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A03公募(2016-17) 田中 求

論文等 | 原著論文

2017

Marcel Hörning, Masaki Nakahata, Philip Linke, Akihisa Yamamoto, Mariam Veschgini, Stefan Kaufmann, Yoshinori Takashima, Akira Harada & *Motomu Tanaka,
Dynamic mechano-regulation of myoblast cells on supramolecular hydrogels cross-linked by reversible host-guest interactions,
Scientific Reports 7, 7660 (2017).

概要: β‐シクロデキストリンとアダマンタンのホスト‐ゲスト相互作用で架橋された新規なヒドロゲル基板を用いて、細胞-基板相互作用を動的に制御することに成功した。ゲルの弾性率の初期設定値は、ホストあるいはゲスト基がついたモノマーの分率を用いることで、細胞に合わせたレベルに設定可能である。ホスト‐ゲスト相互作用の可逆性を活用することで、溶液中のホスト分子(β‐シクロデキストリン)の濃度によって、基板弾性率を上げたり(硬化)下げたり(軟化)することが可能となる。基板の弾性率を任意の時刻に変化させることで細胞の力学的微小環境を動的にスウィッチングできる。本研究で用いたホスト-ゲストゲルの弾性率は4-11 kPaの範囲にあり、これは筋芽細胞の形態や細胞骨格のネマチック秩序変数を静的・動的に制御するのに理想的な範囲である。我々の刺激応答性ゲルは、UV光や温度変化に応答する従来型の刺激応答性材料と比べて細胞活性を損ねることなく、さまざまな細胞に力学的なコマンドを与えることを可能にした。

Takahisa Matsuzaki, Hiroaki Ito, Veronika Chevyreva, Ali Makky, Stefan Kaufmann, Kazuki Okano, Naritaka Kobayashi, Masami Suganuma, Seiichiro Nakabayashi, Hiroshi Y. Yoshikawa and *Motomu Tanaka,
Adsorption of galloyl catechin aggregates significantly modulates membrane mechanics in the absence of biochemical cues,
Physical Chemistry Chemical Physics 19, 9937-19947 (2017).

概要: 本研究では緑茶に含まれる4つのカテキン誘導体が細胞膜モデルと相互作用するメカニズムを系統的に研究した。ガロイル基を持つカテキンは小さな単層膜ベシクルの凝集と表面圧の上昇を誘起したが、ガロイル基を持たないものは膜と相互作用を示さなかった。実際にカテキン分子の膜への分配係数を計測すると、脂質-カテキンの相互作用において支配的な役割を果たしているのが、カテキンのガロイル基とリン脂質の第4級アミンの相互作用(π-カチオン相互作用)であることがわかった。最後にカテキンが脂質膜の力学的特性に与える影響を膜の揺らぎのフーリエ解析を用いて明らかにした。1 mMのカテキン存在下(緑茶を経口摂取した後の血中濃度に対応)における脂質膜の曲げ弾性に着目すると、ガロイル基を持つカテキンの存在下では曲げ弾性が60倍以上増加するが、ガロイル基のない誘導体の場合検出できるような変化は見られなかった。このような成果は、緑茶カテキンががんの予防のような臨床治療にカテキンが作用する物理的(一般的)なメカニズムを明らかにするのに貢献する。

Yuji Higaki,Benjamin Fröhlich, Akihisa Yamamoto, Ryo Murakami,Makoto Kaneko, *Atsushi Takahara, and *Motomu Tanaka,
Ion-specific modulation of interfacial interaction potentials between solid substrates and cell-sized particles mediated via zwitterionic, super-hydrophilic poly(sulfobetaine) brushes,
The Journal of Physical Chemistry B 121, 1396−1404 (2017).

