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A03公募班(2016-2017)

論文等 | 原著論文

2016

Kano Suzuki, Kenji Mizutani, Shintaro Maruyama, Kazumi Shimono, Fabiana L. Imai, Eiro Muneyuki, Yoshimi Kakinuma, Yoshiko Ishizuka-Katsura, Mikako Shirouzu, Shigeyuki Yokoyama, Ichiro Yamato and *Takeshi Murata,
Crystal structures of the ATP-binding and ADP-release dwells of the V1 rotary motor.,
Nature Communications 7, 13235 (2016).

概要: V1-ATPaseは多くの生体膜系に存在する,非常によく保存されたATP駆動型の分子モーターである.我々は最近 Enterococcus hirae由来のA3B3DF (V1) 複合体について加水分解待ちの状態に対応する結晶構造を報告した.今回ヌクレオチドのないV1-ATPaseをADPに浸すことによって得られた他の2つの反応中間体に対応する構造を報告する. 20 μM ADP存在下ではADP分子が3つの触媒部位のうちの2つに結合し,三つめの触媒部位にATPが結合するのを待つ状態となった.2mM ADP存在下ではすべての触媒部位にADPが結合しADP遊離を待つ状態となった.以前からの知見と併せてV1-ATPaseの回転機構のモデルを提案する. 【宗行英朗 役割は第1著者の鈴木氏と共に蛍光測定とそのデータ処理を行い,V1-ATPaseに対するADP結合の様子を溶液系で検討した.】

Shunsuke Yabunaka, Natsuhiko Yoshinaga,
Collision between chemically-driven self-propelled drops,
Journal of Fluid Mechanics 809, 205-233 (2016).

概要: 相分離する二成分混合系として記述される自己駆動液滴の衝突について解析し、数値計算を行った。液滴は等方的な化学反応によって駆動され、表面張力勾配を自発的に生成して運動する。等方的な化学物質濃度の分布が、マランゴニ効果による液滴の運動によって不安定化する。この自己駆動運動についての対称性の破れは、粒子そのものに非対称性が存在するsquirmerや自己泳動粒子などの他の自己駆動のメカニズムと異なるものである。そのため、静止状態と運動状態との間に分岐が存在する。二つの液滴が、同じ軸上で反対方向に運動すると、流体相互作用と濃度場による相互作用が生じる。我々は、液滴の衝突が、自己駆動運動の転移点から距離によって、弾性的に振る舞う場合と、融合する場合が存在することを発見した。転移点からの距離は例えば粘性などによってコントロールできる。弾性的な衝突は、化学反応によるエネルギーの注入と流体運動による散逸がバランスすることによって生じる。我々は、衝突に対する縮約された方程式を導出し、それらを解析した。その結果、正面衝突に関しては濃度場による相互作用が流体相互作用より支配的になることを明らかにした。

Yoshiaki Kinosita, *Nariya Uchida, Daisuke Nakane and *Takayuki Nishizaka,
Direct observation of rotation and steps of the archaellum in the swimming halophilic archaeon Halobacterium salinarum,
Nature Microbiology 1, 16148/1-9 (2016).

概要: 古細菌はアーケラム(古細菌べん毛)とよばれる回転するフィラメントを用いて遊泳する。その機構を理解するため、われわれはモデル生物であるハロバクテリウム・サリナラムに注目した。量子ドットの3次元トラッキングによって、古細菌べん毛の左ねじ螺旋運動の詳細な可視化を可能とした。全反射照明蛍光顕微鏡と組み合わせた先進的な解析手法(クロス・キモグラフィー)が開発され、回転率 23±5 Hzで回転する右ねじ螺旋構造が明らかになった。これらの構造的、運動学的パラメータを用いた流体力学モデルによって、遊泳および歳差運動を数値的に再現し、モータートルクを 50 pN・nm と評価した。最後にテザードセル法によって、約36°または 60°間隔での回転の一時停止を観察した。これは1個の ATP を消費する1つのステップであると推測され、このことからモーターのエネルギー効率は 6〜10% と計算された。 【西坂崇之(研究計画全般の統括と実験の企画、実行)】

Yoshiaki Kinosita, *Nariya Uchida, Daisuke Nakane, and *Takayuki Nishizaka,
Direct observation of rotation and steps of the archaellum in the swimming halophilic archaeon Halobacterium salinarum,
Nature Microbiology 1, 16148/1-9 (2016).

