262 (2014).

概要: 負に帯電したnanoparticleによる混雑環境下で、DNAに折り畳み転移を引き起こされることを明らかにした。興味深いことにDNAは20-30nm程度のループを形成していることが分かった。更に重要なこととして、nanoparticleによるDNAの凝縮体は、helix-coil転移の転移温度が低くなることも見出している。 【吉川研一(実験結果の定量的解析および理論化、論文全体の構成)】

*Chwen-Yang Shew, Kenta Kondo and Kenichi Yoshikawa,
Rigidity of a spherical capsule switches the localization of encapsulated particles between inner and peripheral regions under crowding condition: Simple model on cellular architecture,
The Journal of Chemical Physics 140, 024907/1-9 (2014).

概要: 細胞内の混雑環境下での、高分子や細胞顆粒の自発的な分離について、モンテカルロ法による計算を援用して、理論的な考察をおこなった。硬い膜い囲まれた場合は、小球が膜近傍に位置し、大球は中央部分に存在する様になる。膜が柔らかくなると、大球が膜表面に接触する配置を取るようになる。これは、例えば、細胞核の細胞内での存在様式などとも関連している可能性があり、興味深い 【吉川研一(論文全体の構成、研究テーマの発案、理論的考察】

Rastko Joksimovic, Shun N. Watanabe, Sven Riemer, Michael Gradzielski and *Kenichi Yoshikawa,
Self-organized patterning through thedynamic segregation of DNA and silicananoparticles,
Scientific Reports 4, 3660/1-7 (2014).

概要: DNAとシリカナノ粒子の混合系の水溶液を乾燥させると、放射上の特徴的なパターンが自発的に表れることを見出した。放射上の線は、配向したDNA分子が集合してできていると考えられる。また、興味深いごとに、ナノ粒子が存在する領域に、マイクロメータスケールの、三日月型やヒョウタン型の島構造が生成する。【論文の着想、理論的考察、全体のとりまとめ】

*Katsuto Takakura, Takahiko Yamamoto, Kensuke Kurihara, Taro Toytota, Kiyoshi Ohnuma, and *Tadashi Sugawara,
Spontaneous Transformation from Micelles to Vesicles Associated with Sequential Conversionsof Comprising Amphiphiles within Assemblies,
Chemical Communications 50, 2190-2192 (2014).

概要: 親水部と疎水部がイミン結合でつながれた一本鎖型両親媒性分子N1と、親水部に直結されたベンズアルデヒド部位を有する一本鎖型両親媒性分子N2とからなる複合ミセル内部で、N1の加水分解により生じたアルキルアニリンが、N2と脱水縮合することで二本鎖型両親媒性分子Vを生じる。このアニリン交換によって、分子集合体の形態が、ミセルからベシクルへと自発的に変化した。 【菅原正(研究総括)、豊田太郎(顕微鏡および粒度分布計測)】

2013

Fumihiko Kono, Tetsuya Honda, Aini Wulamujiang, Hironori Haga, *Tatsuaki Tsuruyama,
IFN-γ/CCR5 expression in invariant NKT cells and CCL5 expression in capillary veins of dermal papillae correlate with development of psoriasis vulgaris,
British Journal of Dermatology, in press (2013).

概要: ナチュラルキラーT細胞の皮膚における同定と、定量的計測の結果、IFN-γ/CCR5陽性ナチュラルキラーT細胞と真皮乳頭にある毛細血管のCCL5発現は乾癬における表皮細胞の過形成および微小膿瘍の発症と相関していることが明らかになった。 【鶴山竜昭(標本の作成、形態分析、論文執筆)、吉川研一(形態ゆらぎ定量分析に関する助言)】

Yu Kakimoto, Shinji Ito, Hitoshi Abiru, Hirokazu Kotani, Munetaka Ozeki, Keiji Tamaki, Tatsuaki Tsuruyama*,
Sorbin and SH3 domain-containing protein 2 is released from infarcted heart in the very early phase: proteomic analysis of cardiac tissues from patients,
Journal of American Heart Association 2, e000565 (2013).

概要: 急性心筋梗塞による傷害心筋を顕微鏡下でレーザー光線で採取し、LC/MSによる分析を行った結果、傷害心筋で正常心筋に比べSorbin and SH3 domain-containing protein 2(Sorbs2)が有意に減少していた。さらに患者の血液中にSorbs2が健常人に比べ有意に高濃度で検出され、Sorbs2が梗塞の診断にも有用なマーカーであることが明らかになった。 【鶴山竜昭(顕微鏡診断、レーザー光線による採取、LC/MSデータ分析、血液データの分析、論文の執筆)、】

Kuniyoshi Izaki and *Yasuyuki Kimura,
Hydrodynamic effects in the measurement of interparticle forces in nematic colloids,
Physical Review E 88, 54501 (2013).