概要: 双イオン性高分子材料は、その超親水性や自己清浄化特性だけでなくその優れた抗生体付着性から近年注目を集めている。本研究では密にパッキングしたブラシ構造をとる、ポリスルフォベタインによる、界面相互作用ポテンシャルの変調を精密計測した。細胞サイズのラテックス微粒子の界面垂直方向への高さ揺らぎを反射干渉顕微鏡でラベルフリーで検出し、高さ揺らぎの自己相関関数と実効界面ポテンシャルを求めた。ポテンシャルの二次微分(ポテンシャル曲率)は、1価の金属カチオン濃度の上昇に伴って単調増加を示したが、2価のカルシウムイオンの濃度に対しては逆の依存性を示した。このことから、双イオン性のポリマーブラシに対するイオン特異的相互作用は古典的なHoffmeisterシリーズで説明できないことが示された。ポリマー側鎖と同じ構造を持つスルフォベタインの溶液中では、高さ揺らぎの自己相関関数の減衰から求められる流体力学的摩擦係数が顕著に落ちることが見出された。この観測結果は溶液中のスルフォベタインが高分子側鎖のスルフォベタインとペアになることを示唆している。同じ計測・解析をヒト赤血球で行ったところ、ポテンシャル曲率も摩擦係数も非常に小さな値を示した。この二つの数値が小さいことは双イオン性のポリマーブラシがもつ、非常に優れた抗血液付着性を説明するものである。 

2016

Viktoria Frank, Stefan Kaufmann, Rebecca Wright, Patrick Horn, Hiroshi Yoshikawa, Patrick Wuchter, Jeppe Madsen, Andrew Lewis, Steven P. Armes, Anthony D. Ho, and *Motomu Tanaka,
Frequent mechanical stress suppresses proliferation of mesenchymal stem cells from human bone marrow without loss of multipotency,
Scientific Reports 6, 24264 (2016).

概要: 近年多くの研究が、骨髄由来のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の分化が生化学的な要素だけでなく、基板のトポグラフィーや剛性などの物理的微小環境にも影響を受けることを示してきた。筆者らは「生きた(in vivo)」骨髄内の幹細胞微小環境が動的に制御されていることに注目し、従来型の共有結合で化学架橋されたヒドロゲルに代わって、基板の硬さ(弾性率)を微小な化学刺激により自在に変えられる、物理架橋した生体適合性ヒドロゲル材料を新たに考案した。このヒドロゲル基板上で増殖させたhMSCは、基板の弾性率に関わらず、20日にわたり多分化能マーカーであるSTRO-1の発現を90%以上維持した。この培養hMSCを脂肪や骨分化を誘導する培養液に移すと、脂肪細胞や骨芽細胞へと分化をした。興味深いことに、基板の弾性を変化させる周期を短くしていくと幹細胞は多分化能を保ったままで増殖が顕著に減少した。たとえば1日おきに基板の硬さを変化させた基板上ではhMSCの増殖は最大90%まで抑制された。このような「動的in vitro幹細胞ニッチ」はhMSCの運命に与える動的な力学的ストレスの役割を明らかにするのに応用できるだけでなく、幹細胞をin vitroで同期化した上で分化誘導する技術基盤となることが期待できる。

Mariam Veschgini, F. Gebert, Nyamdorj Khangai, H. Ito, Ryo Suzuki, Thomas W. Holstein, Yasushi Mae, Takero Arai, and *Motomu Tanaka,
Tracking mechanical and morphological dynamics of regenerating Hydra tissue fragments using a two fingered micro-robotic hand,
Applied Physics Letters 108, 103702 (2016).

概要: ヒドラの細胞組織切片は再生過程において形状を能動的に変化させる。本論文では、力と変形が密接に関係する細胞組織の力学をより定量的に理解するため、精密制御可能な2本指マイクロハンドを用いて再生ヒドラ切片の体積弾性率を非侵襲的かつ高精度で評価した。また、ひずみを一定に保ち、応力の緩和を測定することで、ヒドラ切片の粘弾性特性を決定した。さらに、ヒドラ切片が生み出す力をマイクロハンドによって測定し、その時間変化周期と形状変化の周期が一致することを明らかにした。