*Yuko Sato, Tomoya Kujirai, Ritsuko Arai, Haruhiko Asakawa, Chizuru Ohtsuki, Naoki Horikoshi, Kazuo Yamagata, Jun Ueda, Takahiro Nagase, Tokuko Haraguchi, Yasushi Hiraoka, Akatsuki Kimura, Hitoshi Kurumizaka, and *Hiroshi Kimura,
A genetically encoded probe for live-cell imaging of H4K20 monomethylation.,
Journal of Molecular Biology 428, 3885-2902 (2016).

概要: 本研究ではヒストンH4蛋白質の20番目のリジン残基がモノメチル化修飾された状態(H4K20me1)を特異的に生体内で可視化する技術の開発に成功した。ヒストンタンパク質はDNAと共に遺伝情報を司る染色体の主要な構成成分であり、ヒストン蛋白質の化学修飾は、遺伝子の働きを制御する重要な役割を果たしている。その中でもH4K20me1は、DNA損傷修復や不活性X染色体の目印として重要であることが知られていたが、生きた細胞内での修飾の変化を観察する技術はなかった。今回、H4K20me1に特異的に結合する抗体の遺伝情報を利用して、生きた細胞内でH4K20me1を検出する細胞内抗体プローブH4K20me1-mintbodyを開発し、生きた細胞や線虫で転写抑制されたX染色体のライブイメージングに成功した。このプローブはヒストンの化学修飾による遺伝子の制御の解明に今後広く利用することが期待される。

Ritsuya Niwayama, Hiromichi Nagao, Tomoya Kitajima, Lars Hufnagel, Kyosuke Shinohara, Tomoyuki Higuchi, Takuji Ishikawa, and *Akatsuki Kimura,
Bayesian Inference of Forces Causing Cytoplasmic Streaming in Caenorhabditis elegans Embryos and Mouse Oocytes.,
PLoS ONE 11, e0159917 (2016).

概要: 本研究では、細胞内での大規模な物質の流動現象である細胞質流動に着目し、線虫(C. elegans)とマウスの細胞内の流動の方向性や速さを詳細に定量化しました。この計測データと流体力学シミュレーションモデルを統合したデータ同化によって、流動を引き起こす原動力の強さと分布を推定しました。推定された力の分布は、力の発生に重要な分子の分布と一致し、本手法の妥当性が支持されました。マウスと線虫では原動力の分布が異なっていましたが、その違いはそれぞれの細胞での流動の機能と合致していて、機能に適した力の分布をそれぞれの細胞がとっていることが示唆されました。本手法は生体内で生じる様々な流れの解析に適用可能で、今後多くの研究者に活用されることが期待されます。

Akihiro Tanaka, Daisuke Nakane, Masaki Mizutani, Takayuki Nishizaka, *Makoto Miyata,
Directed binding of gliding bacterium, Mycoplasma mobile, shown by detachment force and bond lifetime,
mBio 7, e00455-16 (2016).

*Shigeru Matsumura, Tomoko Kojidani, Yuji Kamioka, Seiichi Uchida, Tokuko Haraguchi, Akatsuki Kimura, and Fumiko Toyoshima,
Interphase adhesion geometry is transmitted to an internal regulator for spindle orientation via caveolin-1.,
Nature Communications 7, 11858 (2016).

概要: 接着型の細胞において、細胞分裂の方向は、間期の細胞の形(長軸方向)と強い相関があることが知られているが、細胞は分裂期に球状となるため、形の情報が失われる。このことから細胞には、間期の形の情報を分裂期の細胞に伝えるメカニズムがあることが疑われるが、その実体は不明であった。本研究では、細胞が分裂期に球状に変形する際に、間期で細胞の長軸方向の細胞膜が他の細胞膜領域に比べて収縮度が高いこと、さらには、この領域にカベオリン1タンパク質が濃縮することを見出した。カベオリン1タンパク質の濃縮は細胞外基質接着に依存することから、間期の細胞形状を分裂期の細胞へ伝える役割が考えられた。実際に、カベオリン1タンパク質は、細胞分裂の方向を決定付ける紡錘体と呼ばれる構造体の方向を制御することを見出した。以上の結果より、細胞がカドヘリン1タンパク質を介して、間期の形状依存に細胞分裂の方向を制御するメカニズムが明らかとなった。

*Mitsuhiro Sugawa, Kei-ichi Okazaki, Masaru Kobayashi, Takashi Matsui, Gerhard Hummer, Tomoko Masaike, and *Takayuki Nishizaka,
F1-ATPase conformational cycle from simultaneous single-molecule FRET and rotation measurements,
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 113, E2916-2924 (2016).

