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A03公募(2014-15) 田中 求

論文等 | 原著論文

2015

Hiroaki Ito, Navina Kuss, Bastian E. Rapp, Masatoshi Ichikawa, Thomas Gutsmann, Klaus Brandenburg, Johannes M. B. Pöschl, and *Motomu Tanaka,
Quantification of the Influence of Endotoxins on the Mechanics of Adult and Neonatal Red Blood Cells,
Journal of Physical Chemistry B 119, 7837−7845 (2015).

概要: 自作した微小流路を用いて、新生児と成人の赤血球の形状ゆらぎを高分解能で追跡し、振幅の2乗平均から赤血球の曲げ弾性と張力、および細胞骨格との結合の強さ(ずり応力)を定量した。また敗血症のモデルとしてリポ多糖や抗敗血症薬が細胞の力学特性に与える寄与の定量解析にも成功した。

Alexandra S. Burk, Cornelia Monzel, Hiroshi Y. Yoshikawa, Patrick Wuchter, Rainer Saffrich, Volker Eckstein, *Motomu Tanaka and *Anthony D. Ho,
Quantifying Adhesion Mechanisms and Dynamics of Human Hematopoietic Stem and Progenitor Cells.,
Scientific Reports 5, 9370 (2015).

概要: ヒト造血幹細胞をSDF-1αもしくはN-カドヘリンで機能化したヒト骨髄モデルに播種し、その接着強度をピコ秒レーザーパルスで誘起した圧力波で定量計測した。さらに細胞形状の非平衡ゆらぎのパワースペクトルから、骨髄内での幹細胞遊走を支配するケモカインが細胞の変形運動によるエネルギー散逸に与える寄与をはじめて定量した。

2014

Nataliya Frenkel, Ali Makky, Ikhwan Resmala Sudji, *Michael Wink, and *Motomu Tanaka,
Mechanistic Investigation of Interactions between Steroidal Saponin Digitonin and Cell Membrane Models,
The Journal of Physical Chemistry B 118, 14632−14639 (2014).

概要: サポニンの一種であるジギトニンは疎水性のステロイド構造と親水基を持つ両親媒性分子であり、コレステロールに結合し細胞を溶解する働きをもつ。このような溶解活性は早くから知られていたものの、ジギトニンと細胞膜との相互作用は不明であった。本論文では細胞膜モデルを用いてこの相互作用を定量評価し、その結果ジギトニン分子が膜中のコレステロールに特異的に結合することでコレステロールが膜中から除かれ、膜面でジギトニン‐コレステロール複合体を形成されることを示した。ジギトニンによる質量密度と膜弾性率の変化を、散逸モニタリング水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)によって測定し、さらにX線反射率測定(XRR)と二面偏波式干渉計(DPI)の同時測定によってコレステロール‐ジギトニンの水和レベルを取得した。示差走査熱測定(DSC)による解析からも、膜中からのコレステロールの除去を示す結果が得られた。

Harden Rieger, Hiroshi Y. Yoshikawa, Katharina Quadt, Morten A. Nielsen, Cecilia P. Sanchez, Ali Salanti, *Motomu Tanaka and Michael Lanzer,
Cytoadhesion of Plasmodium falciparum–infected erythrocytes to chondroitin-4-sulfate is cooperative and shear enhanced,
Blood 125, 383-391 (2014).

概要: 妊娠中の母体のマラリア寄生虫Plasmodium falciparumへの感染は、胎盤の絨毛間空の寄生赤血球の宿主細胞接着からはじまり、母子両方に深刻な合併症をもたらす。宿主細胞接着は胎盤の多糖タンパク中に存在するCSA(コンドロイチン硫酸A)と接着因子であるアドヘシンVAR2CSAの選択的相互作用によって生じる。しかし一方で、微小血管中に存在するCSAには、VAR2CSAを介した選択的相互作用による赤血球の接着を生じない。このような胎盤での特異的な結合趨性を明らかにするために、CSAを含む人工モデル膜系を用い、CSAの平均分子間距離による細胞接着能の差異について検証した。その結果、宿主細胞接着はCSA距離に強く依存していることが分かり、流体力学的条件によらず9+/-1 nmにおいて最大半量を示した。さらにCSAへの結合は協同的かつ流体のずり応力に誘起されることが分かった。これらの結果は、CSAの表面密度とVAR2CSAのアロステリックな効果が、宿主細胞接着においてCSA環境の区別に寄与していることを示唆している。

Phuc Nghia Nguyen, Mariam Veschgini, Motomu Tanaka, Gilles Waton, Thierry Vandammec and *Marie Pierre Krafft,
Counteracting the inhibitory effect of proteins towards lung surfactant substitutes: a fluorocarbon gas helps displace albumin at the air/water interfac,
Chemical Communications 50, 11576-11579 (2014).

概要: 急性呼吸窮迫症候群では、肺胞表面に血清タンパクが急激に定着しリン脂質を阻害するために、肺サーファクタントであるDPPCによる治癒効果が不活化する。これまでに私たちは、人工呼吸程度の周期による表面積の正弦振動条件下では、静的条件下では生じなかったDPPCによる血清タンパクBSAの置換が起こることを発見したが、その完全な置換にはおよそ11時間必要であった。本論文では、より急速な置換を示す実用的な系を設計するために、気相を生物学的に不活性なフルオロカーボンの一種であるパーフルオロヘキサンの気体で置換した気液界面に注目し、タンパクの表面吸着ダイナミクスを測定した。その面積を正弦振動させた液中気泡と平面気液界面の2つの実験系を用い、DPPCとBSAの競合的吸着の様子を表面張力と蛍光観察から測定した。その結果、フルオロカーボンガスの存在時にはDPPCによるBSAの置換が大幅に加速し、その時定数が1桁小さくなることを明らかにした。このときBSAは完全に置換され、非可逆であることが明らかになった。

Nataliya Frenkel, Jens Wallys, Sara Lippert, Jörg Teubert, Stefan Kaufmann, Aparna Das, Eva Monroy, Martin Eickhoff and *Motomu Tanaka,
High Precision, Electrochemical Detection of Reversible Binding of Recombinant Proteins on Wide Bandgap GaN Electrodes Functionalized with Biomembrane Models,
Advanced Functional Materials 24, 4927–4934 (2014).

概要: 本論文では、n型ガリウムナイトライド電極を脂質単分子膜の支持膜により被覆した新規の電荷センサーの開発について報告した。オクタデシルトリメトキシシランの被覆により疎水化された電極基板上に、キレーター脂質分子を含む脂質ベシクルを用いて被覆した。これにより、ヒスチジンタグを持つ組替タンパクのキレーターへの結合を検知する。さらに透明なガリウムナイトライド基板を用いることで、支持膜の流動性を蛍光回復法(FRAP)で確認した。溶液-有機絶縁体‐半導体型の構造を用いることで、表面荷電密度の変化ΔQを表面キャパシタンスΔCp、フラットバンドポテンシャルΔUFBに変換することに成功した。これらにより、キレートを介したヒスチジン-eGFP間結合及びそのEDTAによる脱離に伴う表面荷電密度の可逆変化を高感度に検知することに成功した。実現された分解能ΔQ≧0.1μC/cm^2は支持膜被覆p型ヒ化ガリウム(0.9μC/cm^2)や高分子支持脂質単分子膜被覆ITO(2.2μC/cm^2)を大きく上回った。さらに、室温で光ルミネッセントシグナルから表面ポテンシャルの変化を検知するための光活性型inGaN/GaN量子ドット構造の応用に向けて試験を行った。