概要: ネマチックコロイド間の粒子間力を測定する従来の方法を改善した新たな測定法の提案を行った。従来、粒子間力の測定にはさまざまな方法が利用されてきたが、それぞれの方法で得られる結果の定量的な比較は行われてこなかった。ことに、代表的測定法である「free release」法では、粒子間の流体力学的相互作用がその結果に大きく影響する。本研究では、流体力学的相互作用を考慮した改良された粒子間力測定法を提案し、4つの異なる方法で測定された粒子間力-粒子間距離曲線が定量的に一致することを見出した。

*Hayato Shiba and Takeshi Kawasaki,
Spatiotemporal heterogeneity of local free volumes in highly supercooled liquid,
The Journal of Chemical Physics 139, 184502/1-8 (2013).

概要: 2次元2成分粒子系の過冷却液体のシミュレーションを行い、局所密度の時空ゆらぎと動的不均一性の関係を調べた。不均一に存在する、局所密度の低い空孔を追跡するために、構造緩和に匹敵するスケールの時間における、各粒子毎の「最小局所密度」を導入した。局所密度の低い領域と動的不均一の動く領域同士が対応することが見出されたが、相関長の対応は見られず、2成分斥力系においては密度の役割は第一義的ではない。また基準振動解析と自由体積との関係についての調べる試みも行った。本研究からは、密度が僅かに低くなった領域としてみられる脆弱な領域との間の相互作用が大規模振動を介して長波長の動的ゆらぎとなっている可能性が示唆される。  【宮崎 州正(議論と提案)】

*Yuka Sakuma, Takashi Taniguchi, Toshihiro Kawakatsu, and Masayuki Imai,
Tubular membrane formation of binary giant unilamellar vesicles composed of cylinder and inverse-cone-shaped lipids,
Biophysical Journal 105, 2074-2081 (2013).

概要: 生体膜は、その機能を効率よく発現するために特徴的な形状を有している。例えば、膜面上で生命維持に必要な物質を合成しているミトコンドリアという細胞小器官は、合成効率をあげるために膜内部に多数のチューブ状構造を形成し、膜面積を大きくしている。我々は今回、逆コーン形とシリンダー形の二種類の脂質から成る二成分ベシクルに温度変化を与えることにより、この特徴的なチューブ構造を再現することに成功した。また、チューブ構造は温度サイクルにより何度でも形成・消滅を繰り返す。このチューブ構造は、i) 温度上昇に伴う膜面積増大によるベシクル内圧の低下が膜内部への陥没を誘起する ii) 膜の陥没により膜内部の負圧が解消され、リピドソーティング(内外の膜における脂質の非対称分布)を伴いながらチューブ構造が形成される という二段階の過程によるものと考え、膜のエネルギーバランスの観点から理論的考察を行なった。

*Hiroaki Ito, Toru Yamanaka, Shou Kato, Tsutomu Hamada, Masahiro Takagi, *Masatoshi Ichikawa, *Kenichi Yoshikawa,
Dynamical formation of lipid bilayer vesicles fromlipid-coated droplets across a planar monolayer at an oil/water interface,
Soft Matter 9, 9539–9547 (2013).

概要: 油中水滴の界面透過のメカニズムを速度過程の面から明らかにした研究です。脂質2分子膜の小胞はリポソームとも呼ばれ、細胞膜の膜だけ再構成した入れ物として、人工細胞等の「うつわ」として利用されてきました。その様な研究は50年ほどの歴史が有りますが、実際のところ、細胞の中味の様な高濃度溶液でリポソームを作成する事は困難でした。その問題点を克服したリポソーム作成手法として、界面透過法という方法が最近盛んに使われるようになっています。脂質の1分子膜を伴った油中水滴を、別の油水界面を通過させる事で2分子膜小胞をつくるこの手法は、マイクロピペットやマイクロ流体デバイスなどを応用した様々な派生手法が有りますが、いずれも油水系で1分子膜+1分子膜プロセスという点は共通です。この論文はそのプロセスを速度過程の面から明らかにしました。まず、液滴の透過は自発的に起こりますが、だいたい途中で引っかかります。この速度過程を横倒しにした顕微鏡光学系で観察しました。次に、その透過ダイナミクスを理論解析(単純に言うと界面の発展方程式を球面で考えたもの)すると、実験の傾向と一致する事が示せました。大きな液滴は透過の最後の方で遅くなり、小さな液滴は最初のバリアが高いという結果です。更に、これを半静的な測定で検証したみたところ、よい一致が得られました。界面透過法の中で最も重要なプロセスのメカニズムが明らかになった事で、様々な派生手法の設計にも役に立つと期待できます。

Tomo Kurimura, *Masatoshi Ichikawa, Masahiro Takinoue, *Kenichi Yoshikawa,
Back-and-forth micromotion of aqueous droplets in a dc electric field,
Physical Review E 88, 042918/1-5 (2013).