Yi-Teng Hsiao, Kuan-Ting Wu, Nariya Uchida, and *Wei-Yen Woon,
Impurity-tuned non-equilibrium phase transition in a bacterial carpet,
Applied Physics Letters 108, 183701/1-5 (2016).

概要: バクテリアカーペットが示す非平衡相転移における不純物効果を光ツイーザー・マイクロビーズアッセイによって調べた。V. alginolytics の変異株 (NMB136)からなるカーペット上の集団的な流れは臨界 Na+ 濃度において急激な増加(2次相転移的な挙動)を示す。不純物として野生株(VIO5)を最大 50% まで混入し、相転移挙動の変化を調べた。低濃度(25% 以下)では臨界 Na+濃度が上方にシフトし、高濃度では相転移曲線の鈍化と秩序相における流れ強度の減少が見られた。

Viktoria Frank, Stefan Kaufmann, Rebecca Wright, Patrick Horn, Hiroshi Yoshikawa, Patrick Wuchter, Jeppe Madsen, Andrew Lewis, Steven P. Armes, Anthony D. Ho, and *Motomu Tanaka,
Frequent mechanical stress suppresses proliferation of mesenchymal stem cells from human bone marrow without loss of multipotency,
Scientific Reports 6, 24264 (2016).

概要: 近年多くの研究が、骨髄由来のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の分化が生化学的な要素だけでなく、基板のトポグラフィーや剛性などの物理的微小環境にも影響を受けることを示してきた。筆者らは「生きた(in vivo)」骨髄内の幹細胞微小環境が動的に制御されていることに注目し、従来型の共有結合で化学架橋されたヒドロゲルに代わって、基板の硬さ(弾性率)を微小な化学刺激により自在に変えられる、物理架橋した生体適合性ヒドロゲル材料を新たに考案した。このヒドロゲル基板上で増殖させたhMSCは、基板の弾性率に関わらず、20日にわたり多分化能マーカーであるSTRO-1の発現を90%以上維持した。この培養hMSCを脂肪や骨分化を誘導する培養液に移すと、脂肪細胞や骨芽細胞へと分化をした。興味深いことに、基板の弾性を変化させる周期を短くしていくと幹細胞は多分化能を保ったままで増殖が顕著に減少した。たとえば1日おきに基板の硬さを変化させた基板上ではhMSCの増殖は最大90%まで抑制された。このような「動的in vitro幹細胞ニッチ」はhMSCの運命に与える動的な力学的ストレスの役割を明らかにするのに応用できるだけでなく、幹細胞をin vitroで同期化した上で分化誘導する技術基盤となることが期待できる。

Mariam Veschgini, F. Gebert, Nyamdorj Khangai, H. Ito, Ryo Suzuki, Thomas W. Holstein, Yasushi Mae, Takero Arai, and *Motomu Tanaka,
Tracking mechanical and morphological dynamics of regenerating Hydra tissue fragments using a two fingered micro-robotic hand,
Applied Physics Letters 108, 103702 (2016).

概要: ヒドラの細胞組織切片は再生過程において形状を能動的に変化させる。本論文では、力と変形が密接に関係する細胞組織の力学をより定量的に理解するため、精密制御可能な2本指マイクロハンドを用いて再生ヒドラ切片の体積弾性率を非侵襲的かつ高精度で評価した。また、ひずみを一定に保ち、応力の緩和を測定することで、ヒドラ切片の粘弾性特性を決定した。さらに、ヒドラ切片が生み出す力をマイクロハンドによって測定し、その時間変化周期と形状変化の周期が一致することを明らかにした。

*Jun Tamogami, Keitaro Sato, Sukuna Kurokawa, Takumi Yamada, Toshifumi Nara, Makoto Demura, Seiji Miyauchi, Takashi Kikukawa, Eiro Muneyuki, Naoki Kamo,
Formation of M-Like Intermediates in Proteorhodopsin in Alkali Solutions (pH ≧~8.5) Where the Proton Release Occurs First in Contrast to the Sequence at Lower pH,
Biochemistry 55(7), 1036-48 (2016).

概要: 海洋性細菌の持つ光駆動型プロトンポンプであるプロテオロドプシンのプロトンポンプ活性を広いpH範囲で精査したところ,アルカリ性で新たな中間体を含むフォトサイクルが見つかり,そのフォトサイクルではプロトンを輸送するときのプロトンのポンプ蛋白への取込と吐き出しの順番が中性と異なっていることがわかった.更に驚くべきことに,中性条件とアルカリ性条件ではプロトン輸送の方向が逆転することを示唆する結果が得られた.