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A03公募(2014-15) 岩楯 好昭

論文等 | 原著論文

2016

Ayane Sonoda, Chika Okimura, and *Yoshiaki Iwadate,
Shape and area of keratocytes are related to the distribution and magnitude of their traction forces,
Cell Structure and Function 41(1), 33-43 (2016).

概要: 魚の表皮細胞ケラトサイトはおうぎ型の“かたち”を維持しながらアメーバ運動する。細胞の牽引力がどのようにこの“かたち”を形成しているのか明らかになっていない。ケラトサイトはスタウロスポリン(プロテインキナーゼの1種)で処理すると断片化する。断片化したケラトサイトも元のケラトサイトと同様の“かたち”を維持しながらアメーバ運動する。さまざまな大きさの細胞断片を作成し、牽引力や、牽引力発揮に関わる細胞内タンパク質の分布や牽引力を測定したところ、タンパク質の分布、牽引力出力箇所の分布はサイズによらず等しく、タンパク量と牽引力の大きさは細胞サイズ(面積)に比例することが分かった。

Chika Okimura, Kazuki Ueda, Yuichi Sakumura, *Yoshiaki Iwadate,
Fast-crawling cell types migrate to avoid the direction of periodic substratum stretching,
Cell Adhesion & Migration 10, 331-341 (2016).

概要: 細胞と細胞が接着している基層との力学的な相互作用を調べるために、最も有用な技術の一つは、弾性基層の繰返し伸展です。この刺激に応答して、細胞性粘菌細胞は伸展と垂直な方向に運動します。(1)これが粘菌に特有な現象なのか?、また(2)どのようなメカニズムで伸展と垂直に運動するのか?は不明のままです。(1)(2)の疑問を解決するため、本研究では、好中球様に分化した HL-60 細胞に繰返し伸展刺激を加えました。すると HL-60 細胞も細胞性粘菌同様、伸展と垂直な方向に運動することが分かりました。また、両細胞の軌跡の詳細な分析から、伸展に垂直な方向への方向転換の高い確率がそのような方向性のある移動の主な原因であることが明らかになりました。 HL-60 細胞は細胞性粘菌でみられる方向性のある運動は、彼らは行きたくない方向性を回避するために採用された生存戦略であるように思われます。 

Takako Nakata, Chika Okimura, Takafumi Mizuno, and *Yoshiaki Iwadate,
The role of stress fibers in the shape determination mechanism of fish keratocytes,
Biophysical Journal 110, 481-492 (2016).

概要: アメーバ運動する細胞は、その細胞の種類に特徴的な形状を有しています。どのように彼らが特有な形状を決定するかは興味深い問題です。運動中、ほぼ一定の三日月形状を維持し続ける魚類表皮細胞ケラトサイトは、細胞の“かたち”メカニズムを解明するための理想的な材料です。我々は、異なる魚種からケラトサイトを採取し、その形状および関連分子メカニズムを詳細に比較しました。ブラックテトラから採取した丸いケラトサイトは基質に及ぼす牽引力が小さく、シクリッドから採取した横長のケラトサイトは大きな牽引力を発揮しました。細胞先端のアクチンのレトログレードフロー速度勾配はブラックテトラのケラトサイトでは大きくシクリッドでは小さいものでした。シクリッドのケラトサイトのストレスファイバーを人為的に切断すると、切断部でレトログレードフロー速度が上昇し、細胞のかたちもブラックテトラのケラトサイトのように丸くなりました。以上より、ケラトサイトの“かたち”形成において、ストレスファイバーが、アクチン逆流速度を調節することにより、細胞の形状を維持する機構において重要な役割を果たしていることが分かりました。

2015

Naoki Narematsu, Raymond Quek, *Keng‐Hwee Chiam, and *Yoshiaki Iwadate,
Ciliary metachronal wave propagation on the compliant surface of Paramecium cells,
Cytoskeleton 72, 633-646 (2015).

概要: 原生動物における繊毛運動は一定の位相差を隣接する繊毛の間に維持し、繊毛打は波のように伝わります(metachronal 波)。一般に、 metachronal 波は、隣接する繊毛と細胞外液との間に流体力学的結合を必要としていると考えられています。この仮説を検証するために、我々は流体が通過することができないように、マイクロピペットを用いてゾウリムシの細胞を吸引し、細胞の前方と後方領域を流体力学的に分離しました。この状態でも、まだ metachronal 波が伝わりました。これは、流体力学的カップリングに加えて、metachronal 波を伝播させられる他のメカニズムが存在することを示唆しています。我々は、繊毛の基部同士が弾性体で繋がれ流体力学的カップリングがないモデルを作成しシミュレーションを施すとmetachronal 波を伝播することが分かりました。これが現実に起きているのか確かめるために、生きたゾウリムシ細胞を周期的に伸縮させたところ metachronal 波が同調することが分かりました。これは、流体力学的カップリングに加えて、繊毛基部の弾性も metachronal 波の伝播を媒介する重要な役割を果たし得る、ということを示しています。

Hitomi Nakashima, Chika Okimura, and *Yoshiaki Iwadate,
The molecular dynamics of crawling migration in microtubule-disrupted keratocytes,
Biophysics and Physicobiology 12, 21-29 (2015).

概要: 細胞のアメーバ運動は、複雑な生命現象において重要な役割を果たしています。現在では、一般的に、アメーバ運動に必須の多くのプロセスは微小管という細胞骨格によって制御されていると考えられます。しかし、魚類表皮ケラトサイト細胞では、微小管を含んでいない細胞断片でも、微小管重合の阻害剤であるノコダゾールで処理した細胞でも、未処理の細胞と同じ速度で運動します。本研究では、運動特性だけでなく、それを引き起こす分子機械、すなわち、アクチンフィラメント、ビンキュリンとミオシンIIの分布、および牽引力の分布も、ノコダゾール処理の影響を受けないことを示しました。これらの結果は、微小管は、運動特性の面だけでなく分子メカニズムの面でも、ケラトサイトのアメーバ運動に必要ないことを示唆しています。