概要: ノイズで振動状態が安定化する50μmスケールの微小なリミットサイクル振動子を実現した研究です。対向針電極の間に油中水滴を置き、電極に直流電圧を掛けると、液滴球が電極によって帯電し、静電反発する事で対面の電極に飛ばされ、それを繰り返します。同様の往復振動はマクロな系や、金属球などでも起こります。本研究ではそれを微細化して、駆動電圧を大きく下げる事に成功しました。このとき、静電と誘電の両方の効果を考慮する事で、この水滴運動の系がリミットサイクルと呼べる系である事が明らかになりました。低次の対称性を考慮した水滴の運動方程式を立て、安定状態から振動状態への分岐を線形安定性解析すると、ホップ分岐の線が V~L^(3/2)という、非自明なスケーリング則を取る事が導けます(V電圧、L電極間距離)。このスケーリング則を実験と比較すると、過去の結果も含めて良好な対応があることが分かりました。さらに、電圧にホワイトノイズ(1Vpp)を印加すると、閾値電圧以下の条件にもかかわらず、非常に安定な振動が開始・維持されました。これは、確率共鳴の仲間として coherent resonance と呼ばれている現象に相当します。熱揺らぎの下で、スムーズな運動をすることのできるミクロモーターとして、今後の発展が期待できます。

*Yasutaka Iwashita and Yasuyuki Kimura,
Stable cluster phase of Janus particles in two dimensions,
Soft Matter 9, 10694-10698 (2013).

概要: 引力的な半球を有するヤヌスコロイド粒子は2次元で他のヤヌス粒子と最大3つのボンドを作成することが可能である。本研究では実験とシミュレーションにより、粒子間引力に依存した安定なクラスター形成に関して調べた。引力が弱い場合には小さなミセル状のクラスターが形成され、引力が強い場合にはその会合体が1次元鎖を形成した。このような階層的なクラスター形成は短距離引力の場合に、低価数粒子の集団的な挙動において重要な役割を果たす。

*David A. Head and Daisuke Mizuno,
Local mechanical response in semiflexible polymer networks subjected to an axisymmetric prestress,
Physical Review E 88, 022717/1-10 (2013).

概要: 軸対称な応力印加下における細胞骨格ネットワークの力学応答に関する解析的および数値的な計算を提示する。得られた結果(ネットワークゲルの非線形かつ異方的な力学応答)は、個々の細胞骨格繊維の非線形性に由来する。

*Ryuichi Okamoto, Youhei Fujitani, and Shigeyuki Komura,
Drag coefficient of a rigid spherical particle in a near-critical binary fluid mixture,
Journal of the Physical Society of Japan 82, 084003/1-10 (2013).

概要: 我々は流体の一方の成分との親和性を考慮した二成分流体中の流体力学を定式化して、ストークスの抵抗法則がどのように変更されるかを調べた。その結果、抵抗係数の補正は相関長の6乗に比例することが示された。(Papers of Editors' Choiceに選定された。)

*Yoshiyuki Kageyama, Naruho Tanigake, Yuta Kurokome, Sachiko Iwaki, *Sadamu Takeda, Kentaro Suzuki, and *Tadashi Sugawara,
Macroscopic motion of supramolecular assemblies actuated by photoisomerization of azobenzene derivatives,
Chemical Communications 49, 9386-9388 (2013).

概要: アゾベンゼン部位を有する脂肪酸化合物を混入させた螺旋状オレイン酸自己集合体に紫外線照射すると、螺旋のまき直しダイナミクスが誘発された。アゾベンゼン部位が光照射によりシス-トランス転移することで、その排除体積が変化することと関連づけられる。 【菅原正(オレイン酸螺旋構造体およびその内部での分子挙動に関する考察)】(背表紙に選ばれた。)

*Masakazu Iwasaka, Yuito Miyashita, Yuri Mizukawa, Kentaro Suzuki, Taro Toyota, and Tadashi Sugawara,
Biaxial Alignment Control of Guanine Crystals by Diamagnetic Orientation,
Applied Physics Express 6, 037002/1-4 (2013).

概要: 水中に分散した金魚由来のグアニン単結晶において、ガラス容器底面に沈殿した結晶に対し、ガラス面に平行に400 mTの静磁場(平行磁場)を印加すると、結晶の長軸方向が磁場に平行になるように配向した。一方で、ガラス面に垂直方向に磁場(垂直磁場)を印加すると、結晶はその単軸方向が磁場に平行になるように配向した。さらに両方向から磁場を印加すると、平行磁場に長軸が平行に揃う配向が速やかに起こった。 【菅原正(グアニン結晶中での分子配向についての解釈)】